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2件
寧々
最初こそ混乱していたものの、
すぐにとある恐怖が寧々を支配する。
寧々
あぁ、そういう勘はあたるんだな。
見ると、
夏菜子達が居る。
夏菜子
心
実奈
実奈
寧々
寧々
寧々
心
心
そうすると、嫌に強い力で手首を掴まれる。
寧々
実奈
そう大声で怒鳴られる。
寧々
そのまま、強制的に教室からどこかへ連れ出される。
寧々
寧々
寧々
そう助けを呼ぶが、
鮎
寧々
何も聞こえなかったかのように、目を背けられる。
寧々
絶望していると、
バンッ
激しい衝撃が身体を襲う。
寧々
心
実奈
夏菜子
寧々
寧々
寧々
空気が変わった。
実奈
ハッとして、前を向く。
そして恐怖する。
見開かれた淀んだ目はしっかりと私を捉えている。
嫌に静かな教室では、目を瞑る生徒もいた。
寧々
実奈
ドンッ
寧々
寧々
私の鼻から、鈍い音がする。
衝撃で、目の前がチカチカする。
そして、何かが顔を伝う。
鼻から…口へ、喉へ。
生暖かい、赤黒い物が。
寧々
実奈
至近距離で怒鳴られる。
寧々
高く結んだ髪を乱暴に掴み、そのまま壁へ打ち付けた。
…実奈は何も言わない。
否、興奮している故に言えないのだろう。
寧々は力無くその場に崩れ落ちる。
心
心
夏菜子
実奈
心
心
何を言っているかは分からないが、
それが実奈にとって気分のいい言葉では無いことは明らかだった。
そのまま、実奈達は教室を後にする。
寧々
寧々
寧々
ぐしゃぐしゃの髪。
醜く恐怖に歪んだ顔。
とても人前に晒すことは出来ず、
寧々はトイレへ向かう。
寧々
1周まわって冷静になった頭で考える。
寧々
寧々
そこでようやく、思い出す。
……いや、思い出してしまう。
寧々
見て見ぬふり。
その心配の言葉を聞くのは、
もう、15回目。
何で、誰も見てくれないの。
どうして、
おかしいよ。
なんで、
「鏡の向こうの私」は笑っているの。
寧々
寧々
寧々
涙が止まらない。
寧々
寧々
この光景を幾度となく体験してきた私には分かる。
私は、この「辛さ」から逃れるために、
「赤の他人」である鏡の向こうの自分にその人生をなすり付けたのだ。
寧々
寧々
辛い。
つらい。
でも、例え入れ替わってなくたって。
きっと、どうせ私は「生きたい」のだから、
死ぬことすら、許されない。
ましてや、鏡の王が死んでしまうと、
この世界は、どうなるのだろう。
誰かの不幸で、誰かが幸せになる。
誰かの涙で、誰かが笑う。
誰が、堕ちるか。
誰が、生き残るのか。
この世界の意味とは?
じゃあ、仮に消せたとして。
…それで幸せになる人はどれくらいいる?
……ねぇ、どうしたらいいの。
…わたしは、
なんのために、
……生まれて、きたのだろう。
……ダメだ。
正攻法は通用しない……!
遥斗
俺が止まると、ドッペルゲンガーは止まって。
嘲笑うように、俺を見る。
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗
ガシャンッ
遥斗
激突音とともにバケツやら、そこそこの大きさのものが降ってくるのを、遥斗は間一髪で躱す。
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗
男子バスケットボール部員
遥斗
遥斗
遥か上の手すり、その落下寸前に彼はいる。
見ればその固定されている紐がちぎれそうになっていた。
遥斗
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
一斉にボールが身体に当てられる。
もう、痣を超えた何かの傷になっている箇所をそれは容赦なくエグってくる。
遥斗
痺れる足を動かし、何とか走り出そうとするが、
意図も簡単に足をかけられ、無防備に転んでしまった。
遥斗
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗
遥斗のドッペルゲンガー
動けない遥斗にドッペルゲンガーはどんどん近づいてくる。
そしてしゃがんで、口を吊り上げこう言った。
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
何かは分からないが、
きっと当たったらとんでもない凶器を掲げて、ドッペルゲンガーは笑った。
遥斗
────ここは?
遥斗
…俺、だよな?
天国では無いみたいだけど…
……ソウマトウってヤツ?
誰と話してるんだ?
優
優じゃん
遥斗
優
遥斗
遥斗
優
遥斗
優
遥斗
遥斗
遥斗
遥斗
優
優
スマホから目を離して、彼は言う。
優
遥斗
優
優
優
優
優
優
遥斗
……待てよ?
油断……そうか!!
