遥翔
君はさ、僕が君を助けようとしているって勘違いしてるけど、そうじゃないんだよ

天望
ち、違うのか?

遥翔
ほら、君さ...忘れてる物あるでしょ?

天望
忘れてる物...?タオルとか?

遥翔
いや、お母さんか

遥翔
じゃなくて、ほら‼︎ビンゴの‼︎

天望
ビンゴの...って、ああ?

遥翔
さては分かってないなー...

遥翔

遥翔
まだ叶えてない“願い”、あったでしょ⁉︎

天望
あー...確か2ビンゴ...だったか?

遥翔
呆れた、もしかしてと思ったけど、やっぱりだったんだね

天望
じゃあ、お前はそのために来たってことか

遥翔
そゆことー

天望
ん?でも待て、その“願い”の内容は何だ?あっしはまだ願ってもないぞ?

遥翔
うん、そうだよ

天望
は?どういうことだ?

遥翔
君がビンゴ報酬を忘れてたから、逆にこっちが叶えに来た

遥翔
ただそれだけだよ

天望
勝手すぎないか?

遥翔
願いを忘れるってことは所詮そんなに価値がないってことだもんね

天望
...もしかして、拗ねてるのか?

遥翔
...拗ねてないし

天望
面倒だな、お前って...

遥翔
はあ⁉︎誰が面倒だ‼︎

天望
でも、願いを忘れたことは悪かった

天望
しかし、それと同時にあっしの願いは、全員を幸せにすること以外に思い付かなかったんだ

天望
それだけは信じてくれ

遥翔
ふーん...あっそ...

遥翔
じゃあ、そういうことにしといてあげるよ

遥翔
だけどさ、その願いって“君自身”も含まれてるの?

天望
あっし自身?...いや、あっしは良いんだ

天望
あっしは全員がそれぞれの望む形で“幸せになってくれる方法を与える存在”に過ぎないからな

遥翔
それ、本当に全員が幸せなの?

天望
どういうことだ?

あっしは話に夢中で
気が付かなかったが
周囲が静寂に包まれ
人々の動きが止まっている
ことにようやく気が付いた。
“彼”の青ざめた表情、
そして頬を伝う一筋の
涙の跡を。
天望
蘭丸...

遥翔
結論から言うと、流鏑馬 蘭丸は君のおかげで助かった

遥翔
今は僕の力で時間を止めてるから、君と僕は“静と動の狭間”で会話をしているんだ

遥翔
だから僕達は彼の世界では一時的に見えていない存在だ

遥翔
そんな彼はどんな様子だい?

天望
....

遥翔
この顔を見ても幸せになったと言えるの?

天望
...なら、時間を戻しt

遥翔
それは不可能だ、君に力を渡す前に伝えた筈だよ

遥翔
“時空に干渉する以外の力は使えない”ってね

天望
じゃあ、どうすればいいんだッ‼︎

遥翔
願いを忘れたことに加えて、まだ分からないのかい?

天望
だから何が

遥翔
君自身が生きていないといけないんだよッ‼︎

天望
...え?

遥翔
さっきから聞いていれば、自分以外の人間が幸せなら良いだあ?

遥翔
自己犠牲もいい加減にしてくれ

遥翔
君は自分の気持ちに蓋をすることに慣れ過ぎている

遥翔
本来の願いは同僚と再会することだろう?それを投げうってでも、今の願いを叶えようとしている

遥翔
この世界の彼は...抗体人間だった頃の彼は...

遥翔
君が生きていることを望んでいる筈だッ‼︎

遥翔
勿論、君だけじゃない。過去に亡くなった抗体人間や研究者、それらが生きていたらとどんなに願ったことか...

遥翔
君が彼を、彼の未来を救いたいと願ったから、奇跡的にも彼と君が同じ世界に降り立つことができたんだ

遥翔
君は彼を救えたと、幸せにできたと思って死んでいくだろうが、彼にとっては二度大切な人を失ったんだ

遥翔
周り見てみなよ

天望
....

遥翔
その喪失感を君は軽く見過ぎだ、それは生命の冒涜と言っていい

遥翔
まあ、僕が言えた立場ではないけどね

天望
...悪かった

遥翔
いや、僕も言い過ぎだよ。ごめんね

天望
それなら、お前が叶えようとしている願いっていうのは...

天望

天望
あっしを幸せにすることか...?

天望
だが、最初にあっしに干渉しないって

遥翔
気が変わったんだよ、神様は気まぐれなんだ

天望
何だそれ

あっしは思わずクスッと笑った。
そして同時に覚悟を決めた。
天望
頼む、時間を動かしてくれ。蘭丸と話がしたい

遥翔
でも、彼の目には刺されて出血死した君が急に起き上がったように見えるけど?

天望
そうか、あっしは死んだ直後くらいなのか

天望
それだと説明に加えてパニックになりかねないな

天望
なら、蘭丸をあっし達のいる狭間に引き込むことは可能か?

遥翔
え?うーん、できるっちゃできるけど...

天望
何だ?デメリットでもあるのか?

遥翔
いや、僕の罪悪感が大きくなるというか...

天望
驚いた、お前に罪悪感なんていうものがあるとは思わなかった

遥翔
....

天望
大丈夫だ、ひと思いに済ませてやる

遥翔
え?何する気?怖いんだけど

天望
取り敢えず、蘭丸を狭間に引き込んでくれ

すると神崎は彼に触れると
手際良くこちらの場所へ
引き込んだ。
遥翔
3分くらい経ったら動き出すよ

とカップラーメンのような
言葉を残し、あっし達は
その時を待った。そして...
蘭丸
ん...?あれ、ここは...

天望
待たせたな、蘭丸
