crisispass

お昼時間

中庭でサンドイッチをかじっていると遠くでとある声が聞こえた

金髪を揺らしてこちらに走ってくる先輩

紙を渡され見ると上に「crisispass」と書いてあった

「奈緒は、憧れのドラマーと同じ舞台に立ちたいから」

「同じ舞台に立って、そしてその憧れの人を越えて、皆に自分の事を認めさせたい」

「光希はお家が音楽一家」

「でもクラシックじゃなくて好きなのはロック」

「認めてくれない家族を認めさせたい」

ああ

眩しいな

明るい髪だからとかじゃない

太陽とかじゃない

眩しい

この人がただ眩しい

本気なんだ

彼女はしゃがんで私の手を握った

プロなんて、そんなの無理だって

大体の人はそう言う

本気なんて、無理だって

私も言われた

沢山言われた

才能があっても、やる気があっても、練習しても

…でも

「私達とプロ目指さない？」

無謀だし

下手くそだし

でも

本当、楽しそうに弾くし、歌う