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前の続きからです!
童磨
童磨は、ひろしを見つめたまま微笑んでいた。 さっきまでの遊びのような雰囲気とは、どこか違う。
童磨
その声は穏やかだったが、 空気が、明らかに変わった。
--キィィィン……。
まるで、世界そのものが悲鳴を上げるような音。
野原ひろし
ひろしは思わず息を止めた。 吸い込んだ空気が、肺の中で凍りつく感覚。
床、柱、天井。 屋敷のすべてが、一瞬で白く染まっていく。
野原ひろし
足元を見ると、靴ごと氷に閉じ込められていた。
野原ひろし
無理に足を動かそうとすると、氷が軋む音がする。 このまま続ければ、足ごと折れそうだった。
童磨は静かに両腕を広げる。
童磨
その背後に、氷でできた人型の象が、ゆっくりと現れた。 ひとつ、またひとつと増えていく。
童磨
野原ひろし
ひろしの歯が、カチカチと鳴る。 寒さだけじゃない。 --完全に、格が違う。
野原ひろし
頭の中で、弱音が響く。
そのとき。
ふっと、しんのすけの声がよみがえった。
野原しんのすけ
ひまわりの、無邪気な笑顔。 みさえの、呆れたような怒鳴り声。
野原ひろし
ひろしは小さく笑った。
野原ひろし
拳を握る。 感覚はほとんどない。 それでも、力を込める。
野原ひろし
ひろしは、拳をそのまま足元の氷に叩きつけた。
--バキン!!
野原ひろし
鋭い痛みが腕を走る。 皮が裂け、血が滲む。
それでも、もう一度。
野原ひろし
--バキン!バキン!!
氷が砕け、ついに足が自由になった。
童磨
童磨が、初めてはっきりと驚いた声を出す。
童磨
ひろしは息を切らしながら、前に出る。
野原ひろし
ふらつきながらも、目は死んでいない。
野原ひろし
ひろしは、全身の力を拳に込めて突っ込んだ。
氷の像が迫る。 冷気が視界を奪う。
それでも--
野原ひろし
拳が、童磨の胸に叩き込まれた。
--ゴォン!!
屋敷が大きく揺れ、氷が一斉に砕け散る。
静寝。
童磨は数歩下がり、自分の胸を見る。 そこには、はっきりとしたヒビ。
童磨
童磨は、心底楽しそうに笑った。
童磨
その笑顔は、もう優しいものではなかった。
童磨
冷気が、さらに濃くなる。
童磨
ひろしは拳を構え直す。 足は震え、呼吸も荒い。
それでも、退かない。
野原ひろし
氷の世界で、 父親と鬼の、本当の死闘が始まろうとしていた。
コメント
4件
流石ひろし!!家族のために!!!