(生チョコ大福、美味しい)
もぐもぐ
甘味処《びゃくだ》の新作“生チョコ大福“をほおばる
ほどよい甘さに目を細めた
(おかわりしよう)
佳澄
(──こんなところに、甘味処ってあったっけ?)
文具店へよった帰りに、不思議な甘味処を見つけた
佳澄
(ぱっと見、普通の甘味処だな)
惹かれるように縁台に腰かける
『すみません、生チョコ大福おかわりください』
佳澄
(なんか聞いたことある声が……)
思わず視線を向けると、黒装束の女性が白湯を飲んでいた
佳澄
(……あ)
彼女の右目は──
佳澄
(……赤い)
虹彩異色症(ヘテロクロミア)が珍しい?
佳澄
…………!
そんなに見つめられるとテレるな〜
佳澄
あ、いや……その……
そのとき見覚えのあるものが目に入る
佳澄
(あれは……)
烏面
佳澄
! あのときの──
久しぶりだね
元気そうでなにより
まるで旧友に再会でもしたかのように、にっこりと笑った
お待たせしました
ちょうど生チョコ大福が咫穏の前に運ばれてきた
ぱくっ
おいし〜
佳澄
…………
食べる?
佳澄
へ?
佳澄の口元に生チョコ大福を差し出した
はい、あーん
佳澄
……え、あ……
一瞬、頭の中で竜一郎が浮かぶ
佳澄
(なんで、あいつが出てくるんだ?)
佳澄
佳澄
ちょっ、たんま……!
ん?
佳澄
──その、あーんとかは…………
佳澄
いいから……
あら、そおう?
生チョコ大福を一口かじる
佳澄
…………
まじまじと彼女を見つめた
あのときはカラスの面をかぶってたから、わからなかったが──
佳澄
(この顔、どっかで見たような……?)
しばらくして、注文した生チョコ大福が運ばられた
ごゆっくりどうぞ
佳澄
──いただきます
ぱくっ
佳澄
佳澄
美味い
あっという間に生チョコ大福を平らげる
あれからケガとかしてない?
佳澄
してない
それはよかった
白湯を飲み干す
さてと
お足、お願いします
はーい、ただいま
縁台から立ち上がり、支払いを済ませる
佳澄
もう行くのか
仕事の途中だから
足下に置いておいたしょいこを背負い、烏面をかぶる
じゃあね
その場をあとにした
佳澄
(俺も遅くならないうちに帰ろう)
佳澄
佳澄
すみません、お会計を──
先ほどの方がお支払いしましたよ
佳澄
…………
名前はもちろん、連絡先も知らない
佳澄
今度会ったとき、お礼言わないとな