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透明な世界での日々は、穏やかで、そして奇妙だった。
江川枇翠は、ここに来てから何度も「楽だ」と思った。
朝に怯える必要もなく、誰かに笑われる心配もない。
ただ碧芭と歩き、話し、座っていればよかった。
けれど、少しずつ違和感も膨らんでいく。
ある日、ふたりは真っ白な商店街を歩いていた。
看板も、陳列された商品も、すべて色を失っている。
枇翠はふと、ある店の前で足を止めた。
江川枇翠
確かに昨日は何もなかった場所に、今日は“白い花屋”がある。
けれど、その店の奥はぼやけていて、入ろうとすると霧のように消えてしまう。
神代碧芭
碧芭は淡々と説明した。
神代碧芭
江川枇翠
枇翠が言葉を繰り返すと、碧芭は路地の奥を指さした。
そこには昨日まで確かにあったはずの白いベンチが、跡形もなく消えていた。
神代碧芭
神代碧芭
神代碧芭
枇翠は驚きと同時に、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
江川枇翠
碧芭は少し黙り込み、やがて小さく笑った。
神代碧芭
その声は軽やかだったのに、どこか底知れない響きがあった。
枇翠は答えられなかった。
ただ、自分の胸の奥で“ある疑問”が芽生え始める。
江川枇翠