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寧々

(────ここは…)

最初こそ混乱していたものの、

すぐにとある恐怖が寧々を支配する。

寧々

(……まさか…)

あぁ、そういう勘はあたるんだな。

見ると、

夏菜子達が居る。

夏菜子

あっれー、ここに居たんじゃん

約束すっ飛ばしていいのかなー

実奈

はぁ?まじ?

実奈

調子乗ってるだろアイツ

寧々

あ……

寧々

やっ、止めて…!!

寧々

(怖い…)

あははっ

今更?

そうすると、嫌に強い力で手首を掴まれる。

寧々

痛っ!

実奈

うっせーな、耳障りなんだよ

そう大声で怒鳴られる。

寧々

っ……

そのまま、強制的に教室からどこかへ連れ出される。

寧々

あっ……

寧々

鮎…

寧々

助け────

そう助けを呼ぶが、

……

寧々

……え

何も聞こえなかったかのように、目を背けられる。

寧々

なん、で…?

絶望していると、

バンッ

激しい衝撃が身体を襲う。

寧々

っぁぐ…

何その声ー!!!

実奈

まじでうるさいんだけど

夏菜子

なんで今日そんな変なの?

寧々

へ、変……?

寧々

私、が…?

寧々

そんなの、皆が─────!!!

空気が変わった。

実奈

────は?

ハッとして、前を向く。

そして恐怖する。

見開かれた淀んだ目はしっかりと私を捉えている。

嫌に静かな教室では、目を瞑る生徒もいた。

寧々

あ……

実奈

んだよ……

ドンッ

寧々

っっ!!!!

寧々

ぁ゙っ…うぅ゙…!!?

私の鼻から、鈍い音がする。

衝撃で、目の前がチカチカする。

そして、何かが顔を伝う。

鼻から…口へ、喉へ。

生暖かい、赤黒い物が。

寧々

(殴られ…た……?)

実奈

何だよ!!!お前!!!

至近距離で怒鳴られる。

寧々

っぅう…

高く結んだ髪を乱暴に掴み、そのまま壁へ打ち付けた。

…実奈は何も言わない。

否、興奮している故に言えないのだろう。

寧々は力無くその場に崩れ落ちる。

…実奈、やりすぎ、じゃない?

夏菜子

……う、うん───

実奈

────何?

!!

なんでもないよ〜

何を言っているかは分からないが、

それが実奈にとって気分のいい言葉では無いことは明らかだった。

そのまま、実奈達は教室を後にする。

寧々

……

寧々

(…何で……)

寧々

(私が……)

ぐしゃぐしゃの髪。

醜く恐怖に歪んだ顔。

とても人前に晒すことは出来ず、

寧々はトイレへ向かう。

寧々

(…そういえば)

1周まわって冷静になった頭で考える。

寧々

(鮎は入れ替わったと思ってたけど)

寧々

(寧ろ、こっちの鮎の方が、私の知ってる鮎に近いような……)

そこでようやく、思い出す。

……いや、思い出してしまう。

寧々

……

見て見ぬふり。

その心配の言葉を聞くのは、

もう、15回目。

何で、誰も見てくれないの。

どうして、

おかしいよ。

なんで、

「鏡の向こうの私」は笑っているの。

寧々

……

寧々

寧々

うっ……うぅ…

涙が止まらない。

寧々

……っ私…

寧々

最っ…低だな…

この光景を幾度となく体験してきた私には分かる。

私は、この「辛さ」から逃れるために、

「赤の他人」である鏡の向こうの自分にその人生をなすり付けたのだ。

寧々

……ごめん…

寧々

ごめん、なさいっ!!!

辛い。

つらい。

でも、例え入れ替わってなくたって。

きっと、どうせ私は「生きたい」のだから、

死ぬことすら、許されない。

ましてや、鏡の王が死んでしまうと、

この世界は、どうなるのだろう。

誰かの不幸で、誰かが幸せになる。

誰かの涙で、誰かが笑う。

誰が、堕ちるか。

誰が、生き残るのか。

この世界の意味とは?

じゃあ、仮に消せたとして。

…それで幸せになる人はどれくらいいる?

……ねぇ、どうしたらいいの。

…わたしは、

なんのために、

……生まれて、きたのだろう。

……ダメだ。

正攻法は通用しない……!

遥斗

はぁっ…はぁ…

俺が止まると、ドッペルゲンガーは止まって。

嘲笑うように、俺を見る。

遥斗のドッペルゲンガー

あれ、もう疲れちゃった?

遥斗のドッペルゲンガー

ダメだよー、勝手に止まったら……ね?

遥斗

!!

