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HAPPY BIRTHDAY ICHIGOTARUTO

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HAPPY BIRTHDAY ICHIGOTARUTO

5 - 彼岸の館 後編

♥

700

2024年11月12日

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カナト

俺は苺子が────

カナト

好きだからだ

彼が苺子を手に入れようとした理由。それは、叶うはずない恋であった

苺子に、恋をした…

カナト

あぁ、そうだ

カナト

初めて出会った時に一目惚れしたんだ

…僕達といつ会ったんですか?

カナネの話を聞く限り大分前のようですが…

二人は死んでいるのだから僕らと会ったことなんて無いはずだ

カナネ

…まさか…あの時なの?

あの時って…?

カナネ

私達、基本的にこの館にいるのだけど現実にも一応行けるの

カナト

まぁ、幽霊みたいな感じになるけどな

…なるほど?

カナネ

それで一ヶ月くらい前だったかしら…奏斗が一人で現実を見に行ったのよ

誰にも感知されなくとも現実自体は行けるという事実に少し戸惑う

…普段は二人で出ていたのですか?

カナネ

えぇ

カナト

現実で行ける範囲は現実の館周辺だけだけどな…

カナト

心当たりないか?こんな館に現実で来なかったか?

この館に…?えっと…

記憶を探る。こんな豪華な館、普通は覚えていそうだが…

カナト

言っておくが現実の館は廃墟だからな

え、あ…あっ!

そうだ。僕らは一ヶ月に急に滅んだらしい館を罰ゲームで苺子と共に訪れていた

カナネ

その様子だと思い出したようね

…確かに僕と苺子は廃墟に罰ゲームで行っていました

その時に?

カナト

正解だ。誰も来ない館の周りをうろついていた時、苺子とレパールに出会った

カナト

そして一目惚れした

誰も来ない、双子だけの館に訪れた僕らと幸せを知らない少年との本当の出会い────

俺は奏音を置いて、珍しく一人で外を見て回っていた

随分と寂れちまったな

まぁ、滅んで当然だし後悔してないけど

どうせ誰にも聞こえないので抑えることもなく独り言を話していると人の気配がした

(誰だ…?)

普段、こんなところ誰も来ない。来るはずがない

気になるし見てみるか…

好奇心を持った俺は誰かに近づいていった

気配のする方に行くと二人分の人影が見えた

苺子

うぅ…どうしてこんな事に

レパール

しょうがないよ苺子。罰ゲームなんだから

こんなところで廃墟の館を探せって無理ゲーだよ!

苺子

レパールがいるからまだ良いけどさぁ…

苺子とレパールという人が、どうやら来たらしい

おーい

こんにちはー

二人の周りを歩いて声を掛けてもやはり気付かない

流石に気付かないか。そう思った瞬間────

苺子

…あれ?

レパール

どうしたの苺子?

苺子

人がいないのに一瞬目が合ったような…

レパール

え、本当?

苺子

ホントホント。誰もいないはずなのに…

レパール

…怖いね

苺子

やっぱり帰らない?館とか探すのやめようよ

レパール

じゃあ、あっち探しても無かったら帰ろう

そう言ってレパールとやらは館がある方を指さした

マジかよ…すげーな

感心しつつ二人に着いていく

…目が合った、か

実際問題、苺子という人と目が合った。でも普通は分からない筈だ

苺子…

(目が合った時、雷に打たれたような衝撃を感じた)

何故か苺子のことが目から離せなくなって、胸が高まり夢中になる

(もっと近づきたい。触れ合いたい。話したい)

何でできねぇんだよ…!

気持ちとは裏腹に、何一つできない自分の身体に苛立ちだけが積もる

(どうしてこんなにも惹かれるのだろうか)

(どうして見てもらう事すらできないのか)

結局俺は二人の事を追える限界まで追いながら悶々と考え続けた

俺は奏音が待つ館に戻るなり、書物庫へ足を運んだ

自分の気持ちの正体を知るために

(苺子)

奏音にすら感じた事のない気持ちを持ちながら、黙々と俺は本を読み漁る

すると、自分の気持ちと似た事が記されている本を見つける事ができた

…俺は、苺子の事が"好き"なのか

どうやらこの気持ちの正体は恋とやらで、俺は苺子に一目惚れしたらしい

苺子…好き…

好きという、どうしようない感情を持って抱える

好きなのに何もできない

…引きずり込む?

