死 ん だ 貴 女 に 恋 を し た

※ 百 合 自衛お願いします

2年2ヶ月もの間

貴女を見続けていた癖して勝手に 一線を引いて来ようとしなかった家

扉の前に立って早数分

不審者だと思われる前にチャイムを 押すべきなのにどうにも押せない

空には太陽が昇っていて酷く暑いのに 手は震えて上手く動かない

漸く押せたベルの先で女性の声がした

少しして扉を開けた女性は 不思議そうな顔をした

眼の下に濃い隈が広がっていた

無理に造られた笑みは疲れ切っていた

小さな会釈が眼の前の彼女に 届いているのかすら判らなかった

汚いなんて言葉は微塵も当てはまらなくて 全ての物が綺麗に整頓されていた

誰とでも仲が良かった貴女は

私と貴女の家族以外に

心からは愛されていなかった

静かに閉まった扉を 見つめては苦しくなった

丁寧に手入れされた仏壇の前に正座する

貴女の美しい笑顔の前に供えられた 花やお菓子が ’ 死 ‘ を意識させる

花　を　供　え　た

貴女へ哀悼の意を示すかの如く 下向きに萎れた花々が生けられた花瓶

来る途中で悩んだ末に買った 鮮やかで真っ直ぐなアイレンを生けた

花弁が貴女に似た美しさを披露している

頬を伝うモノに徐々気持ちを 吐いてあげないとカワイソウだと思った

此れで良い

決して何時もの不敵な笑みでは無い

貴女への気持ちを込めた 心からの笑みを魅せてあげた

慣れた手付きで携帯のカメラを起動させる

此れで御終い

そう心に誓って 花の後ろで美しく微笑む貴女を撮した

此れで

最期

死んだ貴女への恋心を静かに終えた

𝐹𝑖𝑛.