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君との距離、0センチ

第7話 - 望影

2025年07月10日

#恋愛

#青春

#学生

#告白

ような。

保健室

黒崎　蓮斗

痛み、もうマシか？

寺本　詩

はい、少しジンジンするけど、大丈夫です

黒崎　蓮斗

そうか

寺本　詩

あ、でも、黒崎先輩、シフトの時間だったんじゃ…

黒崎　蓮斗

サボった

寺本　詩

…はい？

黒崎　蓮斗

やっぱあんなギャーギャーうるせぇとこにいたくねーと思って逃げてきた

黒崎　蓮斗

そしたらお前らがいた

寺本　詩

…そう、だったんですね

黒崎　蓮斗

結梨って、男の俺らでも圧あって逆らえねぇ時あるし

黒崎　蓮斗

結構やばいやつなんじゃねえかって思ってだんだけど

黒崎　蓮斗

案の定やばいやつだったわ

黒崎　蓮斗

…大丈夫か？

寺本　詩

いえ、実はめっちゃ怖かったです

黒崎　蓮斗

…だよな

黒崎　蓮斗

ごめん、こんな目に合わせて

寺本　詩

な…先輩は何にも謝る必要ないですよ!

黒崎　蓮斗

結梨の寺本に対する行動、明らかにおかしいって前から分かってた

黒崎　蓮斗

でも、思ってただけで止められなかった

黒崎　蓮斗

どう止めればいいか分かんねぇまま放っておいてた

黒崎　蓮斗

だから、こんなことになった

黒崎　蓮斗

俺がちゃんと行動できてたら、こんなことにならなかったんだけど

黒崎　蓮斗

…悪い

寺本　詩

謝らないでください

寺本　詩

私、めっちゃ先輩に感謝してます

寺本　詩

正直、あんなとこ見られてしまって恥ずかしい気持ちがあったんですけど

寺本　詩

今、先輩が一緒にいてくれて、すごい安心するんです

黒崎　蓮斗

ほんと？

寺本　詩

…はい

寺本　詩

あの時、先輩のこと、ヒーローかと思いました

黒崎　蓮斗

そんなカッコよくねぇよ

寺本　詩

カッコよかったです

黒崎　蓮斗

…っ

寺本　詩

先輩、今照れましたね!

黒崎　蓮斗

…もうしらねぇ

黒崎　蓮斗

もう2度と助けてやんねぇからな

寺本　詩

嘘、嘘ですって!