一つの考えが脳裏をチラつく

苺子という人をこちらの世界に引きずり込んで自分のものにするという考えが

いや、駄目だろそんなの…

しかし気持ちは苺子の事を考えるたびに焼かれるような感覚を感じる

駄目なのは分かりきっているし、そもそもできるかすら分からない

(でも、今なら何でもできる気がする)

気づけば俺は行動に移していた

気づけば俺は奏音から力を奪って舞台を整えていた

(苺子の魂をこの棺桶に入れるだけだ)

力を蓄えた俺は苺子の魂を夢を通して連れていくことにした

やっと…

方法としては、魂をこっちの世界に固定させてから存在そのものを引きずり込むものである

奏音に対して申し訳無さと罪悪感を感じた

(絶対奏音は反対するよな)

あの時は奏音の幸せを心から願ったのに、今は自分の都合で奏音を危機に晒している

…せめて生まれ変われたら良いのにな

自分の愚かさを呪いたくなるが、それを上回りそうな程の恋が心から溢れている

さぁ、始めよう

俺は苺子の魂を館付近に呼び寄せた

決して実ることの無い恋心は一人の少年を狂わせてしまった

カナネ

…奏斗

カナト

奏音。俺の事を幾ら罵倒しても構わない

カナト

でも苺子は…苺子の事は俺から引き剥がさないでくれ

その声にはカナネに対する罪悪感と苺子に対するどうしようもない悲しい覚悟であった

カナト

レパールも本当にごめんな…

…カナト

どう思うのが正解なのだろうか?

(苺子を奪われる怒りは勿論感じてる…だけど)

残酷な世界を生き続けて、何も変わらない空間に縛り付けられているカナトの恋

どうしてこんなにも悲しくて、虚しくて、切ない気持ちになるのだろうか

…っ

カナト

何で…レパールが…泣くんだよ

気づけば僕の目からは涙が溢れていた

カナト…君の気持ちは…決して悪いものじゃない

誰しもが持つものだ

カナト

…そうか

それに君は悪い人なんかじゃない

カナト

いやいや…それは無いだろ

ほら、また

悪い人なら自分は悪くないと言う

でもカナトは否定した…何よりの証拠じゃないか

カナト

……

彼は酷く自己肯定感が低いと思う。よく申し訳無さそうな顔をしていていた

本当はカナト自身よく分かっていて、だから辛くなっていて

…一つ聞くよ

カナト

…あぁ

何で僕も呼んだの?

本当に計画を完璧に遂行するなら僕は邪魔じゃないか

カナト

…それは

カナトに聞かれたくないであろう事を敬語じゃなくなる事も気にせずに問う

カナト

それ、は…

カナネ

…奏斗!

カナト

うおっ…!奏音…

カナトが答えあぐねていると、カナネがカナトを抱きつく

カナネの目にもカナトの目にも涙が浮かんでいた

カナネ

ごめんなさい…私何の力にもなれなかった

カナト

そんな事言うな…!奏音は何も悪くない

カナネ

あの時、奏斗の願いを裏切ってしまった…

カナネ

自分の命を犠牲にしてまで願ったものを…

お互いに言えずにいた本音だろうか

カナネ

私は奏斗が誰よりも誠実で思いやりがあるのを知っている

カナト

そんな…俺は…

僕だって少ししか一緒にいなかったけれど、カナトは優しいって思う

カナト

レパール…

カナトは溢れた涙を拭うこともせず、ただただ震えていた

カナト

俺はただ…

…ねぇ

カナト

止めてくれ…誰か…

カナト

こんな思い…

そう言うと共に床に崩れ落ちる

カナト

好きなんだ…こんなにも…

カナネ

……

カナネは静かに崩れ落ちたカナトに合わせるように身を屈めて抱きしめている

カナト

酔木家に生まれなかったら…奏音と共に双子として生まれ変われたら…

カナト

ちゃんとした形で苺子と出会えたんじゃないかっ…!

