京介
──ああ、そうだな
菜乃
宮代!?
京介
こんな面倒なやつと関わんのなんてだりーし
京介
ヘンなやつだって何度も思ったよ
京介
そう、マジで何度も…。
桜笑
うん
京介
──でも、離れられねーんだ
桜笑
うん
桜笑
桜笑
…え?
京介
初対面からグイグイ来ると思ったらすぐ離れていくし
京介
ずっと笑ってんのにほんとのこととか大事なことは全然話してくんねーし
京介
…でもほっとけない
桜笑
それは宮代くんがそういう人なだけだよ
桜笑
だけど、すぐに忘れられるはずだよ
京介
ほんっとめんどいなお前
京介
ド直球じゃねーと分かんねえのかよ
京介
俺が、そーゆーとこもひっくるめた三日月桜笑と、一緒にいてえんだよ!
京介
…つっても別にいつも一緒にいるわけじゃねーけど
京介
俺の関わるやつくらい自分で決める
桜笑
…そんなのっ
菜乃
桜笑
菜乃
私…ごめん
菜乃
桜笑のこと怖いって思うのはね
菜乃
私自身もトラウマで大事に思ってもらえないことが怖くて
菜乃
だから桜笑が引き剥がすようなことすると、私間違ったのかなって
菜乃
私のせいでって…思っちゃうんだ
桜笑
うん、だったら傷つけたくないから…
菜乃
ううん
菜乃
だけど、それも桜笑と一緒にいたいって思うからだよ
菜乃
嫌われたくないって
桜笑
…なにそれ
菜乃
何度も何度も桜笑に助けてもらった
菜乃
だから、私だけ何も出来てなくて…怖かったの
桜笑
そんなことない!
菜乃
…ならよかった
菜乃
それなら、私にも、まだ一緒にいさせてくれない?
菜乃
今の私を傷つけたくないなら、側にいてくれることが1番なの
桜笑
桜笑
…っ〜〜
桜笑
何で2人とも、そんなこと言っちゃうかなぁ
菜乃
…っ
桜笑
そんなん言われたら、離れられるワケないじゃん…
菜乃
!
桜笑
これは最後の忠告だった
京介
…忠告?
桜笑
あたしだって2人が大切だから話したんだよ
桜笑
どうでもいいと思ったから言ったんじゃない
桜笑
だけど…だからこそ、こんなあたしみたいなヘンなやつに巻き込みたくなかった
桜笑
桜笑
ここであたしのことを否定してくれれば…非難してくれれば
桜笑
あたしはきっと2人はあたしとは違うって片付けられた
桜笑
───だから、自分で選んだんだからね
桜笑
あたしの、三日月桜笑の、大切な人でいるっていう道を!
菜乃
ふふ、それでいいんだよ
菜乃
そうなりたかったんだから
京介
…はっ
京介
あったりまえだろ
桜笑
…ありがとう
桜笑
(2人とも)
桜笑
(本当に…ありがとう)
桜笑
なんでこんなに鍵を返すのが遅いのって怒られちゃったね
京介
お前に関しては明日呼び出し食らってたろ
菜乃
絶対怒られるじゃん、なんかしたの?
桜笑
あー、テストのことだね
桜笑
あたしさ、全教科0点だったんだぁ
そう言ってカバンの中から答案を取り出す
京介
はぁ!?
菜乃
なんか…名前しか字ないのにそれさえも悪化していってない?
桜笑
まあね〜
桜笑
(名前、書くのでせいいっぱいだったからな)
桜笑
(でももう、今なら───)
花火ーー!!
桜笑
!
わ、びっくりした
お店あっちだよねー?
桜笑
…
菜乃
桜笑?
京介
なんかあったのか?
桜笑
桜笑
──ふふっ
桜笑
何もないよ
桜笑
(もう、大丈夫)
桜笑
(過去なんて、置いて来たから)
あたしは1人でも生きていけるから
桜笑
(これは、2人に対して思ったことじゃない)
桜笑
ねえ、菜乃
菜乃
ん──?
菜乃
菜乃!?
桜笑
だって菜乃は桜笑なのにあたしは菜乃ちゃんってヘンじゃん笑
桜笑
ね、宮代くんも京介くんって呼んでいい?
京介
やだ
桜笑
決定ね〜
京介
はあ!?
桜笑
大切に、していーんでしょ?
桜笑
だったらもっと距離近くしたいもーん
京介
そういうことじゃねえ…!
桜笑
(あたしはもう…あたしの身体も心も、1人で支えられる)
桜笑
(そーいう意味)
桜笑
(…だから、バイバイ)
桜笑
(あたしを支えてくれた"心"たち)
今の自分がそう言ったところで人格というものは動かせない
だけどもう、今のあたしだけが、"自分"だと思える
もう、好きなように生きるんだ───。
5月末、あの事故から 2ヶ月ほど
思えばすべてはあそこから始まった
死ぬのが少し、ほんと少しだけだけど、怖くなった
だからこそ──、あと4ヶ月の命を、自分らしく生きてやる!