テラーノベル
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千尋は夕食を食べ終えると
瞼が落ちてくるような
ひどい眠気に苛まれ
すぐに自室に入った
常夜灯をつけ
ベッドに身を横たえる
千尋
千尋
千尋に降りかかる自責の念は
時間の経過とともに
薄らいでいくのではなく
閉塞的な自意識の中で どんどん肥大していった
千尋
千尋
激しい疲労感で
頭は熱を帯びていた
手足がじんじんと疼くような
倦怠感があった
千尋
急に寒気がしてきて
布団の中に潜る
「すぐに眠りに落ちる」
そう思っていたのに
妙に「嫌な予感」が渦巻いて
罪悪感をもって一層深く
落ち続けていた
片目の潰れた弓美の顔が
何かを語りかけてくる
千尋は両腕で体を押さえつけ
それを聞かないようにした
かたく目を閉じていたが
この部屋には自分以外 誰もいないことを悟ると
張り詰めていた空気は弛緩し
強張った手も
柔らかな手触りになった
千尋は腕から体を解き
片手でゆっくり肌をなぞった
千尋
腕から肩を伝って
首に触れる
鎖骨と喉を
何度か触れては放す動作を繰り返す
千尋
体がびくんと大きく跳ねた
強張った手を
もう片方の手でさする
緊張が引いたら
シャツの上からゆっくりと
胴体の曲線を撫でる
千尋
鼻で呼吸をするだけでは息が追いつかなくなって
口をほんの少し開く
胸部は近頃 少し大きくなったように感じた
シャツの裾から指を忍び込ませ
ゆっくりとその表面を包む
そしてそのまま
押しては引き 押しては引いて
心臓の熱を感じる
その中央で存在を誇張する点に
人差し指を触れた
千尋
息と鼓動が大きくなっていく
じっとりと熱が伝染された腹部
臍の上に手を置く
千尋
千尋
千尋
臍の上に置かれた手を
エコーのように動かした
千尋
千尋
千尋
腹部に触れる行為が
意味のないことだとわかると
千尋は横になったまま涙を落とした
千尋
ふと
千尋の記憶の中に
白い影が現れた
千尋
手を広げるようにして
近づいてくる影は
光になって
千尋を抱きしめた
千尋
かと思うと
再び姿を消し
千尋は自分の部屋に
ひとりでいる状態だということを 認識した
千尋
千尋
いつしか開いていた目を
ゆっくりと閉じる
瞼の裏でその影の正体を
確かめようとする
もう一度手が
腹の上へと這っていく
千尋
千尋
禁忌を犯しているという感覚
それはやがて
果てしない悦楽として押し寄せる波に変化した
網膜にひとりの人間の顔が浮かぶ
千尋
千尋はもう片方の手を下腹部に回し 足と足の間に差し入れ
ぐっと奥歯を噛み締める
千尋
千尋
ひどく不謹慎な行為である
あるいは 命を宿せないという事実
そのアンバランスさが
彼女に熱をもたらして
ほどなく千尋は果てた
行為の後も
胸が高鳴るのを
しばらく抑えつけることができなかった
教師
教師
死亡した明るい担任の代わりに
明るく努めようとしている
暗い感じの副担任が
ホームルームを進める
副担任はクラスに対し
表面上ほとんどなにもしなかったので
クラスメートが慣れ親しんだ空気も
少し活気がない
皆のムードは
決していいものではなかった
その教室に
新しい空席があった
教師
教師
来海
来海
教師
教師の声は虚ろだった
今このクラスは
ふたりも死んだショックと
そしてチェインレターへの恐怖に
包まれていた
外では静かに降り始めた雨が
窓をわずかにかすっていた
表面にきめの細かい水滴が付着する
プリントが配り終わられると同時に
皆その弱々しい目をプリントに落とした
われわれ教職員が
不適切な対応を行なったため
今回の悲惨な結果を招いてしまったことを
深くお詫び申し上げるとともに
チェインレターの被害にあわれた方に深く謝罪いたします
本来であれば
このチェインレターに関与した者は
業務から退かなくてはならないところですが
この事態に際し
「それでも対処し続ける責任がある」という意識で
教員一同一丸となり
この事態の収束に向け職務を全うする所存です
なお警視庁からの通達により これ以降
チェインレターの対策は全てを
「チェインレター対策本部」に委ね
方向性の異なることのない確実な手段を 講じることとなりました
われわれ教職員は
対策本部の指導のもと
これ以上犠牲を出さないよう
最善を尽くします
この度は
本当に申し訳ありませんでした
鯉城高校校長・教職員一同
#怪異
×××
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コメント
4件
うわ……すごく重くて、胸がぎゅっとなる話だったね。 千尋の罪悪感と孤独が、自己慰撫の行為として現れるところが切なくて。自分に「誰もいない」って言い聞かせるシーン、すごくリアルで心に刺さったよ。 学校の静かな絶望感も、雨の描写と重なって、余計に悲しかった。先生たちの謝罪文も、形式的だけど何も変わらない感じが伝わってきて……。 この作品の「闇」、ちゃんと受け取ったよ。丁寧に描いてくれてありがとう。続きも静かに読ませてもらうね🌙