ドンッ
遥斗のドッペルゲンガー
たった今振り下ろされる予定の凶器は遠くに落ちており、
遥斗のドッペルゲンガーは混乱したように違和感のある鼻に手を当てる。
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
見開かれた目は、そのまま下を向く。
───そこに遥斗は居ない。
ドガッ
遥斗のドッペルゲンガー
ドッペルゲンガーの腹に強烈な蹴りが走った。
今度こそ蹴った正体を見ると───。
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗
遥斗
そのまま、上に上がる階段に向かって走り出した。
遥斗のドッペルゲンガー
一瞬の間思考が止まっていたが、すぐにドッペルゲンガーに指示を出す。
大勢が、遥斗を追いかけ始めたが、彼はもう階段を上がりきっていた。
遥斗
男子バスケットボール部員
……「ブチッ」と何がの切れる、嫌な音がした。
遥斗
遥斗
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗
「無我夢中」
何度その性格で困ってきたとこか。
だが、
今は、それに「感謝」しか無かった。
遥斗は手すりに足をかけ、部員の身体を掴む。
急な重さに耐えれなくなったネットが、
落下する。
……そう。
────2人と共に。
遥斗のドッペルゲンガー
遥斗のドッペルゲンガー
そんな外野の声も、もう耳には届かない。
遥斗
遥斗は「落下体勢」から、「着地体勢」に身体の向きを変え、
ダンッ
華麗に着地したのだ。
男子バスケットボール部員
遥斗
声の限り叫び、手を引いた。
遥斗のドッペルゲンガー
そのまま、一目散に体育館から抜け出すことに成功したのだった。
ポツン、と残され、唖然とした様子でそれを見ていたドッペルゲンガーは、
正気を取り戻したかのように、彼らを追いかけようとするが……。
……バラバラに崩れ落ちてしまう。
遥斗のドッペルゲンガー
やっとの事で、掠れる声を遥斗のドッペルゲンガーが発する。
遥斗のドッペルゲンガー
……それに答える者は、誰も居ない。
優のドッペルゲンガー
酷く軽蔑したような声が真上から降ってくる。
優
僕は、元々そんなに体を動かすことが好きでは無い。
昔から、勉強、本ばかり読んできた。
だから、受け身のとり方なんて知らないし、
正しい力の入れ方も知らない。
……でも、僕に負けるのは、少し苛立つ。
優のドッペルゲンガー
そう言って、壁にもたれかかっている「庵」の髪を掴む。
優のドッペルゲンガー
庵
見れば、左腕があらぬ方向に曲がっている。
優
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
優
優
ドッ
優
不意打ちに歯を食いしばる。
優
足りなくなった酸素を一生懸命に吸った。
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
そうして、優のドッペルゲンガーは目にも止まらぬ速さで蹴りを繰り出した。
優
……。
…。
……?
僕は、恐る恐る目を開けた。
ポタ……
ポタ…
優
見れば、優の顔のすぐ横に、
足があった。
だが、おかしい。
その足からは────。
否、
足 の 断 面 か ら 血 が 滴 り 落 ち て い る 。
優
おぞましい光景に何かが出てきそうになるのを抑えた。
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
斬られているにも関わらず、彼は嫌な笑みを何処かへ向ける。
珀
優
優
優
珀
優のドッペルゲンガー
そう言うと、僕を置き去りに、僕のドッペルゲンガーと話し始める。
珀
珀
優のドッペルゲンガー
珀
珀
珀
優のドッペルゲンガー
珀
優のドッペルゲンガー
珀
優のドッペルゲンガー
一瞬、彼の眉が動く。
珀
優のドッペルゲンガー
ザシュッ
素早い一撃だった。
珀は無言で、彼の腕を切り裂く。
優のドッペルゲンガー
庵
すかさず、庵から警告される。
珀
珀
庵
庵
優のドッペルゲンガー
珀
優のドッペルゲンガー
珀
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
優
庵
そう言うと、庵はボクに目配らせをする。
恐らく、「話しいていいか、否か」の相談だろう。
珀
それからしばらくの間、庵はミラーワールドの真実について優に教えた。
優
優
珀
優
珀
珀
珀
優
優のドッペルゲンガー
その場で動けないままのドッペルゲンガーが不機嫌そうに口を開く。
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
優
優
そして、1呼吸おいて、不愉快な笑みでこう告げた。
優のドッペルゲンガー
優のドッペルゲンガー
優
優がハッとして周りを見渡す。
───そして、とある者を凝視する。
優は勿論人間だ。
だから、優のドッペルゲンガーと、優以外に、
「この場に居る者」。
そう。
───── 庵 と 、 珀 を 。
優
ザシュッ
優
間髪入れずに、斬撃音が聞こえる。
見れば、庵が優のドッペルゲンガーの喉元をかき斬っていた。
珀
珀
庵
優
優
珀
優
珀
珀
優
そう、「元々」だよ
今は「人間」さ
……
…人間に、成ったのさ
ボク達、王サマのお目付け役をしていてね
ほら、ボクって、オカルト好きだから
それでね、寧々ちゃんと同じ中学校だったんだよね
そうそう、まぁ、現実世界でのボクと庵はあまり目立たない方だったから、
彼女は顔もあまり知らないだろうけど…
……それから、ある日突然
彼女の性格がまるで変わっていたんだ
優くんなら薄々勘づいてそうだけど、
彼女、まぁ言葉に言い表せないような境遇だったんだけど
それをものともしないと言うか…
最初こそは驚いていたけれど、
一度、「鏡を覗いたら」あの調子になったね
分かるだろう?
君達がドッペルゲンガーだと思ってた寧々ちゃんは、「本物」だったんだ
……早く本題に入れ
───そうだね、悪かったよ
何故、ボク達が現実世界に出てきたか
それはね、
珀
優
優
珀
珀
珀
優
優
庵
優
庵
優
優
庵
庵
優
優
庵
庵
庵
庵
優
優
庵
庵
庵
優
驚愕の連続に、優が混乱した様子を見せていると、
珀が口を開く。
珀
珀
優
珀
優
珀
優
珀
優
優
珀
珀
顔を輝かせて、笑顔になるが、
その目は笑っていないように見える。
珀
優
珀
珀
優
優
珀
優
珀
優
優
優
庵
優
珀
珀
そのまま、普段通りの様子で部室に歩みを進める珀と庵。
その2つの影を、優は呆然と眺めていた。