この作品はいかがでしたか?
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ふと、意識が浮上した。 ガツン、ガツンと頭を殴られてるような感覚に、開けたばかりの目をまたギュッと瞑る。
ああ、そう言えば今日は雨予報だったか。 あまりの痛さに小さく丸まり、またギュッと目を瞑るほとけは、低気圧から引き起こす頭痛に悩まされていた。
大体いつも天気が悪かったり、雨が降るとわかっている時は、市販の頭痛薬を飲むのだが、昨日はたまたま薬を切らしていた。買いに行くのも面倒くさくて、まあ大丈夫か、と思ってそのまま寝たのが間違いだった。
数時間前の自分をぶん殴りたい、と思いつつ、この動けそうにない体をどうしようかと考える。
ぼそ、と相方であり恋人の名前を口に出す。ベッドサイドに置いているスマホを手探りに探し、メッセージアプリを開いた。
と簡単にメッセージを打つと、また頭痛の波が押し寄せてきた。痛いというより辛い。生理的に涙が溢れてくる。
辛い時に人肌が恋しくなる、という人間の気持ちが今は分からなくもなかった。 『すぐ行く』とだけ返事が返ってきて、ほとけはそのまま意識を手放した。
とメッセージが来た叶は、適当に上着を羽織って小走りでほとけの家へ向かう。
キーケースからほとけの家の鍵を出し、あまり大きな音を立てないように中へ入った。寝室へ向かう前にコップに水を注ぎ、零さないように歩く。
布団の中で丸まっているのか、ベッドの上は膨らんでいた。声をかけても返事はない。少し心配になって近くへより、ゆっくり掛け布団をめくった。
俺をみて安心したのか、顰めていた眉間を少しだけ緩めて名前を呼んできた。冷や汗でくっついた前髪を退かし、頭を撫でる。
起きれそう?と聞くともそもそと動き始めた。 ただでさえ白い肌が、今日はいつにも増して真っ白になっている。
フラフラしているほとけを支え、壁を背もたれに座らせる。ゼリーを渡すと素直に食べてくれた。
空いたカップと引き換えに水と薬を渡し、「薬飲んで寝とき」と声をかけた。 出たゴミを一纏めにし、捨てに行こうと立ち上がろうとしたとき、つんとゆるい力で袖を引っ張られる。
そう言って控えめに両腕を広げてくる。にやけそうになる表情筋を何とか酷使して、ゴミを置いてほとけを抱きしめた。
すり、と首に顔を擦り寄せて来る。こいつは病人だぞ、珍しく素直で可愛いこの恋人を今すぐ押し倒したい気持ちをぐっと堪える。
頭を撫でながらリズム良く背中をとん、とん、と叩く。しばらくすると規則正しい寝息が聞こえてきた。ゆっくりとベッドに下ろし頭を撫でる。
辛い時に頼ってくれて嬉しかったなと少し顔を綻ばせる。すっかりシワの無くなった眉間をみて安心する。起きた時には良くなってますように。おでこに1つキスを落として部屋を後にした。
コメント
4件
新年早々尊い作品ありがとうございます!✨ 私の今年の抱負はりりさんの作品の壁になることに決定しましたね…✨
好き😖💖 私からのプレゼントも受け取って(大晦日投稿)🎁