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イシカワ

――生徒達が全員グル?

イガラシ

しっ、ちょっと声が大きいぞ。

校庭にて、無念にも校長の最期を見届けたイガラシ達。

ホソヤの件も気になっていたため、イガラシはイシカワと共に、放送室へと向かっていた。

一方、校長がいなくなったせいで、予期せずして最高責任者となってしまった教頭は、早々に職員室へと戻った。

イシカワ

でも、どうしてそう思うんだ?

イガラシ

まず、生徒達の落ち着き方だ。

イガラシ

普通、得体のしれない連中に学校を占拠されたのであれば、取り乱す生徒がいてもおかしくはない。

イガラシ

それに加えて、校長先生危機一髪に関しては、どのクラスも乗り気だったろ?

イガラシ

曲がりなりにも校長先生の命が賭けられたゲームだ。

イガラシ

迷うことなくロープを選べる神経は普通じゃない。

イシカワ

――【革命軍】が学校を占拠されるのは、あらかじめ全校生徒が知ってたってことか?

イガラシ

その可能性が高いな。

イガラシ

そこでだイシカワ。

イガラシ

お前にもちょっと手を貸して欲しいんだ。

イシカワ

なんだ?

イシカワ

俺にできることなら喜んで協力するぞ。

イガラシ

お前、生徒の中で個人的に連絡が取れるやつはいないか?

イシカワ

うーん、基本的に公私は分けるタイプでな。

イガラシ

……今成(いまなり)は?

イシカワ

あ、あいつならメールの交換をしてある。

イガラシ

俺もだ。

今成という人物は、入学して数ヶ月で不登校になってしまった生徒だった。

1年の際はイガラシが担任をし、そして3年となった今では、イシカワが担任をしていた。

典型的な引きこもりというやつであり、何度か家にも上がり込んだが、彼はせいぜいメールの交換くらいしかしてくれなかった。

イガラシ

あいつなら、もしかするとクラスのグループメールに参加しているかもしれない。

イシカワ

それに、学校に来ていないから、同調圧力とか関係ないからな。

イガラシ

あぁ、駄目で元々――連絡してみようと思うんだ。

そんな会話を交わしつつ、放送室へと向かう。

イガラシ

おっと、イシカワ。
ここでストップだ。

階段の踊り場から下を覗き込んだイガラシは、後に続いていたイシカワを制した。

イシカワ

どうした?

イガラシ

――放送室前に誰かいる。

イガラシ

あの格好からして【革命軍】だろうな。

イガラシ

まぁ、今は放送室が唯一の発信基地みたいなものだから、見張りの1人は立っていると思ったけど。

軍服らしきものを着たガスマスクの人数は、踊り場から確認できるだけでも2人だった。

相手の出方が分からない以上、下手に関わって状況が不利になるのは避けたい。

と、その時のことだった。

校内放送

諸君らに報告がある。

校内放送

まず、3年3組が解放されることを拒否した。

校内放送

加えて、どうやら我々に協力する意思を示したようだ。

校内放送

さてさて、他の教室の皆さんはどうだろうか?

校内放送

まぁ、我々に協力するか否かは自由である。

校内放送

では、このまま次の革命に移る。

校内放送

テレビ画面に注目して欲しい。

イガラシ

イシカワ、とりあえず教員室に戻ろう。

イガラシ

テレビを確認したい!

イシカワ

あ、あぁ。

イシカワ

放送室はあんな感じだし、ホソヤ先生のことは後回しだな。

イガラシ

あぁ、無事だといいんだが。

イシカワの言葉に答えると、イガラシは床を蹴った。

教員室に入った途端、明らかに空気が重たいことに気づいた。

その理由はいたってシンプル。

教員室には、ライフル銃を構えているガスマスク達が、数人いたのだから。

それに加えて、カメラを手にするヒグラシの姿があった。

ほとんどの教員は、ライフルによって教員室の隅へと追いやられているようだった。

革命軍

待ちくたびれたよ。

革命軍

イガラシ先生、イシカワ先生。

同じ格好をしている【革命軍】ではあるが、その中でも長身でひょろりとしたガスマスクが口を開く。

聞き障りの悪い合成音声で。

革命軍

さて、これで役者は揃った。

革命軍

カメラマンは映像の用意を。

その言葉にヒグラシが頷く。

ヒグラシ

おっと……。

カメラを担ごうとしたヒグラシが、大きくよろめいた。

そのままイガラシのほうに向かって倒れそうになるが、足を踏み出して踏ん張った。

その際、どさくさに紛れて、スーツのポケットに何かが入れられた感触があった。

ヒグラシがイガラシだけに分かるように、ごくごく小さく頷いた。

革命軍

さて、イシカワ先生、イガラシ先生、そして――ヤナギ先生。

革命軍

この3名はカメラの前へどうぞ。

言われるがままにカメラの前へと向かうイシカワとイガラシ。しかし、ヤナギは首を横に振る。

ヤナギ

お前達には屈しない。

革命軍

結構。それは人それぞれでいいと思う。

革命軍

ただ、ここは我々の支配下にある。

革命軍

従っていただけないのであれば――そうだな。

革命軍

ランダムに選んだ生徒に、校長の後追い自殺をしてもらおうか。

革命軍

それならば校長も浮かばれるだろう。

ヤナギ

くそ……汚い真似を。

キョウトウ

ヤナギ先生、お願いだ。

キョウトウ

ここは素直に従うべきだ。

教頭がヤナギ先生を説得する。

それは、常日頃から彼が見せる、保身丸出しの言動ではなかった。

イガラシ

(ざっと数えた限り【革命軍】の数は10名前後)

イガラシ

(武器を所持していることを考えても、無理矢理抑え込むことはできない)

イガラシ

(それに、まだ【革命軍】のことをほとんど掌握できていない)

イガラシ

(全部で何人なのか、武力はどれだけ有しているか。そして、学校に仕掛けられた爆弾のことは本当なのか)

イガラシ

(情報が分からない限り、今は連中に従うしかない)

ヤナギ

分かりました。教頭先生がそこまでおっしゃられるのであれば。

教頭の説得が功を奏したのか、ヤナギは渋々といった具合に、イガラシの隣に立つ。

革命軍

さて、ここにいる3名には共通点がある。

革命軍

――それは、規模は違えども、それぞれが罪を犯しているというもの。

革命軍

もちろん、罪人は罰せられるべきだ。

革命軍

しかし、我々は情状酌量を求めるのだ。

革命軍

いかなる罪だって、我々には赦す覚悟がある。

そこで言葉を切ったガスマスクは、カメラのほうに向かって口を開いた。

上野原高等学校革命同好会

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