外の空気にふれて帰ってきた シェアハウスの玄関。
扉を開けた瞬間、ふわりと いい香りが鼻をくすぐった。
山下永玖
一歩先に声を上げる
リビングに入ると、テーブルには 彩り豊かな朝ごはんが並んでいた。 卵焼きに味噌汁、焼き鮭、 それから小さなおかずたち。
その中心に立っていたのは―― 沢村 玲(さわむら れい)
沢村玲
山下永玖
上村謙信
武藤潤
吉澤要人
玲は一人ひとりにごはん を手渡しながら、言った。
沢村玲
〇〇
返事はした。 でも、心はざわざわしていた。
いただきます!!
草川直弥
桜木雅哉
小泉光咲
関哲汰
沢村玲
みんな口々に言いながら箸を動かしていた。
けれど、私は…… お箸を持つ手が、少し震えていた。
目の前のごはんは美味しそうで、温かくて、 “やさしい”が詰まってるのがわかるのに―― 喉が、動かない。
その様子を、 誰よりも早く気づいたのは哲汰だった。 彼はなにも言わず、 ただ少し目を細めて、静かにかなたを見つめた。
そのあと、そっと潤の耳元で何かを囁く。 すると、潤もちらりとこちらを見て、眉を下げた。
次に要人が、謙信が、光咲が…… 誰も口には出さないけれど、 全員が“気づいた”ようだった。
玲はゆっくりとお椀を手にしながら、 私の隣に座って、柔らかい声で言った。
沢村玲
私は、玲のその静かな声に救われた気がして、 ゆっくりと箸を持った。
ごはんを少しだけ口に運ぶ。 それだけで、胸の奥がぎゅっと痛んだ。
でも、優しい味がした。 涙が出そうになったけど、出さないように、 ゆっくり噛んだ。
〇〇
そう小さくつぶやくと、玲はにこっと笑った。
沢村玲
少し冗談っぽくウインクをしてくれた。
みんなは何も言わないけれど、 あたたかい空気で包んでくれていた。
ここにいるのは、 “見守ってくれる人たち”だと、そう感じた。 それが、たった一口のごはんから伝わってくる。
それだけで―― 少し、救われた朝だった。
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