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付き合ってからの日常は、 まるで季節がひとつ変わったように、静かで、 でも確かに色づいていた。

咲は相変わらず、人前でベタベタするような ことはしない。

でも、哲汰はそんな咲の「ちょっとした変化」に気づくのが得意だった。

たとえば、朝。 教室に入ってくる咲が、ほんの少し目を合わせてくれるようになったこと。 目が合った時、すぐにそらさず、 少しだけ口元が緩むようになったこと。

哲汰はそれだけで、その日一日を頑張れた。

昼休みになると、哲汰は咲の席の隣に来て、 少しだけ話す。 周囲の視線もあるから、あくまで“自然に”。 でも、二人だけにわかる距離感で。

ある日、哲汰がそっとチョコパンを 咲の机に置いた。

哲汰

これ、好きって言ってたやつ。売店もうラストだった

……ありがとう

短い返事。でもその日、 咲はいつもより長く哲汰の方を見ていた。

放課後になると、 帰り道を一緒に歩くことも増えた。 人目を避けて、商店街の裏の小道を抜ける。 ふたりきりになると、咲は少しだけ素直になる。

……ねえ、私って、普通?

哲汰

普通じゃないよ。
俺からしたら特別

……そっか。じゃあ、
“普通じゃない”私を、
ちゃんと見てて

哲汰

ずっと、見てるよ

そんな会話ができるようになったのは、 付き合ってから二週間が経った頃だった。

週末には、カフェに行く。

咲は哲汰のスマホに入っているONE N’ ONLYの曲を、ちょっと恥ずかしそうに 「聴いたよ」と言った。

哲汰は嬉しさを隠せず、ちょっと調子に乗って 小さく踊って見せたら、咲が吹き出した。

バカじゃないの

でもその声は、どこか甘かった。

二人の日常は、大きなイベントなんてない。 でも、“目が合って笑う”“ちょっと手が触れる” そんな一つ一つが、ちゃんと特別だった。

恋をして初めて、咲は「毎日が変わっていく」 感覚を知った。 哲汰は咲のそばで、「大切なものができる」 という重さと喜びを知った。

そして今日もまた、廊下ですれ違いざまに 哲汰が指先で咲の袖をそっとつかみ、 小さくささやく。

哲汰

放課後、待ってるよ

咲は、ほんの一瞬だけ――笑って頷いた。

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