あの事件から2、3年が経ち僕は変わらず家族から暴力を振るわれ続けていた
家にいることもできず夕方まで公園などで過ごすことにしていた
佐々木カイ
…………

天鷲燈莉
ねぇ、お兄さん…これよかったらもらってくれない?

佐々木カイ
は?

アイスを食って袋を差し出す紫の髪の毛で緑の瞳の着物を着てる女の子だった
天鷲燈莉
あ、甘いもの嫌い?

佐々木カイ
好き、だけど…

天鷲燈莉
じゃあ溶ける前に食べてよ、お金いらないから

佐々木カイ
(袋を受け取りアイスを食べる

佐々木カイ
甘い……これは初めて食べた……

天鷲燈莉
お兄さんさ…ここ最近毎日ここにいるの見かけて気になったんだ

佐々木カイ
………

天鷲燈莉
話してみたら?他人に話すならひとりごとと同じようなものでしょ?

佐々木カイ
2、3年前の音楽祭のこと知ってるか?

天鷲燈莉
…悪魔の旋律のせいで大きな事件になったやつでしょ?

天鷲燈莉
皆それぐらいは知ってるよ

佐々木カイ
僕には大事な親友がいてその親友と行ったんだ

佐々木カイ
でも親友は僕を助けて身代わりになって…

天鷲燈莉
自分だけが助かっちゃったんだね…

佐々木カイ
それからずっと親から暴力を振るわれるようになって…

佐々木カイ
家にいるのも学校にいるのも嫌になっちゃって…

天鷲燈莉
だから帽子で傷を隠してると

佐々木カイ
これは親友が最後にくれた誕生日プレゼントなんだ

佐々木カイ
まさかの誕生日プレゼントが形見になるとは…

天鷲燈莉
………

天鷲燈莉
あ、ハズレだ…

佐々木カイ
話聞いてた?

天鷲燈莉
聞いてる聞いてる

天鷲燈莉
このアイスさ…当たりつきで昨日は当たったんだけどな…

天鷲燈莉
今日はついてないや…

天鷲燈莉
ねぇ、お兄さんもアイス食べ終わったら見せてよ!

佐々木カイ
なんで?

天鷲燈莉
当たりかもしれないじゃん!

佐々木カイ
…僕は当たり出したことなんてない

佐々木カイ
そもそも僕は運なんて持ってない…

天鷲燈莉
そうかな?

佐々木カイ
そうでしょ

佐々木カイ
今までロクな人生じゃなかった

佐々木カイ
大事な親友を失って…家族は理解してくれなくて…

佐々木カイ
どこにも居場所がない

佐々木カイ
そんな僕が当たりを引くと思う?

天鷲燈莉
そんなの見ないとわかんないじゃん

天鷲燈莉
まだ見てないから決めつけはよくねぇよ?

佐々木カイ
けっこう強引だな

佐々木カイ
(仕方なくアイスを食べていく

佐々木カイ
あ、当たりだ…

天鷲燈莉
すごい!やっぱりお兄さん持ってるじゃん!

佐々木カイ
ははっ…こんなところに運使うとか…

天鷲燈莉
あ、お兄さんやっと笑った!

佐々木カイ
え?

天鷲燈莉
お兄さんさずっと暗い顔してたから笑顔にしたかった

佐々木カイ
なんで?

天鷲燈莉
俺の名前がね…天鷲燈莉っていうんだ

天鷲燈莉
俺はね…家族を皆失っちゃって笑顔になれなかった時期があるんだ

天鷲燈莉
でもねある人が燈莉っていう名前は「皆を照らす灯り」って意味なんじゃないかって

天鷲燈莉
俺ならそういう理由でつけるかなって言ってくれて

天鷲燈莉
その時…初めて燈莉って名前でよかったって思えて

天鷲燈莉
きっと同じような痛みを抱えてる人っていると思って支え合える場所を作ったんだ

天鷲燈莉
だからよかったらお兄さんさ、メンバーにならない?

天鷲燈莉
俺がお兄さんの人生を照らす灯りになるから!

太陽を背にしてニッコリと笑う無邪気な顔に僕は目をそらせずにいた
この人なら最後まで命も名前も背中も全部預けられるって本能が言ってた
佐々木カイ
僕は…佐々木カイ

佐々木カイ
天鷲…僕をメンバーにしてください

天鷲燈莉
おう!これからは嫌というぐらい笑わせるからな!

天鷲燈莉
笑えば絶対に幸運が舞い込むから!明るくいこうぜ!

天鷲燈莉
(笑って手を差し出す

佐々木カイ
(そっと手を握る

天鷲燈莉
よろしくな、カイさん!

佐々木カイ
こちらこそ、よろしく…天鷲