カナト

それこそ…レパールとも良き友になれたんじゃないか

…僕だって思うよ!普通に会えてたら僕らきっと…!

カナネ

…私も普通の双子として二人に会ってみたいわ

本当に残酷なのだと思い知らされる。この館は滅んでもなお二人を縛り付ける呪いだ

(どうしてカナトとカナネなんだ)

(二人共ただの少年少女じゃないか)

皆、言いたい事を言い終わって沈黙が場を覆う

三人で泣いていた、その時────

苺子

話、全部聞いてたよ

何と苺子が棺桶の蓋を押し出して出てきたのだ

…苺子!?苺子ー!

カナト

…苺子

僕は迷わず苺子に飛びついた

苺子

レパール…

苺子

ごめん、心配かけて

本当だよ!

再開を暫し喜んでいるとカナネが声を掛けてきた

カナネ

貴方が苺子?

苺子

はい!私が苺子です!

カナネ

元気ね…

苺子はあんな事があったというのに元気を見せる

カナト

…苺子、本当に

苺子

謝らなくていい!

カナト

えっ…?

苺子

ずっと棺桶の中で聞いてた

苺子

私への思いも、それで他人を傷つけてしまう苦悩も

カナト

苺子…

苺子は静かに、だけど優しい声色でカナトに語りかける

苺子

私さ…カナトの事、嫌いじゃない

苺子

それそこ普通の出会いをしていたら付き合っていたからもしれない

…苺子

苺子

分かってるレパール。それは叶わぬことだって

カナト

こっちに来てくれはしないよな…

寂しそうな顔でカナトが言う

苺子

確かに…こっちに来ようとは思わない…けど!

カナネ

…けど?

苺子

私達が住むこっちの世界に来て欲しいって本気で思う!

カナト

そんな事…

苺子

できないって決まったわけじゃない!

苺子

やるんだよ!

苺子は懸命に、訴えかけるように言い放った

(これでこそ苺子)

カナネ

奏斗

カナト

…奏音

二人は険しい顔をして考え込んでいる

カナト

やる…やってやる!

カナネ

奏斗がやるなら私もやる!

カナネ

今度こそ本当に終わらせましょう!

苺子

その調子!

改めて苺子は天性の人を惹きつける力も持っているのだと実感する

でも、どうやってやるつもりなんだい?

僕らは戻れるだろうけど…

呼ばれた僕らはどうにかなっても二人はどうするのか検討がつかない

苺子

それは…うーん

カナネ

…考えなしだったのね

カナト

まぁ、そこが苺子の良いところだからな…

(やっぱり苺子だね)

急に頼もしくなって不安に駆られていたがいつも通りで安心できた

カナト

でも…考えはある

あるの?

カナト

この館は俺と奏音の想いの具現化のようなものだと思うんだ

苺子

つまり?

カナト

つまり、俺達双子がこの館の崩壊を望んだら終わるんじゃないかってことだ

カナネ

私達はあの時互いに二人きりの変わらない平和を望んでいたの

カナネ

だから、ずっとここにいた

崩壊を願うって…

カナト

まぁ死ぬようなもんだな。もう死んでるが

今までの平穏を破壊してまで次へ二人は前へ進もうとしている。僕にも何かできないだろうか

…僕らは何をすれば良い?

確かに!何すれば良い?

苺子が食い気味に詰め寄る

カナト

まぁまぁ…落ち着け苺子

カナト

二人にやってほしいのは外への脱出だ

それだけ?

カナネ

脱出できなかったら崩壊に巻き込まれて命取りになるかもね

えぇ!?

…本当?

逃げきれなかったら永遠に現実に戻れ無くなってしまうのだろうか

カナネ

本当よ

苺子

うーん…私とレパールが逃げた後にできないの?

カナト

できないんだな、これが

何で?

カナト

二人を逃がすにはかなりの力を使うんだ

カナト

…つまり、後だとすぐに終わらせることができない

苺子

なるほどね

僕と苺子が逃げると同時に世界を崩壊させる。きっと大変で重大な事になるだろう

カナネ

やる事が決まったわね

カナト

あぁ

そうだね

苺子

うん!

