虚空と愛

ワンク 前回+‪α‬ 過呼吸や嘔吐を仄めかす描写あり

あれ以降変な夢は全く見ていない。

相変わらず記憶は戻らないし、戻す手がかりすら見つからなくなってきてしまった。

これはもう、諦めるべきなのだろうか。

そうも考えたが、彼は僕のことを本気でサポートしてくれてるみたいだし、そんな彼を裏切る訳にもいかない。

……でも

あの子が何を隠しているのかはわからない。

けど、なにか重大な手がかりにはなりそうだ。

…伝えても、いいのだろうか

あんなこと言ったら、今まで類のことを話してたのは嘘なんじゃないかって言われそうで、

怖くて、言えない

入学当初からあんなに仲良くなったのに、またひとりぼっちになるのは、

絶対に嫌だ…！！

でも、伝えるって言ってしまったし

…オレは、一体どうすれば

ー　司の部屋　ベッド　ー

多分、一理ある。

協力関係にある以上、それに関する隠し事なんてしてはならないと、オレも思う。

でも、

伝えて今の関係が壊れるのは絶対に嫌だ

類といるのはすごく楽しいし、ずっと仲良くいたい。

そんなことを思ってしまうのは、我儘なのだろうか

どうしてかは分からないけど、

なんだかどうしても今言わなければならない気がして。

心配してくれていた母さんを無視してでも、

さっさとドアを開けた。

──沈黙。

類の顔を見るのが怖くて、下を向いたままの顔と目線を上げることができない。

ほんの数秒の時間が、物凄く、言葉に表せないほど長くて。

それを切り出したのは誰でもない、類だった。

けど──

声色は、明らかに怒っている。

違う。

それを裏付ける証拠はあるんだ。

でも、喉には何も通らなくて

言葉、空気、全てのものが。

類はあれから変わらず ずっと何かを言っているけれど、

分からない。

自分の呼吸音と耳鳴りで、

なにもきこえない…。

──夢？

夢、か…

やけにリアルな夢だった。 夢のようなふわふわとした感覚じゃなくて、確かに現実で感じるもの。

類にオレのことを話した時のこと。

あの類の、怒った声色や表情が、

とても、怖かった。

……思い出しただけでも、

((インターホンが鳴る))

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