雨が降っている。
じめじめとした少し不快な空気は いつの間にか私を包み込む。
小説ならきっと ぽつり、ぽつり と表現すると思うが
ぽつり所では無いほどに 雨が強く地面に打ち付けられるので 綺麗に表現するのは似合わない。
そんなことを思いながら 雨が止むのを小さな屋根の下で待つ。
そう、雨宿りだ。
皆傘を持っていたのか 雨宿りしている人は私しか居なくて。
なんだか凄く恥ずかしい。 恥ずかしい事じゃないのに。
人の視線が刺さるような気がして 今すぐ逃げ出したかった。
…ねぇ。
突然自分に声がかかるので びっくりして思い切り顔をあげた。
顔を上げて私の目に映ったのは 私がずっと片思いしてる彼だ。
は、はい… どうしました?
傘ないならさ 送ってくよ
いいんですか?
誰かから聞いた、 好条件な話は断らずに積極的に、と。
初め、それを聞いた時 図々しいと感じてしまったが
…今は少し役に立ったかもしれない。
いいよ さ、おいで
…お言葉に甘えて。
大きな煩い雨の音が 私達の会話をかき消す。
それでも彼が近くにいるから 自分からしたら声は良く聞こえて。
舞い上がっている自分がいる。 雨よりも心臓が煩い。
あんなに帰りたいと思っていたのが 嘘のように感じた。
彼と居る今の時間は、 むず痒いけれど、とても好きで。
彼は私の想いに気付いていない。
それでも、 たとえ恋人の関係じゃなくても
今のこの 時々話す友人のような関係が 何故かとても愛おしくて。
ずっとこの時間が続けばいいのにな、 なんて 私らしくない事を思う。
行きましょうか、 なんて言う私の声を合図に
私達は軽く一歩を踏み出した。 また1つ足を動かして、歩いていく。
このうるさい心臓の音も まだ続いて欲しいから、なんて 足を遅く動かしていることも
彼はきっと、気付かない。
コメント
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「何故かとても愛おしくて」が好きです…
お久しぶりです、白夜です! 最近宣言が解除されて新しい学校生活が始まるのとネタ切れによって更新速度が遅くなります。 ネタは無いですが早めに書けるよう努力しますので今後とも宜しくお願い致します。