今日がはじめてお客さんに芸を披露する日。
るなは座敷の外で静かに待っている。
障子の向こうから客と花魁の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
少しだけ胸が高鳴る。
しばらくして花魁の声がする。
堕姫
あちきのお気に入りの禿が
いてね
いてね
堕姫
その子の芸を少し見てくれないかい
客は興味を持ったようだった。
客
蕨姫花魁のお気に入り?
客
そりゃあ気になるねえ
その声にるなは背筋を伸ばす。呼ばれる。
障子が開いて花魁がこちらを見る。
堕姫
おいで
小さく頷いてるなは部屋に入った。
中に入った瞬間客の視線がはっきりと止まる。
一瞬言葉を失ったようだった。
それも無理はない。
整った顔立ちとまだ幼さの残る雰囲気。
るなは教えられた通りに座り丁寧に頭を下げる。
月
こんばんは
月
よろしゅうお願いいたしんす
声は落ち着いていた。
花魁が軽く顎で示す。
堕姫
ほら、やっておくれ
るなは琴の前に座る。
稽古で練習した少し難しく普通なら覚えるのに何週間もかかる曲。
でも指は迷わなかった。
音が静かに座敷に広がる。
途中で息を詰めることもなく最後まで丁寧に弾ききる。
曲が終わるとしばらくして静寂が落ちた。
そして
客
…こりゃあ驚いた
客が素直に笑った。
月
まぁ、ふふ
月
あちきとても嬉しゅう
ござりんす
ござりんす
私はそう言って頬を赤らめた。
客
まだ禿だって聞いたが
とてもそうは見えないね
とてもそうは見えないね
花魁が満足そうに微笑む。
堕姫
だろ?
るなはそっと頭を下げた。
緊張はしていたけれど怖さはなかった。。
ちゃんと音が届いた。
そのことが静かに胸に残っていた。
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