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2032年8月13日
その日は満月だった
しかし雲が夜空に渦巻き、月光を散り散りにしてしまっている
嫌がらせのように完璧なおぼろ月だ
ため息をつきながらも見上げてしまう
今夜の月は"ブライトムーン"と呼ばれている
数十年に一度しか見られない稀少な月
その明るさは夜空の太陽と言っても過言ではない
実際、今日の日中に浮かんでいたブライトムーンは太陽の双子のように輝いていた
…が、夜空はあいにくの曇り
わざわざ夜空の晴れる予報が出た長崎にまで来たのだ
少しくらい予報が外れたって諦めきれない
一瞬だけでもいい
その瞬間を確実に…
あ れ……?
月が雲の切れ目から顔を出し始めていた
しかし おぼろ月はそのままだ
僕は目をこする
やはり……ある
………
夜空にふたつの月が現れた
あー、もう……
夜中に出動要請なんてたまったもんじゃない
契約書にはなかったぞ!?
こんな真夜中に起きてるのは俺か、馬鹿みたいに月を見上げているやつくらいか…
ぶつくさ文句を言いながらも
松本は手際よく準備を進めていく
ゴースト駆除株式会社 長崎支部
長ったらしい社名だ
Ghostの存在が認知され始めた 四年前-
この会社は他企業に先立って創業された
顧客にも分かりやすいように、そのまんまな社名にしたらしいが……
ゴースト駆除株式会社……?
…………
バカっぽい
だからって、この間抜けな名前の会社に勤めないという訳ではない
Ghostを上手く誘導して専用の装置に入れてしまえば、駆除は完了
後はその洗濯機みたいな装置から出てくるどろどろの"念液"を回収するだけでいい
端的に言うと……給料がいいのだ
危険な念をもつGhostも少なくはない
が、大半は造作もなく洗濯機にぶちこむことができる
資格も何も持たない学生の俺でも簡単にできた
こんな手頃なアルバイトがあったなら、部活なんかせずに働けばよかった
その場合、校則を破り捨てることになるが……
まあ 今回もそんなに大した労働にはならないだろう
地元住民がそのGhostを見て騒いでるらしいから、そっちの対処のほうが面倒そうだ
俺は残業手当を期待しながら、夜の坂道を駆け下りた