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2029年8月10日

引き続き「ガス」関連の ニュースです

現在政府は 各国と一時避難のための

交渉を進めています

ですが 現在日本では

痛ましい暴動が相次ぎ

すでに多数の被害が 報告されています

この事態を制圧すべく

警視庁は最大規模の機動隊を 全国各地に派遣し――

また自衛隊も 事態の沈静化にむけて動き出した模様です

お伝えしていますとおり 「ガス」の放出を恐れる人々は

一部暴徒となり 日本中を暴力で埋めつくしています

首相官邸前には

凶器を手に押し掛けた

デモ隊がひしめいていた

警官

みなさま

警官

落ち着いてください!

特殊警護車両の上に乗り

メガホンを片手に叫ぶ 警官の声は枯れそうだった

警官

日本政府は

警官

現在各国と交渉をすすめ

警官

すべての国民を

警官

避難させる計画を

警官

進めています!

警官

みなさま落ち着い――

警官が言い終わる前だった

彼の上体の動きが止まり

ふら、と 斜に傾いたように見え

そのまま 車から地面に倒れ落ちた

警官の額から ペットボトルの内容物が溢れるように

血が湧き出ていた

凶弾に倒れた警官を見て 機動隊の指揮官は無線機を口元に構えた

機動隊

作戦をB-12に変更する!

機動隊

全軍展開!抵抗する市民を発見次第撃て!

機動隊

首相退避5分前!気を緩めるなっ!

機動隊

繰り返す!

機動隊

作戦をB-12に変更する!

警察隊のシールドに隠れていた

迷彩柄の戦闘服を着た 自衛隊が姿をあらわした

民衆の中の ひとりの若者が

火炎瓶を機動隊の方に向かって 投げた

しかし その小さな瓶は

機動隊に届くまえに 1発の銃弾に砕かれ

空中で燃えかすとなった

自衛隊はライフルの銃口を

民衆にむけて構え直した

ふたたび指揮官が 無線機を口に当て

スイッチを切りかえた

機動隊

このデモに参加している者に告ぐ!

機動隊

今すぐこの場から退去しろ!

機動隊

退去しない者は容赦なく撃つ!

機動隊

繰り返す!

機動隊

退去しろ!

機動隊

さもなくば撃つ!

デモ隊のなかから 怒号と悲鳴が入り交じった

ざわめきが発せられた

退去しようとする者と

残留しようとする者が 混ぜこぜになり

巨大な団子状になったデモ隊は 移動しなくなった

機動隊

撃てっ!

指揮官がそう命じた

一斉にライフルの銃口に 火花が散る

悲鳴と銃声が 広場に響き渡る

やがて何百人といたデモ隊は 得物を使う間もなく

ひとり残らず その場で絶命していった

身を捩りながら 這うようにして逃げようとする者にさえも

自衛隊のライフルは 容赦なく弾を撃ち込んだのだ

大通りで巨大な火炎が 燃え広がっている

立は何者かに連れだされ 路地裏に隠れた

い…いてて

ここは

…どうなってるんだ

サワタリ

見てのとおりだ

サワタリ

「ガス」の影響をうけて

サワタリ

みんな混乱してしまっている

サワタリ

いまはステージ4と5の高等民しか

サワタリ

国外退避できない

サワタリ

政府はつぎにステージ3以下を逃がすと言っている

サワタリ

だがそれは建前にすぎない

サワタリ

日本で逃げることのできる人間は

サワタリ

限られているんだ

サワタリ

つまり政府は

サワタリ

おれたちを見殺しにする気だ

あんたは…

誰なんだ

サワタリ

おれはサワタリだ

サワタリ

「向こう側」から来た者たちの

サワタリ

生き残りだ

向こう側…?

サワタリ

「ガス」の出現が間近になって

サワタリ

実在しないが生きていることになった

サワタリ

とでも言えばいいかな

サワタリ

手っ取り早くいえば

サワタリ

幽霊だと思ってもらえたらいいか

よく分からないけど

おれを助けた目的はなんだ

サワタリ

お前に

サワタリ

生き延びてもらう

サワタリ

真実をおれと見るんだ

真実…

サワタリ

とにかく

サワタリ

ここは危険区域だ

サワタリ

いったん退去しよう

サワタリと立は

煙がたちのぼる 大通りを抜け出て

反対側の路地へと抜け出た

歩いているうちに

立の身体の痛みも いくぶん引いた

サワタリ

あんたが言う向こう側っていうのが

よく分からないけど

おれを、死なせる気なのか

サワタリ

向こう側というのは

サワタリ

そういう意味ではない

サワタリ

いま教えるべきではないんだ

そのとき

ふたたび大通りから

地鳴りをともなう 爆音が鳴り響いた

おれの家は

大丈夫だろうか

サワタリ

心配はいらない

サワタリ

お前の家には

サワタリ

地下シェルターがあるだろ?

