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朝――いや、まだ夜が明けきらないうちに
りんねは屋敷の裏にある訓練場へと連れてこられた。
そこには太鼓やら爆竹やら、意味の分からない仕掛けがいくつも並んでいる。
「ようこそ、俺様特製の修行場へ。名付けて――音の地獄ステージ!」
胸を張って誇らしげに言う宇髄天元の隣で、りんねはぽかんとした顔でその異様な訓練器具の数々を見渡した。
りんね
宇髄
宇髄
天元が手を叩くと、訓練場に設置された太鼓が「ドン!」と派手に鳴り響いた。
宇髄
りんね
その疑問が終わる前に、太鼓の音が再び鳴った。
宇髄
りんね
りんねは悲鳴をあげながら、土の道を全力で走り始めた。
太鼓の合図で伏せる。 避けきれず爆竹がはじけ、煙に包まれる。 足元は滑る。体力はもたない。息も絶え絶え。
でも、りんねは倒れない。
前夜、自分の弱さに飲まれながら、それでも足を止めなかった自分を思い出す。
りんね
泥まみれになって、顔をしかめながら、それでも地面を蹴った。
修行は、それだけじゃ終わらなかった。
・目隠しした状態で、鳴った方向の音を当てる訓練 ・手足に重りをつけての剣の素振り ・仕掛け人形相手の反射神経トレーニング
体も心も、限界をとうに超えていた。 視界が揺れる。呼吸が苦しい。手も足も痛い。
だけど――
宇髄
天元が、何気ない口調で言う。
りんねは膝に手をつき、荒く息を吐きながら、それでも答えた。
りんね
その言葉に、天元は少しだけ目を見開き――そして、笑った。
宇髄
その日、りんねは倒れるようにして修行を終えた。
けれど、心の中では確かに――
昨日の自分を超えていた。
修行場に夕日が差し込みはじめた頃。
りんねは重たい剣を何百回目か分からない素振りの途中で、力尽きてその場に倒れ込んだ。
肩で息をしながら、地面に寝転がる。
空が赤く染まり、雲がゆっくりと流れていく。
りんね
全身が鉛のように重い。もう、動けそうになかった。
すると、すぐ横で足音が止まった。 派手な飾り帯の裾が視界にちらりと入る
宇髄
りんねは顔を横に向ける。
宇髄天元が、夕日に照らされた逆光の中で腕を組み、少しだけ笑っていた。
りんね
宇髄
宇髄
その声には、茶化しでも気まぐれでもない、真剣な信頼があった。
りんね
りんねが息を整えながらそう呟くと、天元はポンッと彼女の額に指を乗せた。
宇髄
その一言に、りんねの胸の奥が熱くなった。
これまでの人生で、こんなふうに見られたことがあっただろうか。
宇髄
宇髄
りんね
天元がふっと目を細める。
宇髄
宇髄
りんねは静かに頷いた。
りんね
天元は満足そうに笑い、夕焼けを背に立ち上がる。
宇髄
宇髄
りんね
宇髄
りんね
夕暮れの修行場に、天元の笑い声と、りんねの絶叫が響いていった。
数日後のある朝
宇髄
宇髄
宇髄
天元のその言葉に、いつもは寝坊するりんねもハッと目を覚ました、
胸の奥が、どくん、と高鳴る。
お館様。鬼殺隊の長。
柱たちが膝をつき、心から敬う人物。
その人に――自分が会う? 本当に?