ガシャンッ

遥斗

あ、危ね……

激突音とともにバケツやら、そこそこの大きさのものが降ってくるのを、遥斗は間一髪で躱す。

遥斗のドッペルゲンガー

ほーら早くしないと、先輩死んじゃうよー

遥斗

はぁ!?

男子バスケットボール部員

っひぃ!!!!

遥斗

遥斗

先輩!!

遥か上の手すり、その落下寸前に彼はいる。

見ればその固定されている紐がちぎれそうになっていた。

遥斗

(これ、結構やべえんじゃね!?)

遥斗のドッペルゲンガー

おー、また止まったぞー?

遥斗のドッペルゲンガー

やれ!

一斉にボールが身体に当てられる。

もう、痣を超えた何かの傷になっている箇所をそれは容赦なくエグってくる。

遥斗

ってぇ!!!!!

痺れる足を動かし、何とか走り出そうとするが、

意図も簡単に足をかけられ、無防備に転んでしまった。

遥斗

っこの……

遥斗のドッペルゲンガー

はー、流石に時間かせすぎちゃったな

遥斗のドッペルゲンガー

じゃ、後はリンチしといて

遥斗

!!

遥斗のドッペルゲンガー

……と、その前に

動けない遥斗にドッペルゲンガーはどんどん近づいてくる。

そしてしゃがんで、口を吊り上げこう言った。

遥斗のドッペルゲンガー

じゃあね

遥斗のドッペルゲンガー

こ れ で 僕 が 本 物 だ !!!!

遥斗のドッペルゲンガー

あははははっ!!

何かは分からないが、

きっと当たったらとんでもない凶器を掲げて、ドッペルゲンガーは笑った。

遥斗

────!!!

────ここは?

遥斗

…あのさ

…俺、だよな?

天国では無いみたいだけど…

……ソウマトウってヤツ?

誰と話してるんだ?

……何

優じゃん

遥斗

バスケでさ

え、僕スポーツ分かんないけど

遥斗

いやっ、違くて!

遥斗

聞いて?

うん

遥斗

バスケでさ、よく俺の考えが読まれるんだけど…

例えば?

遥斗

ここでシュート打とう!とか

遥斗

右行こう!

遥斗

とか

遥斗

よく、想定済みみたいな感じで受け流されるんだよなー

はぁ

まぁ、

スマホから目を離して、彼は言う。

遥斗はさ、表情でやすいんだよ

遥斗

え、まじ?

うん

割と出てるよ

だから、さ

ポーカーフェイスとまでは行かなくても

「演技」みたいにすればいいと思う

「負ける、みたいな顔しとけば、相手油断するでしょ」

遥斗

いやー、そんな単純か?

……待てよ?

油断……そうか!!

ドンッ

遥斗のドッペルゲンガー

──────え?

たった今振り下ろされる予定の凶器は遠くに落ちており、

遥斗のドッペルゲンガーは混乱したように違和感のある鼻に手を当てる。

遥斗のドッペルゲンガー

……何…血……?

遥斗のドッペルゲンガー

何、が……

見開かれた目は、そのまま下を向く。

───そこに遥斗は居ない。

ドガッ

遥斗のドッペルゲンガー

ッガッ……ぅ…グゥ……

ドッペルゲンガーの腹に強烈な蹴りが走った。

今度こそ蹴った正体を見ると───。

遥斗のドッペルゲンガー

お前っ……何で!?

遥斗

……柄じゃねぇんだけどな

遥斗

人を騙すのはよ!!

そのまま、上に上がる階段に向かって走り出した。

遥斗のドッペルゲンガー

────……お、追いかけろ!!

一瞬の間思考が止まっていたが、すぐにドッペルゲンガーに指示を出す。

大勢が、遥斗を追いかけ始めたが、彼はもう階段を上がりきっていた。

遥斗

っ先輩!今助け────

男子バスケットボール部員

あ────

……「ブチッ」と何がの切れる、嫌な音がした。

遥斗

!!!!

遥斗

先輩────!!!

遥斗のドッペルゲンガー

あは、はっ、残────

遥斗

っさせない!!!

「無我夢中」

何度その性格で困ってきたとこか。

だが、

今は、それに「感謝」しか無かった。

遥斗は手すりに足をかけ、部員の身体を掴む。

急な重さに耐えれなくなったネットが、

落下する。

……そう。

────2人と共に。

遥斗のドッペルゲンガー

はあっ!!?

遥斗のドッペルゲンガー

馬鹿じゃないの!?

そんな外野の声も、もう耳には届かない。

遥斗

いっけえぇ!!!

