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だが迷った。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

お前は本当にクズだな

相羽吾蓮(あいば あれん)

着いたんだからいいだろ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

 偉そうな口を叩いておきながら、店の前に到着するまで一時間以上かかったではないか。

相羽吾蓮(あいば あれん)

それはお前のせいでもあるだろ。場所の覚え方がアバウト過ぎんだよ

木崎姫歌(きさき ひめうた)

うるさい黙れ!

相羽吾蓮(あいば あれん)

痛っ!? 何で殴った!? 情緒不安定か!?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

この店も久し振りだな……

相羽吾蓮(あいば あれん)

急に遠い目をするな!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……よし、行くか

相羽吾蓮(あいば あれん)

お、おい待て!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……

 正直、またこの店に来ることになるとは思わなかった。

 そこまで思い入れはないのだが、バスケに深く関わる場所は、ちょっとな……。

 少々暗い気持ちを胸に残しながら、無言で店内に足を踏み入れる。

すると、

相羽吾蓮(あいば あれん)

……お、おおっ!

 背後から、急に感嘆の声が上がった。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

? どうした、急に?

相羽吾蓮(あいば あれん)

いや、スゲーなバスケ専門店。想像してたのと、何か違うわ……

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ふうん……

 わたし的にはこれが普通なのだが、確かに普通のスポーツ用品店とは趣が違うかもしれない。

 試合の映像が流れていたり、ボールやシューズ等が置いてあるのは普通と変わらないだろうが、そういった商品ではなく、店そのものの雰囲気が違う。

相羽吾蓮(あいば あれん)

何か、男物の服屋みたいだな

 身も蓋もない言い方だが、そのニュアンスは確かにしっくりくる。

 アメリカ発祥のスポーツであることや、日本人がバスケに描くイメージの為か、この店はそういうストリート系の雰囲気が強い。

 いわゆるスポーツ特有の泥臭さが店内には見受けられず、よく言えばオシャレ、悪く言えばチャラいという感じだ。

 まあ、所詮は他のスポーツ用品店と比べて、ということなのだが。

相羽吾蓮(あいば あれん)

おお、いいじゃん。カッケーカッケー!

 吾蓮はどうやらご満悦のようだ。妙に無邪気な顔をしている。

相羽吾蓮(あいば あれん)

なあなあ木崎

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ん?

相羽吾蓮(あいば あれん)

ユニフォームとか壁に貼ってっけどよ、有名な選手のなのか?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ああ

 吾蓮の指さす方には、赤色の「23」のユニフォームが飾ってあった。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

神様だよ、神様

相羽吾蓮(あいば あれん)

神様?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

自分で調べろ

 わたしはそれだけ言って、シューズコーナーに足を向けた。

 うんちくを語るほど、バスケに未練はないのだ。

 そう、全く。

相羽吾蓮(あいば あれん)

おい、ちょっと待てよ!

 吾蓮が慌てて後を追って来る。

 しかしわたしは立ち止まったりはせず、真っ直ぐにシューズコーナーを目指した。

 すると、目的地に店員が立っているのが見えた。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ふむ……

 わざわざわたし自身が吾蓮にシューズを選んでやることもないな。

 シューズ選びはこの店員に任せることにしようか。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

すみません

 声をかけると、店員はにこやかにこちらを向き、

店長

はい、いらっしゃいま……

店長

リア充爆死しろ!

 罵声を浴びせてきた。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……は?

店長

うわーんトモコー! 店にカップルがやって来たよー! 背の高いイケメンが美人の彼女見せつけにやってきたよー! そんなに俺が憎いのか! そんなに童貞が悪いのかぁぁぁあああっ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……………

相羽吾蓮(あいば あれん)

……………

 うわぁ……。

 わたしと吾蓮は二人して、ボールを抱えながら号泣する店員にドン引きしていた。

相羽吾蓮(あいば あれん)

いや、俺達別にカップルじゃ、

店長

黙れリア充! 俺は悪くない! 一生懸命バスケに打ち込んでバスケに恋をして、それの何が悪い!? その結果彼女が出来なくて何が悪い!? 女共に男を見る目がないだけなんだ! 俺は悪くないんだぁぁぁあああああっ!

 自分の世界に入り、なおも号泣する店員。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

うわ、めんどくさっ

店長

めんどくさい!? またそれだよ! 女はいつもそれだよ! 一言目にはめんどくさいめんどくさい! 俺のどこがめんどくさいんだよぉぉぉおおおっ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

そういうところだろ

相羽吾蓮(あいば あれん)

お、おい木崎っ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

本当のことだろう

相羽吾蓮(あいば あれん)

そうかもしれんけどっ!

店長

っ!? 男にまで言われたぁぁぁあああっ! これだから! これだからリア充は嫌いなんだよ! 彼女がいるやつの方が偉いみたいなっ!? 関係ないだろそんなこと! 彼女がいようがいなかろうが、関係ないだろぉぉぉおおおっ!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

……………

相羽吾蓮(あいば あれん)

……………

 ダメだ、ダメだこいつ。話がまるで通じない。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

吾蓮、さっさと買って帰るぞ

相羽吾蓮(あいば あれん)

わかった

 初めて隣の変態と意見が一致したかもしれない。

 わたし達は数秒で棚に並ぶシューズに目を通し、

相羽吾蓮(あいば あれん)

木崎、シューズはどういうのがいいんだ!?

木崎姫歌(きさき ひめうた)

そうだな、基本は普通の靴を買う時と変わらない! 自分に適した重さやデザイン重視で選ぶといい!

 早口で質疑応答を開始した。

木崎姫歌(きさき ひめうた)

だが一応ガードは軽量型、センターは安定型を選んだほうがいいらしい! お前は身長的に安定型の方がいいだろうな!

相羽吾蓮(あいば あれん)

なるほど!

店長

彼女との仲も安定するようにね(ボソッ)

 何か聞こえたが無視!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

ソックスも買った方がいいな! バスケには専用のソックスがあるんだ!

相羽吾蓮(あいば あれん)

なるほど!

店長

彼女が君専用であるようにね(ボソッ)

 ひどく心外だが無視!

木崎姫歌(きさき ひめうた)

シューズの滑り止めなんかもあるぞ! 必須ではないが、シューズの埃を取ってくれる! シューズが床にピタッと貼り付くような感覚を得られる!

相羽吾蓮(あいば あれん)

なるほど!

店長

君達の距離と同じくらいピタッとね(ボソッ)

「黙れっ!」

 ズガン!!!

 わたしと吾蓮、二人の渾身のアッパーが、店員の顎に炸裂した。

ファウル・ファイブ

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