パラレルタイム

コウタは家族に頼まれた年賀状を ポストに入れ

傘をさして歩いていた

雪の下に隠れた石に足をとられたゆきえは 尻もちをついた

コウタが手を差しのべる

思いのほか手が強く引かれ バランスを崩したゆきえが

コウタに覆いかぶさった

服の上から 柔らかな胸の感触が伝わってくる

ゆきえは上体を起こす

コウタは十数センチの距離で ゆきえの顔を見つめた

黒い髪に白い雪が当たってはじける そこに真っ赤な南天の実があった

見つめあったまま コウタが言った

ゆきえの顔が 一気に赤くなる

コウタも顔を真っ赤にして 押しのけるようにゆきえから離れた

翌日

深夜

薄暗い部屋の中で ゆきえは突然 コウタの唇にキスをした

コウタが口を開けると 冷たくやわらかな舌が入ってきた

舌が絡まりあい 口の中がさらっとした唾液で満たされていく

ゆきえはセーターをまくり上げ 上半身を露わにすると

コウタのパジャマのボタンを外した

ゆきえはコウタの胸に その胸を重ねる

火照った身体に ゆきえの氷のように冷たい汗が

まとわりつく

ポタッ　ポタッ

コウタは汗を落とす ゆきえを心配し まぶたをうっすらと開けた

冷たい汗が 雨のように何度もコウタの身体を叩く

コウタは雪に泳ぐような冷たさを感じながら、眠りに落ちていった

翌朝　午前6時55分

午前7時14分

母親はポケットから 赤い実が五つついた南天を取り出した

コウタはスマホを取り出し 自作の雪だるまの写真を見た