カナネ

まずは一階の大広間に移動するわよ

皆、それぞれ想いを込めて歩き始めた

最早見慣れた大広間を見回す

(あと少しでこの空間は消えてしまうのか…)

カナト

ここが崩れ始めたら急いで玄関へ走り出せ

苺子

玄関開いてる?

カナト

開くはずだ

玄関を出たらどこに向かって走れば良いの?

カナネ

そのまま真っ直ぐよ。よそ見はオススメしないわ

カナネ

…気付いた頃には家のベッドにいるわよ

カナネの表情は少し…いや、かなり悲しそうであった

苺子

あっ!

どうしたの苺子?

苺子

リュックが無い!

あ…そういえば

確かによく見てみると最初、苺子が持っていたリュックが見当たらない

苺子

取りに行かないと!

カナト

大丈夫だ苺子。それくらいなら呼び寄せられる

そう言ってカナトが自分の目の前に手のひらを突き出すとリュックが現れた

苺子

凄い…

凄いね…

カナト

この中には何が入ってるんだ?

苺子

大した物は入ってないよ。筆記用具とルーズリーフだけ

カナト

あ〜なるほどな

心底納得したと言わんばっかりのカナトに疑問を覚える

カナト達の時代にはルーズリーフなんて無かったのに何で知ってるの?

カナト

苺子とレパールの夢…というか記憶を覗いていたからだ

なるほど…

この世界に連れていくだけじゃなくて、記憶を覗いていただなんて衝撃だ

カナネ

ルーズリーフ…見てみたいわ

苺子

もちろん!良いよ!

カナネ

ありがとう

カナネ

なるほど、線が入った紙なのね

苺子

勉強とかで使うんだ!

カナネ

そうなのね…面白いわ

カナネはルーズリーフを興味津々で見て、カナトに何か耳打ちした

カナト

一枚借りて良いか?その、筆記用具も

苺子

良いよ〜

そうしてカナトはルーズリーフに何かを書き込んでいった

カナト

よし…なぁ苺子

どうした?

カナト

これ持っていってくれないか?中身は…後で見てくれ

分かった

苺子はルーズリーフを大事そうにポケットの中にしまった

じゃあ…そろそろ…

カナネ

そうね…始めましょう

カナト

そうだな

苺子

…うん

この時間が永遠に続けば良いと心から思うが、進まないと何も変わらない

カナトとカナネは中央の方に移動して手を繋ぐ

カナト

奏音…行こう。二人で

カナネ

行きましょう。二人で

双子はお互いを確かめ合うように声を掛け合っている

苺子、僕達も

苺子

そうだね、レパール

親友と前へ進む覚悟と共に名を呼ぶ

カナネ

さようなら…ありがとう

カナト

…さよならだな。またいつか何処かで会おうぜ

僕は…本当に二人に会えて良かったって心から思う。…さようなら

苺子

カナト…カナネ…二人に会えるまで頑張って生きるから!

別れの言葉を互いに掛け合う。希望を、未来を込めて

カナネ

じゃあ…いくわよ

カナネの声がどこか遠くへの聴こえる気がしたのは気の所為だと思う事にした

カナト

全てよ!

カナネ

終われ!

二人がそう叫んだ瞬間、大きな地震と共に建物────いや空間そのものが崩れ始めた

苺子

…凄い音

カナト

ぼーっとしてる暇は無い!急いで逃げろ!

苺子!行こう!

カナネ

私達のことは良いから!

苺子

…うん!

僕らは玄関に向かって走り出した

外に出てもなお、場は揺れ続けている

本当に…この世界が…

苺子

二人共…さようなら…

目から溢れる涙など気にならなかった。それ以上の言葉にできない感情が胸を埋め尽くしている

苺子

カナトは真っ直ぐ走れって言ってたよね…!

苺子

急そごう…レパール!

苺子…うん!

家を出た時に通ったような道を駆け抜ける。ここで立ち止まっている暇はないのだ

レパール

あそこ!あれが出口じゃない?

そういうレパールの視線の先には、溢れんばかりの眩い光を放つところが見える

もうすぐ…!

