夏は、昔から嫌いだった。
頼んでもないのに、 太陽は全てを照らし上げ、
スポットライトを当てる振りをして、
深い影を、 ただつくっていくだけなのに。
夏澄(かすみ)
夏澄(かすみ)
…あっつ。
図書室に居ると言うのに、やっぱり暑かった。
映多(えいた)
暑いなら窓際に居なきゃいいだろ。
夏は嫌いだ。
夏澄(かすみ)
夏澄(かすみ)
…関係ないじゃん。
太陽が、近いから。
映多(えいた)
てかお前さ、
映多(えいた)
名前に「夏」って付いてんのに、
映多(えいた)
夏嫌いなの?
夏澄(かすみ)
夏澄(かすみ)
…別に、
夏澄(かすみ)
嫌いなんて言ってないじゃん。
映多(えいた)
夏なのに冷たいな。
夏澄(かすみ)
…どういう意味、
映多(えいた)
夏って付いてんのに、態度が冷たいよなって。
夏澄(かすみ)
…付けてくれなんて、私は頼んでないから。
夏澄(かすみ)
夏澄(かすみ)
…夏なんて、無くなればいい。
映多(えいた)
へー、そっか。
相槌がいちいち癪に障る。
夏澄(かすみ)
…興味無いなら話しかけないでよ。
映多(えいた)
いや、別に、
映多(えいた)
「夏」が無くなったら、
映多(えいた)
映多(えいた)
お前の名前、呼べなくなるじゃん。
夏澄(かすみ)
…だから、
夏澄(かすみ)
…本読んでるから、あっち行って。
夏は嫌いなんだ。








