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バス停に咲く傘

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バス停に咲く傘

1 - バス停に咲く傘

♥

331

2020年06月28日

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次は磯松1丁目、磯松1丁目 でございます お降りの方はボタンを押してください

ピーッ

いつもと同じバス停で降りる

外は今日も雨だ…

どうも…

バスの運転手

無愛想な運転手だ… 挨拶も返さない

ザー

ザー

女の子

(今日もいる)

ブロロロロ~

バスはその子を乗せることなく 出発した

女の子

女の子は何も言わず、 バス停に留まっている

(遅い時間に
女の子がひとり)

(しかもこんな雨だ)

ねぇ、お嬢ちゃん

ザー

女の子

雨のせいか、僕の声は その子に届いていないようだった

女の子

もしかして、この子は 僕の目にしか見えていない?

そんなことが頭によぎるくらい 女の子は何も言わず、 ただバス停に留まっているのだった

それから何日も雨が続いた

梅雨は嫌だな

そしていつものバス停には

女の子

あの女の子がいた

(今日もいるのか)

女の子

(試しにこの子の傘に
少し触れてみよう)

好奇心から 女の子の持つ傘に触れてみたが

(あ、感触がない…)

僕の手が触れることはなく 傘をすり抜けてしまった

(この子は、
この世のもの
なのだろうか?)

今日もいつものバスに乗る

乗客は僕ひとりだけだった

そして

次は磯松1丁目、磯松1丁目 でございます お降りの方はボタンを押してください

ピーッ

バスの運転手

!!

(今日も雨か…)

キーッ

プシュー

バス停に停り、降りようとした時 そのにはいつもの女の子が見えた

…どうも

バスの運転手

しかし今日は ひとつ変わったことがあった

女の子

バスの運転手

乗りますか?

いつもの女の子と 隣にいた女性は首を横に振った

ブロロロロ~

バスは2人を乗せることなく バス停を出発した

女の子

何も言わず留まっている2人を 横目に家路に着こうとした時

女性が僕の前に手を出して 行く手を阻んだ

(動いてはいけない?)

なんとなく、女性の静止を受け入れ その場に留まることにした

ザー

ザー

霊感の強い女

ねぇ、お嬢ちゃん

女の子

霊感の強い女

キミはここで
何してるの?

女の子

女の子

パパを

女の子

待ってるの

霊感の強い女

パパ?

女の子

うん

女の子

パパ雨なのに
傘を忘れちゃったの

女の子

その時は
私がバス停まで

女の子

お迎えにくる約束なの

よく見ると女の子の手には 大きな傘が握られていた

女の子

女の子

いつもあのバスに
乗って帰ってくるの

女の子

でも…

女の子

今日も乗ってなかった

霊感の強い女

…そっか

霊感の強い女

霊感の強い女

ねぇ、キミ
名前は?

女の子

…彩華

霊感の強い女

あやかちゃんね

彩華

うん

彩華

パパが、
彩やかなお花のような
綺麗な心を持って欲しい

彩華

って、付けてくれた
名前なんだって

霊感の強い女

いい名前だね

彩華

ありがとう

霊感の強い女

彩華ちゃん

彩華

霊感の強い女

もしかしたら
パパは

霊感の強い女

いろんなショック受けて

霊感の強い女

帰り道忘れちゃった
のかもしれない

彩華

えっ?
パパ迷子?

霊感の強い女

うん

霊感の強い女

だから

霊感の強い女

もう、そばに
いるかもしれないよ

そう言うと、女性は僕の方に 視線を向けた

女の子も不思議そうに僕の方に 視線を向けた

そうか…

あの時…

ザー

うわっ、
雨降ってきた

傘忘れちゃったな

女の子

ママ!
雨降ってきた!

女の子

わー、いそげー!

(可愛いな、
うちの子と
同い年くらいかな?)

プーーーーー

ん?!

大きなクラクションの音は 暴走するトラックから発せられていた

こっちに向かってる!

女の子

きゃーーーー!!

あ、危ない!!

キキーーーーーー

どんっ!

無我夢中で、気づけば僕は 女の子を庇うように押していた

ガッシャーン!!

僕は… なんて大事なことを

忘れてしまっていたんだ…

彩華…

彩華

パパ?
パパなの?

彩華には僕が見えていないようだった

あぁ、パパだよ

遅くなってごめんね

彩華

うん!
傘持ってきたよ!

ありがとう

ちょっと
帰り道が
わからなくなって

でももう
帰り道わかったから

彩華

??

彩華

私と一緒に
お家帰ろ?

ごめん

一緒に帰れないんだ

彩華

やだ!
パパと一緒にいる!

彩華…

彩華にはこれからも
綺麗に咲く花のように
育って欲しいんだ

彩華

パパ…

パパだけの
可愛いお花のプリンセス

彩華

!!

明日は雨が
あがるから

そしたら
またこのバス停に
おいで

パパから
彩華姫に
プレゼントがあるから

彩華

うん!!

彩華

約束だよ!!

あぁ、
約束だ

あの

ありがとう

いえ、
よかったね

あぁ

彩華

パパはずっと
見守っているよ

彩華

パパ!!!

チュンチュン

彩!!彩華!!朝だよ 起きなさい!

彩華

パパ!!!

彩華

彩華

えっ?夢?

彩華

彩華

雨が止んでる

彩華

パパが言った通りだ!

彩華

夢なんかじゃない!

彩華

パパと約束した
バス停に行こう!

彩華

あ!

彩華

お花のかんむり!!

彩華姫のかんむりだよ

彩華

彩華

あ!!!

彩華

四つ葉のクローバー!!

彩華

かんむりの真ん中に!!

四つ葉のクローバーは 彩華に幸運を届けてくれるよ!

彩華

パパ!!

彩華

ありがとう!!

彩華、パパの方こそ

本当にありがとう

この作品はいかがでしたか?

331

コメント

8

ユーザー

すごく描写が綺麗で感動できる物語でした。忘れていたものを取り戻した親子の約束・・・素敵です!

ユーザー

まさか男の人が幽霊だったなんて……。意外な展開……!! 彩華ちゃんが幸せになれることを願ってます……✨

ユーザー

凄く感動しました

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