俺は惚れやすい体質だと思う。
女の子に物を拾ってもらったり、偶然目が合ったりすると
直ぐに好きになってしまう。
そんな訳で俺は、昨日教室で落とした消しゴムを拾ってくれたあの子が好きだ。
呆れたような顔をした、クラスで俺の次にモテるであろう野郎を呼び出した。
総長の俺からの相談なのだから、快く乗ってくれるだろう。
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
もう何を言ってもダメだと言う風な顔をされたが、
今はそんなのどうでもいい。
初めて書くラブレターに戸惑ってる暇は無い。
もしあの子に彼氏が出来てしまえば俺は終わりだ。
シンイチロウ
持ち慣れない鉛筆で、丁寧にその言葉を書く。
字が綺麗か汚いかは置いといて、こういうのは気持ちだ。気持ち。
一生懸命さが伝われば汚くともカバーしてくれる筈だ。
最後に『佐野真一郎』とだけ書いて、その紙を半分に折る。
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
シンイチロウ
そんな感じで言い合いが始まったが、封筒なんて手元にある訳も無く。
仕方が無いので、ただ半分に折っただけのラブレターを渡す事にした。
シンイチロウ
そうあの子の下駄箱の前に立ち止まり言う。
ラブレターを握った手を胸に当て、拍動を感じる。
告白したのは何回目か忘れてしまったが、多分10数回目。
今度こそ成功させたい。
シンイチロウ
そう下駄箱の影から身を乗り出し、付いてきたソイツに言い放った。
シンイチロウ
決意を明らかにし、胸に当てていたラブレターを靴箱に入れる。
綺麗に入った革靴の上に、スっと乗せる形で置いておいた。
シンイチロウ
隣に立つソイツがそうボソッと呟いたが、聞かなかった事にした。
翌朝、俺はいつもより早めに学校に着いてしまった。
返事がどうなのか気になり過ぎて走って来てしまったのだ。
教室には殆ど人が居ない。
その間、昨日のラブレターの事を思い出した。
気付いてくれたかな。
そもそもあんな所に入れたら風で飛ばされちゃう?
いや、そんな事は無いはず。
そんな感じで、今思い返してみると色々不安な点が幾つも出てくる。
そんな不安を消す為に、俺は誰も居ない教室の黒板に落書きを始めた。
__
昨日の放課後の事だ。
部活がやっとの事で終わり、下駄箱へと足を運んだ。
すると、私の靴箱に何やら紙切れが1枚入っていた。
you
不思議に思い、私は半分に折られた紙を開いた。
you
一生懸命書いたのだろうか、少し震えた字を小さな声で音読する。
そしてその下には『佐野真一郎』という名が書いてあった。
you
you
不良で有名な人だった気がするのだが。
そんな人に私は好かれてしまった。
殆ど面識は無く、相手側も私の名前を知ってるのかどうかも怪しい。
そのぐらい関係を持っていないのに、何故私なんだろう。
そう考えていたら、今日はいつもより早く学校に着いてしまった。
教室に入っても誰も居ない。
ふぅ、と1呼吸してからカバンを机の上に置く。
そして、昨日貰ったラブレターを取り出した。
you
そうだ。忘れていた。
『好きです』と言われ浮かれて満足していた。
これから私はこれに対しての返事をしなければならない。
佐野くんは学校来るの遅い筈だし、置き手紙にして返事をする事にした。
__ ガラッ
後ろで戸が横にスライドされる音が聞こえた。
もう他のクラスメイトが登校して来たのか?