りんね
宇髄
宇髄
天元のその声が、なぜだかとてもあたたかく感じた。
そして数時間後。 りんねは、産屋敷邸の門をくぐっていた。
敷地の奥には、真っ白な庭が広がっていた
白砂と淡い花、風の音すら吸い込むような静けさ。
その中に、ひときわ穏やかな空気を纏った男性が、柔らかな笑みを浮かべて座っていた。
りんね
天元は、無言で膝をつく。
りんねもすぐに見よう見まねで、その隣に跪いた。
すると、お館様――産屋敷耀哉は、目を閉じたまま、ゆっくりと口を開いた。
お館様
りんね
心が震える。
彼の声は、とても静かなのに、不思議と胸の奥に響く。
お館様
お館様
お館様
りんねは、思わず目を伏せた。
涙がにじみそうになったのを、ぐっと堪える。
お館様
まるで、すべてを見通しているような、やさしくて強い言葉だった。
その言葉に、りんねは小さく深くうなずいた。 胸の奥に、静かな炎が灯った気がした。
すると、そのとき――
静寂を破って、ひとりの男の声が響いた。
振り返ると、白い廊下の向こうから、鮮やかな羽織を纏った人物たちがゆっくりと入ってくる。
ーーー柱たち。 鬼殺隊の頂点。最強の剣士たち。
誰もが空気を変えるほどの存在感を放ち、その視線は鋭く、研ぎ澄まされた刃のようだった。
炎柱・煉󠄁獄杏寿郎。 風柱・不死川実弥。 蟲柱・胡蝶しのぶ。 そして、水柱・冨岡義勇に、岩柱・悲鳴嶼行冥――
その中心で、派手な装飾を身につけた宇髄天元が一歩前に出た。
宇髄
その一言で、全員の視線が一斉にりんねに向く。
圧がすごい。息が詰まる。思わず膝が震えそうになる。
でも、りんねは――引かなかった。 天元の背中がそこにあって、さっきのお館様の言葉が胸にある。
りんね
柱たちの間に、わずかなざわめきが走る。
煉󠄁獄は力強くうなずき、 不死川は「継子ぁ? また面倒見んのか」と舌打ちし、 胡蝶しのぶは目元に笑みを浮かべながらもじっと観察するように見ていた。
その中で、悲鳴嶼は目を閉じ、手を合わせる。
そして、水柱・冨岡義勇は口を開かず、ただ静かにりんねを見つめていた。
その瞳の奥に、なにか過去を映すような深さがあった。
宇髄
天元がにやっと笑う。
宇髄
宇髄
お館様は微笑を浮かべ、ゆっくりと頷いた
お館様
その瞬間、りんねは思った。
――私は今、本当に“鬼殺隊”の中にいる。
守るために戦う道を、自分で選んだのだと。
りんねの目は、まっすぐに前を見ていた。
りんねの自己紹介が終わり、静まり返る空気の中――
一人だけ、そっぽを向いていた男がいた。
風柱・不死川実弥(しなずがわさねみ)
乱れた白髪と傷だらけの顔。
誰にも心を許してなさそうな殺気と、荒々しい存在感
不死川
不死川
冷たく吐き捨てるようなその言葉に、場がぴりりと緊張する。
天元は言い返そうと口を開きかけたが――その前に、りんねが一歩前に出た。
りんね
実弥の目がすっと細くなる
りんねはその殺気に、心臓が止まりそうになりながらも、視線をそらさなかった。
怖い。怖いのに、逃げなかった。
数秒の沈黙のあと――
不死川
実弥は舌打ちしながらも、目線を外し、ぶっきらぼうに言い捨てる。
不死川
りんね
りんねが思わず聞き返すと、天元がニヤリと笑った。
宇髄
宇髄
不死川
真っ赤になった不死川が大声で否定する
柱たちの中に、ほんの少し笑みがこぼれる
りんね
りんねは戸惑いながらも、ぺこっと頭を下げた。
その姿に、冨岡義勇がぽつりとつぶやいた。
冨岡
宇髄
天元が誇らしげに胸を張る。
宇髄
宇髄
柱たちとの対面が終わり、お館様のもとを辞した後――
りんねは天元と一緒に屋敷の縁側でひと息ついていた。
りんね
宇髄
宇髄
りんね
宇髄
宇髄
りんねは少しだけ目を伏せた。
不死川の目――あれは、確かに怖かったけど、ただの怒りや拒絶じゃなかった。
りんね
りんね
天元は、煙管をくるくると回しながら口元で笑う。
宇髄
宇髄
そのとき、屋敷の門の方から誰かの気配がした。
不死川
りんねが顔を上げると、そこには不死川実弥が腕を組んで立っていた。
いつもの険しい顔のままだが、どこか目が泳いでいるようにも見える。
不死川
不死川
りんね
不死川
不死川
りんね
不死川
不死川
そう早口でまくし立てると、不死川はさっさと背を向けて歩き出した。
その背中は、どこか妙に落ち着きがなかった