えっ

どうしてそんなことを

サワタリ

それを知っていることも

サワタリ

おれが向こう側にいることの

サワタリ

証明なんだよ

あんた…

サワタリ

とにかく

サワタリ

お前を助けなければならない

霜月家の地下深くで

3人が 部屋の広さの割に小さい食卓を

囲んでいた

霜月ワタル

ということで我が家は

霜月ワタル

明日国外に脱出する

霜月ワタル

準備は今晩のうちに終わらせておくように

ぴしっと言い放った父

絵美衣は手にしたスプーンを 固く握りしめていた

絵美衣

お父さん

霜月ワタル

どうした?

絵美衣

お父さんは

絵美衣

大勢のひとを

絵美衣

見殺しにするの?

父はギリ、と歯を噛みあわせた

霜月ワタル

決して、決してそうではないんだ

霜月ワタル

ステージ5であるわれわれは

霜月ワタル

国民を、そして日本を

霜月ワタル

ありうべき姿に牽引していく

霜月ワタル

だから

霜月ワタル

われわれは国民を見殺しにはしない

絵美衣

でも

絵美衣

ほんとうに

絵美衣

みんな助かるの?

絵美衣

家だって手放すことになる

絵美衣

元通りの暮らしは…

霜月ワタル

とにかく

霜月ワタル

心配することはない!

父は拳を ダン!とテーブルに打ちつけた

霜月ワタル

それは全国民に対して

霜月ワタル

燈炬首相が案じておられることだ!

霜月ワタル

絵美衣はそんなことは考えなくていいんだよ

絵美衣は震えながら

父の言葉を噛み締めていた

その横で

縮みこんだ母は 誰とも目を合わさず

無表情で食器を動かしていた

父がふたたび皿にスプーンを つけようとしたその時

絵美衣

これって…

彼らの頭上で 微細な低音が

這っていくように 通り過ぎていった

霜月ワタル

ニュースでやってたあれだろう

霜月ワタル

なにも気にすることはない

父は何食わぬ顔で ふたたび食事をはじめた

絵美衣はうつむいたまま

こんなことを考えた

「もし乾くんと繋がっていたら」

「乾くんと一緒にいられたら」

「助けてもらえるだろうか」

しかしその薄弱な思いは 泡沫のように

どこかに流されていった

燈炬首相

それで

燈炬首相

反対勢力は鎮圧できたのか?

機動隊

問題ありません

機動隊

総理にはこれから

機動隊

装甲車に乗って頂き

機動隊

専用機を配備した

機動隊

羽田空港のシェルターKT-2まで

機動隊

移動して頂きます

機動隊

時期を見てワシントンに向かう予定です

燈炬首相

ふむ

燈炬首相

いいだろう

機動隊

エレベーターが到着しました

機動隊

さあ、総理

燈炬首相

うむ

ふたりはシェルターの 二重シャッターを開け

エレベーターへ乗り込んだ

指揮官は無線機を取りだす

機動隊

総理が到着された

機動隊

上に送ってくれ

地上は血の匂いに充ちていた

異臭を感じた燈炬は 嘔吐くような声を出して

指揮官にこう言った

燈炬首相

ああ臭いなあ

燈炬首相

あれは反対勢力のやつらか?

燈炬首相

死んでるっぽいな

燈炬首相

早々と毒ガスを撒いたのか?

機動隊

いえ

機動隊

われわれの命令を無視したので射殺したのです

燈炬首相

あーそういうことか

燈炬首相

しかしくさいじゃないか!

燈炬首相

はやく車に乗せてくれよ

機動隊

承知いたしております

機動隊

間もなく到着しますから

燈炬首相

まったく

燈炬首相

ひどくくさい!

燈炬首相

もうすこし配慮してくれんかなあ!

不快感を顕にする 首相のもとに

1台の装甲車があらわれた

死した者たちは

ただそこに存在する以外の 所作をすることもなく

ゆっくりと腐敗をはじめていた

日本終了まであと一週間

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255

コメント

12

ユーザー

うわぁ……好きすぎるんですが……これからも頑張ってください✨

ユーザー

面白すぎる。、

ユーザー

面白すぎて公式かと………………

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