遥斗は「落下体勢」から、「着地体勢」に身体の向きを変え、

ダンッ

華麗に着地したのだ。

男子バスケットボール部員

あれ……死んで、ないのか!?

遥斗

走って、先輩!!!!

声の限り叫び、手を引いた。

遥斗のドッペルゲンガー

ちょっ─────

そのまま、一目散に体育館から抜け出すことに成功したのだった。

ポツン、と残され、唖然とした様子でそれを見ていたドッペルゲンガーは、

正気を取り戻したかのように、彼らを追いかけようとするが……。

……バラバラに崩れ落ちてしまう。

遥斗のドッペルゲンガー

……な、何だよ…

やっとの事で、掠れる声を遥斗のドッペルゲンガーが発する。

遥斗のドッペルゲンガー

…あっちの僕ってそんなに凄かったの?

……それに答える者は、誰も居ない。

優のドッペルゲンガー

───何だ、そんなもんかよ、結局

酷く軽蔑したような声が真上から降ってくる。

…うぅ……

僕は、元々そんなに体を動かすことが好きでは無い。

昔から、勉強、本ばかり読んできた。

だから、受け身のとり方なんて知らないし、

正しい力の入れ方も知らない。

……でも、僕に負けるのは、少し苛立つ。

優のドッペルゲンガー

お前も見掛け倒しだよなァ

そう言って、壁にもたれかかっている「庵」の髪を掴む。

優のドッペルゲンガー

2対1で負けるなんて…

……

見れば、左腕があらぬ方向に曲がっている。

(痛々しいな…)

優のドッペルゲンガー

珀というやらはまだ雑魚どもと殺り合ってる

優のドッペルゲンガー

お前たちも大したこと無かったなァ

……うっざ…

(僕っていうのがまたうざい…)

ドッ

いっ─────!!

不意打ちに歯を食いしばる。

ゴホッ……ゴホッ!

足りなくなった酸素を一生懸命に吸った。

優のドッペルゲンガー

そんな「俺」とももうおさらばだ

優のドッペルゲンガー

じゃァな

優のドッペルゲンガー

─────なり損ない

そうして、優のドッペルゲンガーは目にも止まらぬ速さで蹴りを繰り出した。

(まずい、やられる────!!)

……。

…。

……?

僕は、恐る恐る目を開けた。

ポタ……

ポタ…

─────!!!

見れば、優の顔のすぐ横に、

足があった。

だが、おかしい。

その足からは────。

否、

足 の 断 面 か ら 血 が 滴 り 落 ち て い る 。

うっ……

おぞましい光景に何かが出てきそうになるのを抑えた。

優のドッペルゲンガー

ってぇな…

優のドッペルゲンガー

何だよ、意外と遅かったなァ

斬られているにも関わらず、彼は嫌な笑みを何処かへ向ける。

────先輩に向かって随分な言い草だね、君

せ、先輩……

(まさか、先輩が斬ったの?)

(…いや、そうとしか考えられない……)

まぁいいよ、ボクは君目当てだったんだ!

優のドッペルゲンガー

────は?

そう言うと、僕を置き去りに、僕のドッペルゲンガーと話し始める。

────さて

まず、何でこんな事をしているんだい?

優のドッペルゲンガー

……こんな事?

そうだよ

こーんな大勢のドッペルゲンガー集めてさ

デモかと思ったよ

優のドッペルゲンガー

ヘェ

まぁ、そんなことはどうでも良くて…

優のドッペルゲンガー

お前何なんだよ……

───君に、指示を送ったのは誰だい?

優のドッペルゲンガー

……

一瞬、彼の眉が動く。

黙秘義務でもある?

優のドッペルゲンガー

……俺は知らな────

ザシュッ

素早い一撃だった。

珀は無言で、彼の腕を切り裂く。

優のドッペルゲンガー

……!!

おい待て、殺すな

すかさず、庵から警告される。

分かってるって

ボクが加減間違えたことなんてあった?

……はぁ

で、心当たりがあるようだな

優のドッペルゲンガー

……

言っておくけど、次は腹だよ

優のドッペルゲンガー

(肝が据わってるみたいだし、あんま効果ないかな…?)

優のドッペルゲンガー

ただ、俺は─────

優のドッペルゲンガー

王に従った迄だ

……王?

…この世界のドッペルゲンガーを統率する存在だ

そう言うと、庵はボクに目配らせをする。

恐らく、「話しいていいか、否か」の相談だろう。

別に大丈夫だよ

それからしばらくの間、庵はミラーワールドの真実について優に教えた。

寧々が!?

なら、異世界研究部に入ったのも…?