足はとっくに限界を迎えているが走り続けている

レパール

うわっ!

…っ!?

レパール!!

短い悲鳴をあげた後レパールは木の根元に足を引っ掛け転んでしまったのだ

(ヤバイ!)

急いで足を止める。全力で走っていたが為に距離は十メートルほど離れてしまっていた

レパール

苺子…僕は置いて良いから…

派手に転んだレパールは立ち上がるにも一苦労といった様子である

絶対に嫌!レパールを置いてまで逃げたくない!

準備して!すぐ走るよ…!

さっきよりもずっと早くなった感覚になりながらレパールに向かって一目散に駆け寄る

行こう!私達の世界へ!

そういうと親友はハッとしたような表情をして

レパール

勿論!

二人で手を繋ぎ、光へ飛び込んだ

あまりにも真っ白な空間に私達はいた。ふわふわとした浮遊感がその場を包む

ここは…

私達はちゃんと帰れるのか不安に襲われる

そうだレパール!?

キョロキョロと周りを見回すと目をつぶり、光に飛び込んだ体制のまま固まっているレパールが見えた

(無事…良かった…)

安堵すると同時にカナトから貰ったルーズリーフが勝手にポケットから飛び出して開く

カナト…

ルーズリーフを見て少し悲しくなるとルーズリーフに描かれた文字が見える

そして声が────

カナト

出会えて幸せだったよ。苺子

カナト

また、どこかで会えると良いな

…私も会えて良かったと思ってるよ

カナト

なぁ…俺の、最後のわがままを聞いて欲しい

どうしたの?

カナト

現実に戻ったら気が向いた時で良い。あの館に春の花を持ってきて欲しい

カナト

母さんが死んだのが冬でな…カナネと三人で春になったら外に行く約束は果たせなかった

なるほど…ね

カナト

だから叶えて欲しい。俺の最後の願いを

勿論だよ。カナト

カナト

いつか会えるその時までの別れだ。幸せに生きてくれ

カナト

さようなら。ありがとう

こちらこそ、ありがとう

言葉で何度言っても足りないくらいの悲しいさようならといつかに期待を込めたありがとうを、君へ

目が覚めると日常に戻っていた

はっ!

戻ってる…

ベッドから飛び起きると共に安心が押し寄せる

スマホスマホ…あった

今は…午前五時!?

日付の変化も特に見られない。外も少し暗いがいつも通りの景色が広がっているのが分かる

…ただの夢じゃないよね

ふと思う。これはただの長い夢だっただけじゃないかと

(だとしても現実味が凄い)

……あ

もしかして…そう考えポケットに手を入れる

ルーズリーフ…!

私は思わず息を呑んだ

そこにはあの時貰ったルーズリーフが入っていて紛れもない現実なのだと教えてくれた

カナト…カナネ…

あの二人が存在した、数少ない証拠であった

…レパールにも確認しよう

そう考え、メッセージアプリを立ち上げた

ストロベリー🍓

こんな時間にごめん!

ストロベリー🍓

…さっきまでの事覚えてる?

レパール

勿論だよ。はっきり覚えてる

レパール

カナネもカナトも

ストロベリー🍓

今日暇?

レパール

特に予定は無いよ

ストロベリー🍓

貰ったルーズリーフにカナトのわがままが書いてあったんだ

ストロベリー🍓

叶えたい

レパール

なるほど。手伝うよ

ストロベリー🍓

時間は9時。集合場所はいつものところで

ストロベリー🍓

詳細はそこで話す

レパール

分かった

ストロベリー🍓

じゃあ、またね

レパール

またね

相変わらず外は薄暗い。けれど不思議と不安は無かった

連絡を済ませた私は少し考え込む

…よし

春の植物調べるか!

私は残念ながら頭がよろしくない。だから少しでもカナトに喜んでもらうための下調べを始めた

結局私は待ちきれず、家を飛び出して1時間前の集合場所にいた

(流石に早すぎたかな)

そう思っていると物凄く見覚えのある人影が視界に映った

レパール!?

レパール

苺子!?

互いに驚いて声を出す

レパール

早くない?

そっちこそ!