今あの子と俺の相合傘書いてるんだけど。
邪魔されたなぁと思いつつ、俺はチョークを持ったまま振り返った。
シンイチロウ
you
目が合った。
振り返った先は、ラブレターを送ったあの子。
何でこんな所に、こんな時間に。
you
少し間が空くと、その子は気恥しそうにそう言った。
シンイチロウ
シンイチロウ
意外と軽々しく言う佐野くんに少し戸惑う。
返事、と言ったらもっと重重しい雰囲気になるはずなんだけど。
you
まあそんな事は置いといて、いつまでも此処に居る訳にはいかないので
返事をする空気を切り出した。
you
私はそう言った。
顔は好みのタイプだけど、まだ中身がよく分からない。
消して嫌いな訳では無いし、付き合いたくないということでも無い。
ただ単に、まだ知らないだけ。
シンイチロウ
you
何なんだこの人。普通これで諦めるじゃん。
シンイチロウ
そうニコニコ笑いながら、黒い髪を揺らして手を差し伸べられる。
you
私はその流れに乗っかって、困惑しながらもその手を握り返した。
それが私と佐野くんの出会いだったのだ。
あの告白から約2ヶ月。
私と佐野くんの関係は何一つ変わる事は無かった。
ただの友達。
私は佐野くん、と呼んで
佐野くんは○○、と呼ぶ。
何一つ変わりやしないこの関係は、誰もが予想していた事らしい。
もうここまで来たら佐野くんも、もう私の事を好きでは無いんじゃないかと思えてきた。
しかも、佐野くんと友達になって分かった事がある。
佐野くんはモテなさ過ぎる。
本当にびっくりした。
こんなに上手くモテない人が居るんだと。
顔はカッコイイ筈なのに、何処かがモテないポイントとして出てしまってるのか。
原因はまだ分からなかった。
シンイチロウ
ボーっと考えていると、廊下で隣に立つ佐野くんが言った。
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
私がそう突っ込むと、佐野くんは両手を合わせてお願いして来た。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
その条件に満足した私は、カバンから国語の教科書を取り出して渡した。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
否定出来なそうな顔をした佐野くんを見てクスクス笑う。
話しててつまらなくは無い。
寧ろ楽しいし、面白い。
身長もあるし、顔も良いのに何でモテないんだろう。
不良だから? 怖いから?
私は永遠の疑問を抱きながら、待ち遠しい放課後までやり過ごした。
シンイチロウ
全授業を終え、下校のチャイムが鳴り響く。
すると、門の所で佐野くんが私の名前を呼んだことに気付いた。
今日は部活が丁度無いので、放課後何か奢って貰うには絶好の機会だ。
you
シンイチロウ
振り向きざまにそう言われる。
何か凄く変な感じがした。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
奢って貰えると言われておいておにぎりをチョイスする。
何故か分からないけど、今凄くおにぎりを食べたい気分だった。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
女の子がそんな所にわざわざ行くわけないだろ、と思う。
何か少しズレているのが佐野くんなのか?
これがモテない原因とか?
そう思いながら、私は佐野くんの隣を歩いた。
私は梅干しにした。
そして佐野くんはアイス。
シャーベットの。
各々それを持って、近くの公園で食べ始める。
そして思った。
普通付き合いたいと思ってる人に合わせるのでは無いかと。
私はおにぎりを選んだ。
なら空気を読んで佐野くんもおにぎりにすると思ってた。
『○○が食べるなら俺も食べよ』みたいなノリだと思ってた。
けど違った。
佐野くんはアイス。
もう秋だよ。何でアイスなの。
おにぎり食べてる人の隣でアイス食べる気分ってどんな感じ?
you
シンイチロウ
you
you
シンイチロウ
すると、佐野くんは一気に顔を真っ赤にさせた。
そんな恥ずかしい事言ってない筈だけど。
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
そうしてまた私は笑う。
何でこんなに面白いんだろう。
こんなに一緒に居て楽しいと思えた人は居ない。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
突然真剣な顔をして、そんな事を言う。
まさか2ヶ月前の告白の事を言っているのか。
シンイチロウ
その瞬間、ぞわぞわと体の奥から熱が伝わってきた。
自分の頬が少し赤くなる。
you
シンイチロウ
you
以外にもまだその思いは続いていたのか。
佐野くんの真剣な眼差しが刺さる。
シンイチロウ
そうして、戸惑っている私にさらに追い打ちを掛けてくる。
この人まさかゴリ押しで『YES』を言わせようとしてるのか。
此処どこだと思ってるの?
そんなに綺麗でも無い公園だよ?
しかも私はおにぎりを持ってて
佐野くんは溶けそうなアイスを食べようとしてる所。
ムード的にも、場所的にも最悪なのに。
you
私はそう返した。
2ヶ月経ってもその思いは変わらなかった。
シンイチロウ
すると佐野くんはアイスをちまちま食べ始めた。
その姿を見て、彼氏になった佐野くんを想像する。
...やっぱり何かが違う。
ピタッと私の彼氏像に当てはまらない。
顔はタイプなのに、何で。
you
シンイチロウ
佐野くんがモテない理由が分かった。
やっぱ佐野くんは女心が分かってない。
私は、隣でそんな佐野くんを見つめた。
コメント
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あああああさのきゅん … すき …(
なんか通知来てなくて見るの遅れた😭😭
可愛いー!人ちゃんも可愛いーーーー!この世の皆かわいいいいー!!!