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心緒響命病

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心緒響命病

2 - 夢の話

♥

150

2022年10月02日

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夢を見た

一面が木葉で埋もれた道を

君と二人で歩いていく

赤や黄色に染まった木々が 立ち並ぶ

そこを君と

手を繋いで進んでいく

少し肌寒いね

なんて言いながら君は

僕の手を、力を込めて ギュッと握る

道の先はどうなっているのだろう

段々と足を早めて

風に煽られながら進んでいく

君の手を引いて

向こうを見たい

向こうの世界を見てみたい

どんな景色なのだろう

早く

早く

進まなきゃ

足元が葉っぱの中に埋もれていった

前に進めなくなった

どうして

どうして

お願いだから

僕を引き止めないで

月ノ瀬アキ

ッ…はぁ…はぁ

黄葉カエデ

アキ…くん?

いつもの病室だ

隣でカエデが心配そうな顔で こちらを見てくる

僕は気を落ち着かせるため 深呼吸をした

月ノ瀬アキ

なんでもないよ

月ノ瀬アキ

ごめん

月ノ瀬アキ

夢を見たんだ

黄葉カエデ

なーんだ

黄葉カエデ

心配して損した

カエデはつまんなそうに あくびをした

月ノ瀬アキ

あはは…

黄葉カエデ

で、どんな夢
だったの?

月ノ瀬アキ

え?んーと…

さっきまで見ていた夢なのに もう忘れかけている

ぼんやりと頭の中で 黄色い道を思い浮かべる

月ノ瀬アキ

大した事ない夢
だったよ

月ノ瀬アキ

なーんか

月ノ瀬アキ

道を歩いてた…
ような気がする

黄葉カエデ

なにそれ笑

黄葉カエデ

うなされてたのに?

月ノ瀬アキ

うなされてた?

黄葉カエデ

うん!

黄葉カエデ

いつもアキくんの
方が早起きなのに

黄葉カエデ

私先に起きちゃったもん

月ノ瀬アキ

そう…

黄葉カエデ

そろそろ朝ご飯だよ

黄葉カエデ

布団整えないとっ

月ノ瀬アキ

そうだね

黄葉カエデ

ご馳走さまっ

カエデがパンッと両手を合わせる

月ノ瀬アキ

はやっ…

黄葉カエデ

アキくんが遅いんだよ

月ノ瀬アキ

あんま食欲なくて

まだまだ残っているのを見て ため息をつく

黄葉カエデ

病院食って美味しく
ないよねー

黄葉カエデ

私、一度誕生日に
外食させてもらってさ

黄葉カエデ

その時から舌が
肥えちゃった

月ノ瀬アキ

僕も…

月ノ瀬アキ

母さんが持って
きたモンブラン…

月ノ瀬アキ

美味しかったなぁ…

遠い昔の記憶

あれから母さんとは 会わなくなった

黄葉カエデ

その後先生に
怒られてたよね

黄葉カエデ

甘いのは駄目だって

月ノ瀬アキ

僕の病気

月ノ瀬アキ

甘いのって関係
あるのかな

黄葉カエデ

未解明なのに
当たり前のよう
に言うよね

月ノ瀬アキ

そうだね笑

月ノ瀬アキ

でも僕のはまだ
解明された方だよ

月ノ瀬アキ

カエデの方が…

黄葉カエデ

私、思うんだけど

黄葉カエデ

ホントに病気、
かかってるのかな?

月ノ瀬アキ

なんで?

黄葉カエデ

ホントに発病しない
んだもん

黄葉カエデ

ちょっと足が動き
づらいだけだよ?

カエデはベッドから足を降ろして ブラブラとさせた

黄葉カエデ

石化病?って決めつけ
てるだけじゃないの?

月ノ瀬アキ

あは…そうかもね笑

黄葉カエデ

病院って
つまんないね

月ノ瀬アキ

今更…?

僕とカエデは、もう7年も 病院暮らしだ

黄葉カエデ

なーんもない

黄葉カエデ

しかも隔離されて
人と喋る機会ない
っていうか

月ノ瀬アキ

ぼ、僕は!?

黄葉カエデ

アキくん?
えー…?

黄葉カエデ

自分の分身
って感じ

僕は肩を落とした

月ノ瀬アキ

そっ……か

黄葉カエデ

なーんて冗談!

黄葉カエデ

退屈なのは本当
だけどっ

月ノ瀬アキ

それは僕も同感かな

特別隔離室の患者は 絶対外出禁止

何故か今テレビは壊れていて

置いてある本くらいしか 娯楽がない

僕たちは

外に行ったら何をするか

という、想像力で楽しんでいた

月ノ瀬アキ

はあ…

月ノ瀬アキ

外に出たい

窓の外を眺める

鳥のさえずりが聞こえた

月ノ瀬アキ

黒板に向かって
勉強したりとか

月ノ瀬アキ

公園で遊んだりとか

月ノ瀬アキ

帰りにゲーセン
寄ったりとか

月ノ瀬アキ

いいなぁ……

いろんな想像をする

もっと、他にもあるかもしれない

黄葉カエデ

やめてよー

黄葉カエデ

尚更外に行きたく
なるじゃん

月ノ瀬アキ

……たしかに笑

黄葉カエデ

もうっ

黄葉カエデ

想像ゲーム禁止!