いや、それは無意識だね

む、無意識?

うん

言っただろう?

運命は変わらないのさ

優のドッペルゲンガー

───おい

その場で動けないままのドッペルゲンガーが不機嫌そうに口を開く。

優のドッペルゲンガー

多分、俺ァ殺されるだろうが

優のドッペルゲンガー

最後に、一つだけ教えてやるよ

優のドッペルゲンガー

…弱っちィ俺さんによォ

!!!

はぁ……?何?

そして、1呼吸おいて、不愉快な笑みでこう告げた。

優のドッペルゲンガー

───「その2人」

優のドッペルゲンガー

壊 さ な く て い い ん だ な ?

──────え

優がハッとして周りを見渡す。

───そして、とある者を凝視する。

優は勿論人間だ。

だから、優のドッペルゲンガーと、優以外に、

「この場に居る者」。

そう。

───── 庵 と 、 珀 を 。

……え、まさか…

ザシュッ

間髪入れずに、斬撃音が聞こえる。

見れば、庵が優のドッペルゲンガーの喉元をかき斬っていた。

(あーぁ…面倒なこと言ってくれるなぁ)

殺すなって言ったのそっちだよね?

…そうだったな

え、えっと……

本当、なんですか…??

……

先輩!

……そうだね

ボク達は、「元々」ドッペルゲンガーだった

も、元々?

そう、「元々」だよ

今は「人間」さ

……

…人間に、成ったのさ

ボク達、王サマのお目付け役をしていてね

ほら、ボクって、オカルト好きだから

それでね、寧々ちゃんと同じ中学校だったんだよね

そうそう、まぁ、現実世界でのボクと庵はあまり目立たない方だったから、

彼女は顔もあまり知らないだろうけど…

……それから、ある日突然

彼女の性格がまるで変わっていたんだ

優くんなら薄々勘づいてそうだけど、

彼女、まぁ言葉に言い表せないような境遇だったんだけど

それをものともしないと言うか…

最初こそは驚いていたけれど、

一度、「鏡を覗いたら」あの調子になったね

分かるだろう?

君達がドッペルゲンガーだと思ってた寧々ちゃんは、「本物」だったんだ

……早く本題に入れ

───そうだね、悪かったよ

何故、ボク達が現実世界に出てきたか

それはね、

───この世界を、壊したいからさ

この世界……

ミラーワールドを、ですか!?

そうだね

これ以上犠牲者を出したくないし

王サマだって、こんな世界、望んでいないと思うよ

……そんな…

で、でも、どうやって……

…部室

部室に、鏡の部屋があるだろ

あ、ありますね

(僕達はそこからこっちに来たんだし……)

現実世界の鏡の部屋には、鏡が無数にあったが

こっちの世界には、大きな鏡が1つしかない

…それが、ミラーワールドの核……?

そうだ

それを壊せば、この世界は消滅する

無論、

─────ド ッ ペ ル ゲ ン ガ ー も

!!!!

じゃあ、先輩達も、寧々もってことですか!?

……あぁ

それだけじゃない

現実世界にいる、全てのドッペルゲンガー共も全て消える

そ、そんな……

驚愕の連続に、優が混乱した様子を見せていると、

珀が口を開く。

消えるのは、ミラーワールドと現実世界にいるドッペルゲンガー

ちなみに、ボク達の「本物」は見たことあるかい?

いっ、いや…無いですけど

何でだと思う?

……まさか、殺したんですか?

…正解、やっぱり君は勘が鋭いみたいだね

(その褒め言葉、初めて要らないって思ったな…)

ボク達は、本物を殺して、本当の「人間」になった元ドッペルゲンガーなんだ

(訳わかんない…)

……でも、その場合現実世界に珀先輩と、庵先輩の存在が無いことになっちゃうんじゃ?

そうなのだよ!

凄いね!

顔を輝かせて、笑顔になるが、

その目は笑っていないように見える。

その場合は、消えないみたいなんだよ

…え

でも、それじゃあ意味が無い

だから、ボク達はこの世界に残る

そうか、消えるのはミラーワールドにいるドッペルゲンガーと現実世界にいるドッペルゲンガーだから……

ふふふ、いいね、君は次期部長に相応しい

……

ボク達は晴れて消えることが出来る、そうだろう?

……はい

っでも、そんなのあんまりですよ!

何か、別の方法は……

…少なくとも、俺達ではこれが最適解だ

……そんな

じゃ、部室行こっか

寧々ちゃんはそこに居るだろうし…

そのまま、普段通りの様子で部室に歩みを進める珀と庵。

その2つの影を、優は呆然と眺めていた。

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