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第112話『影という言葉に、触れてしまった日』
朝のキッチンは、静かだった。
コーヒーメーカーの低い音と、湯気の立つ気配だけが、時間を刻んでいる。
窓から差し込む光は柔らかく、八月の始まりにしては、少しだけ控えめだった。
なつは、カウンターの前に立っていた。
マグカップを持ったまま、足元を見下ろしている。
なつ
ぽつりと、独り言のように呟く。
一昨日――正確には、一昨日の“説明”が、まだ頭の中に引っかかっていた。
影。
守るために生まれたもの。
人格ではない。
仲間でもない。
そんなファンタジーみたいな存在が、本当にあるのか。
なつ
なつは、眉を寄せた。
なつ
そう言いながら、床に落ちる自分の影を見る。
黒く、輪郭のはっきりした、いつもの影。
試すように、右手を上げる。
影も、同じように動く。
今度は、指を開く。
影の指も、開く。
腕を振る。
影も、遅れなく追従する。
なつ
なつは、じっとそれを見つめる。
自我がない。
命令も、感情も、意思もない。
ただ、光に従って形を変えるだけの存在。
――これが、普通だ。
もし、ここに。
自分と瓜二つの“もう一人”が立っていたら。
自分の判断を先読みして、勝手に動いて、勝手に守ろうとしてきたら。
なつ
思わず、そう零れた。
自分の影を見下ろしながら、なつは鼻で息を吐く。
なつ
らんが、どんな気持ちだったのか。
理解したわけじゃない。
でも、想像はできてしまった。
すち
背後から、すちの声。
振り返ると、すちとみことが並んで立っていた。
二人ともマグカップを片手に、完全に“朝の顔”だ。
なつ
なつは、手を動かしたまま答える。
みことが、苦笑する。
みこと
床を見る。
みこと
なつ
なつは、腕を下ろした。
影も、元に戻る。
なつ
一拍置いて、言葉を選ぶ。
なつ
みことが、首を傾げる。
みこと
みこと
すちは、黙って二人を見ていた。
なつは、肩をすくめる。
なつ
少し間を置いてから、続ける。
なつ
影がいる。
守るために生まれた存在。
選ばせたら壊れる。
なつ
足元を見る。
なつ
みことが、マグを口に運びながら言う。
みこと
すちは、その様子を見てから、静かに口を開いた。
すち
なつを見る。
すち
なつは、一瞬、言葉に詰まった。
なつ
否定はしなかった。
なつ
みことが、少し真剣な顔になる。
みこと
なつは、しばらく黙ってから答える。
なつ
空気が、わずかに重くなる。
すちは、視線を落とす。
すち
なつ
なつは続ける。
なつ
それは、当たり前の事実だった。
日々、悩むことはあっても、踏みとどまって、誰かに支えられて、“戻ってきている”。
だから。
なつ
言いかけて、止める。
なつは、軽く頭を振った。
なつ
すちは、その続きを聞かなかった。
代わりに、静かに言う。
すち
二人を見る。
すち
みことが、眉を寄せる。
みこと
すち
すちは、マグを持ち直す。
すち
言葉は、柔らかい。
でも、核心を突いていた。
なつは、黙って聞いている。
すち
すちは、続ける。
すち
一拍。
すち
なつは、自分の影を見る。
相変わらず、忠実に動くだけの存在。
命令も、感情も、意思もない。
なつ
その“普通さ”が、急にありがたく思えた。
なつ
ぽつりと呟く。
なつ
みことが、頷く。
みこと
みこと
すちは、少しだけ視線を逸らした。
すち
三人の間に、短い沈黙。
誰も、“影”の話をそれ以上続けなかった。
続けられなかった、のかもしれない。
だって。
知らない方がいいことも、確かにある。
触れない方が、守れる距離もある。
そのことを、三人とも、無意識に理解していた。
第112話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡400
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コメント
1件
一章から一気読みさせていただきました!本当に感動する物語すぎます!主様のその想像力と継続性すんごく尊敬します!続きも待ってます!