レパール

…どうやら考える事は一緒みたいだね

そうだね

ふふ…

レパール

ちょっ、何笑って…ふふ

気づけば同じ顔して笑みを浮かべていた

この気持ちが安堵なのか、信頼なのかは忘れることにする

じゃあカナトのわがままについて教えるね

レパール

うん。お願い

事情を説明した後、私達は近くにある花屋に移動し始めた

レパール

なるほど…春の植物ね

叶えてあげるのが私達にできることかなって

レパール

そうだね

ちょうど春で良かった!

レパール

だね

季節が春で良かったと心から、ここまで思ったのは始めてかもしれない

レパール

にしても春の花調べたんだよね?

うん!

レパール

植物とか全て食べ物としか思ってなさそうだったから感心してるよ

えぇ!ちょっと酷くない!?

レパール

ごめんって…

確かに私は食に目がない自覚はあるか心外である

とゆーか!元から花屋とか行ってたよ

レパール

本当に?

ホントホント!今から行く花屋だって行きつけなんだ!

レパール

そうだったんだ…知らなかった

まぁ良いよ!許す!そんなことよりもさー

レパール

う、うん

レパールの目が困惑を表している。意外と親友の考え事は分かりやすい…と思う。私は

何はともあれ、この話は終了だ

その花屋で知り合った子がいるんだよ!

レパール

そうなんだ

うん!年齢は近いのかな?見た目的に多分近い!

レパール

…知らないの?

何度も話してるけど、花の話に夢中でお互いに聞いたことなかったんだよねー

レパール

苺子らしいね…ちなみにどんな子なの?

紫が似合うポニーテールの子!好きな子がいるみたいだよ〜

あっ!この話はレパールと私だけの秘密ね!

レパール

分かったよ。ところで、その好きっていうのは?

実は前に、ひまわりの造花を見てたんだ!

レパール

ひまわり?

そう!ひまわり!花言葉が「あなただけを見つめる」らしいんだ

レパール

つまり、たった一人見つめていたい子がいると思ってるんだね?

正解!!

最近、一緒にいたいって思う友達がいるって言ってたから確定でしょ!

レパール

そうかもね…あれ?あの店じゃない?

あ、そうだね。あの子いたら紹介するよ!

レパール

いたらね

そうして私達は花屋に足を踏み入れた

いつも通りの花特有の香りが広がる店内に、あの子の姿は無かった

あれ?今日は居ないっぽい

レパール

まぁ、毎回居るとは限らないし

それもそうだね

レパール

じゃあ早速探してみよう

うん!

そうして話しながら花を選んでいった

色味や値段を色々考えた末に決め終わった私達は桜並木の道を歩いていた

結構人いるね

レパール

休日なうえに春だからじゃないかな?

かもね

周りを見渡すと老若男女問わず色んな人がいる

ちょうど右斜め前には花屋のあの子と同じくらいの少年二人が仲よさげに歩いていた

…叶わぬ恋って本当に辛いんだろうね

レパール

辛いと思うよ。カナトを見て心からそう感じた

何だかしんみりとした雰囲気になってしまった

すると、そんな想いを掻き消すように突風が吹いた

うわっ!

レパール

凄く強い風だね…

思わず目をつぶり、開けた時には桜の花弁が舞っていた

これが桜吹雪ってやつかな

レパール

多分ね

桜吹雪が舞う青空を、どうしようもない切なさと春のような暖かな想いを込めて見上げた

HAPPY BIRTHDAY ICHIGOTARUTO

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コメント

7

ユーザー

続き待ってましたー!✨ いやぁ、本当に迫力満点でした!!最初から最後までハラハラドキドキしながら読ませていただきました! でも、まさかカナトとは1ヶ月前から出逢ってるなんて思いませんでしたね! 一目惚れしてしまうなんて、流石は苺子()

ユーザー

投稿こんなに遅れてすみません…! 体調崩してたり意欲が沸かなかったりでこんな事に… ちなみに最後と前編の最初は繋がる仕様になっております! 途中で出てきた子達は私の執筆中の作品「君と夏」の紅と朔と藤花です。葵は時系列と舞台的に登場させることができませんでした…

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