黒崎　蓮斗

ふっ、冗談だよ

窓の外から賑わう生徒の声が聞こえる

静かな保健室の真ん中

バチっと目が合う

寺本　詩

っ先輩…？

黒崎　蓮斗

俺、自分のことしか見てなかった時期があったけどさ

黒崎　蓮斗

最近気づいたわ

寺本　詩

…？

黒崎　蓮斗

誰かを大事にする気持ち、ちょっと分かるわ

黒崎　蓮斗

…お前見てると

寺本　詩

（先輩から目が離せない）

寺本　詩

（ふざけてたのに、優しくて、あったかくて、力強くて、真剣で…）

寺本　詩

（胸が、ギュッてなってる）

寺本　詩

（私、）

多分黒崎先輩のことが好きだ

後夜祭開始　数分前

寺本　詩

（私が、今ちゃんとお話しなきゃいけない人…）

寺本　詩

（それは、もう…）

目の前の、制服を掴む

寺本　詩

大輝っ！

岡本　大輝

うぉ、びっくりした

岡本　大輝

どした、急に？

寺本　詩

あのね、私、大輝に話さないといけないことあるの！

屋上

寺本　詩

えと、文化祭、どうだった？

岡本　大輝

何それ、掴み下手すぎ

岡本　大輝

いいよ、告白の返事だろ？

寺本　詩

…うん

岡本　大輝

ちゃんと聞くから、本音聞きたい

軽く深呼吸をしてまっすぐ大輝を見つめる

寺本　詩

…ごめんなさい

岡本　大輝

うん、そっか

寺本　詩

大輝はほんとにずっと隣にいて、楽しいことも優しいとこも面白いとこもすぐ変化に気づいてくれるとこも、全部好きなの

寺本　詩

でもそれって幼馴染として大切にしたい気持ちで、それ以上は考えられなかった

寺本　詩

胸がドキドキしたり、離れたくないって思う、恋っていう感情を抱いたのは、別の人なの

寺本　詩

…だから、私は

岡本　大輝

うん、大丈夫

岡本　大輝

分かったよ

寺本　詩

へ…？

岡本　大輝

蓮斗先輩なんだろ

寺本　詩

うん…気づいてたよね

岡本　大輝

お前のことは1番見てきたからな

岡本　大輝

なんでも気づくよ

寺本　詩

自分でもびっくりしてるんだ

寺本　詩

気づいたら、目で追ってたの。嬉しい時、辛い時、寂しい時、思い出すのはいつも、先輩だった

寺本　詩

これが、恋の"好き"なんだなって

岡本　大輝

…俺とおんなじ

岡本　大輝

俺が、詩に抱いてる気持ちと

寺本　詩

大輝…

岡本　大輝

本音で話してくれてありがとう

岡本　大輝

まぁ、この恋愛結構良かったよ

岡本　大輝

振られたけど、お前のこと大切なのは変わらないから

寺本　詩

うん、私も大切な幼馴染だよ！

寺本　詩

これからもよろしくね！

岡本　大輝

ま、お前といるのちょっとめんどい時もあるけどなっ

寺本　詩

もー！最後の一言余計！

寺本　詩

（すごい、気持ちが楽になった）

寺本　詩

（ありがとう、大輝）

寺本　詩

（こんな私を好きになってくれて）

岡本　大輝

おい、もうすぐ後夜祭始まるけど？

寺本　詩

え、ほんとだ！

岡本　大輝

このままだと振ったやつと過ごす後夜祭になっちゃうぞ

岡本　大輝

好きなやつといなくていいのかー

寺本　詩

っ…！

寺本　詩

…行ってきます!

岡本　大輝

早くいかねぇと間に合わねえぞー

寺本　詩

じゃあね、大輝!

岡本　大輝

おうっ！

岡本　大輝

（頑張れよ、おれの初恋さん）

後夜祭開始5分前

寺本　詩

（大輝に自分の気持ちを伝えられてスッキリした）

寺本　詩

（少し胸が痛い気がするけど、きっと大切だったから）

寺本　詩

（でも、もう気づいてる）

寺本　詩

（私が1番そばにいたい人…）

寺本　詩

（ダメだ、いないっ）

寺本　詩

（校庭、部室、体育館、教室、保健室、全部探したのに）

寺本　詩

（どこ行っちゃったんだろう…）

寺本　詩

（こんな時に限って、見つからない…）

寺本　詩

後夜祭、一緒に行きたかったのに…

ザワザワ

寺本　詩

…はぁ

後夜祭が始まった

校庭ではキャンドルが灯り、それを囲むように生徒たちが群がっている

寺本　詩

っ、先輩っ…

グラウンドから少し離れたベンチ

たくさんの生徒に囲まれた火の灯りを見つめる

寺本　詩

（寂しいなぁ）

寺本　詩

（見つけたかった、先輩…）

寺本　詩

（もう帰っちゃったのかな）

寺本　詩

（先輩の気持ちが、知りたい…）

寺本　詩

（隣に、いたいです…）

寺本　詩

見つけたかったな…

ギュッと拳を握る

涙を堪えるように─

黒崎　蓮斗

…見つけた

寺本　詩

…っ！

後ろから聞こえた、求めていた声

振り返ると、詩を見つめる先輩の姿が

寺本　詩

な、なんで…

黒崎　蓮斗

お前のこと、ずっと探してたんだけど

寺本　詩

（探してた…？先輩が、私を？）

寺本　詩

私も、先輩のこと探してました

目を合わせられずに下を向く

黒崎　蓮斗

何寂しそうな顔してんだよ

寺本　詩

…少しだけ、寂しかったです

黒崎　蓮斗

うん、見つけれて良かった

寺本　詩

私、ずっと先輩のそばにいたいと思いました

寺本　詩

さっき、助けてくれてから

黒崎　蓮斗

…うん

寺本　詩

見つけてくれて、ありがとうございますっ！

黒崎　蓮斗

…あのさ

寺本　詩

はい…？

黒崎　蓮斗

…俺、自分からこんなに人を探したの、初めて

寺本　詩

…え？

黒崎　蓮斗

ずっと誰に本音なんか言ってこなかったし、人と関わることに抵抗があった

黒崎　蓮斗

ずっと自分から距離置くようにしてた

黒崎　蓮斗

─でも、お前と出会って変わったよ

君との距離、0センチ

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