しばらく雑談をした後で
私は勇気を振り絞って二人に問いかけた
美結
あ、あのね……
緊張で心臓がバクバクする
さっきまでとは違う別の緊張感
どんな答えが返ってくるのかも気になっていた
美結
あの人って……
美結
今どこにいるの?
拓郎
え?
郁美
あの人って……
美結
私の……実の……
母親とかお母さんとか
そう言う言葉は使いたくなかった
私は実の母のことを母と思ったことは一度もない
もう顔もよく思い出せず
残った記憶はあの言葉だけ
優香里
あんなのもう要らない!!
忘れたくても忘れられないあの言葉だけだった
亮二
すみません……
亮二
僕が挨拶したいって言ったんです……
亮二
美結さんの本当のお母さんに……
亮二
でも不謹慎でした……
亮二
美結さんには郁美さんと言うお母さんがいるのに……
最初は亮ちゃんの言葉に驚いたけど
私も今は同じ気持ちで
実の母には聞きたいこともあるし
言いたいこともたくさんあった
私はちゃんと
愛されて生まれてきたのか
最後はあんな形で別れてしまったけれど
せめて生まれた時は……
その時だけは……
美結
私は……
美結
いっちゃんとたっくんのことを両親だと思ってる……
美結
でも……
郁美
ごめん……
美結
え?
拓郎
…………
美結
やっぱり、教えるのは嫌?
郁美
そうじゃなくて……
郁美
わからないの……
郁美
私達にも……
美結
わからない?
私を引き取って間もない頃は
実の母の情報が時々入っていたけれど
五~六年程前
地方に引っ越すという情報を最後に
母の消息は掴めなくなってた
あとはもう
興信所や個人探偵事務所などに依頼するしかない
美結
そっか……
美結
もうわからないんだ……
亮二
ごめん美結……
亮二
俺があんなこと言わなければ……
凄く不思議な気持ちだった
二人がわからないと知って
余計に気になる自分がいる
最初は会いたいとも思わなかったのに
それからは和やかにいろんなことを話して
亮ちゃんを駅に送るために歩いていた
美結
私……
美結
本格的に探してみようかな……
亮二
無理してない?
美結
もう平気
美結
それに……
美結
本当は気になってたし……
亮二
美結……
美結
まさか消息不明になってるとは思わなかったけど……
本格的に母を探すとなったら
やはり探偵に依頼しなければ……
友子
美結?
美結
え?
突然の声に振り返ると
友子
美結ー!
美結
友子!
幼なじみの友子が立っていた