月ノ瀬アキ

ごめん笑

黄葉カエデ

ねーアキくん

黄葉カエデ

起きてる?

月ノ瀬アキ

………なに

黄葉カエデ

いつもだけど

黄葉カエデ

夜の病院って
怖いねー

耳を澄ましても何も聞こえない

月ノ瀬アキ

んー……だね

黄葉カエデ

ねぇねぇ

黄葉カエデ

アキくんって

黄葉カエデ

小5から病院生活
なんだよね?

月ノ瀬アキ

…そうだけど

黄葉カエデ

それまでの思い出
話なんかない?

黄葉カエデ

私も話すからっ

月ノ瀬アキ

…………

何があったか徐ろにしか 覚えていなかった

月ノ瀬アキ

クラスメイトでさ

月ノ瀬アキ

めっちゃくちゃ
仲良い子がいてさ

黄葉カエデ

うんうん

月ノ瀬アキ

その子…

月ノ瀬アキ

…………………

黄葉カエデ

?なに…?

月ノ瀬アキ

クラスで虐めら
れるようになって…

月ノ瀬アキ

じ、自殺………

月ノ瀬アキ

しちゃったんだ…

黄葉カエデ

えっ……

月ノ瀬アキ

それから

月ノ瀬アキ

僕、取り乱し
ちゃって

月ノ瀬アキ

その時初めて

月ノ瀬アキ

胸の痛みに
気づいたんだ

僕は右手で、左胸を擦った

黄葉カエデ

……そっか

月ノ瀬アキ

母さんが去って
いったときも…
痛かったな…

黄葉カエデ

………うん…

月ノ瀬アキ

あ、なんか暗く
なっちゃったね

月ノ瀬アキ

ごめん…

僕は寝返ってカエデの方に 背を向けた

駄目だ

思い出してしまう

思い出したら駄目なんだ

じんわりと胸が痛くなる

月ノ瀬アキ

ケホッ

黄葉カエデ

あ…大丈夫…?

月ノ瀬アキ

うん…

しばらく沈黙が続いた

カエデが気を遣ったのだろうか

黄葉カエデ

わ、私は……

黄葉カエデ

私は…両親が離婚
しちゃって

黄葉カエデ

母は今、遠い所で
忙しくしてる…

黄葉カエデ

私の医療費の為に…

黄葉カエデ

私なんかの為に

月ノ瀬アキ

カエデ……

僕ら二人は

『病気』というのもあるが

両親が家での療養生活 の面倒を見ることが出来ない

という理由もあって、 病院暮らしだ

黄葉カエデ

なんか…一層
暗くなった…

月ノ瀬アキ

……だね

黄葉カエデ

あっ!私、前にすっごく
嬉しいことがあったの

黄葉カエデ

お母さんからハガキ
が届いたんだよ!

月ノ瀬アキ

へぇ今時ハガキか…

黄葉カエデ

『お元気ですか』

黄葉カエデ

なんて

黄葉カエデ

おばあちゃん
みたいな文でさ笑

黄葉カエデ

思わず笑っちゃったの!

月ノ瀬アキ

なんか…

月ノ瀬アキ

カエデのお母さん
って感じだね

黄葉カエデ

へ?なんで?

月ノ瀬アキ

似てるっていうか

黄葉カエデ

そっかなあ〜

黄葉カエデ

んふふっ

可愛らしく笑う顔も

ふんわりした雰囲気なのに 活発な性格も

そんなカエデを見ていると 安易に想像できる

月ノ瀬アキ

カエデのお母さん
会ってみたいな…

黄葉カエデ

「僕に…お嫁さんを
ください!」って?

月ノ瀬アキ

娘さん、ね笑笑

黄葉カエデ

あ、ほんとだ

黄葉カエデ

おっかしー笑笑

月ノ瀬アキ

そんなとこも、
カエデらしいよ

黄葉カエデ

なにそれ!?笑

黄葉カエデ

もー!寝るっ!

カエデは頭から布団を 覆いかぶさった

僕はカエデが寝息を立てる のを確認して

ゆっくりと目を閉じた

このまま

こんな毎日が続けばいいと思った

なんの変化もない

ただ二人で

笑い合う日常

どうか壊れないで

そう、僕は願った

でも

その『変化』が訪れるのは あっという間だった

この7年もの時間をかけて 築き上げた日常を

音も立てずに

突然に

このときの僕は

まだ

想像さえしていなかった

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