テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
まに
3
#ホラー
名瀬口にぼし
221
#タグ?それならついさっきサイモンと一緒にたべたよ?
白嵐
4
399
コメント
4件
うわっ……第40話、めちゃくちゃ重くて切なかったです。那柚さんが警察に失望して「人間はあてにならない」って思うまでと、夏樹に冬樹を投影しちゃう心情が痛いほど伝わってきました。最後の「決定的な事件」ってなんだろう……夏樹が自分の部屋欲しがっただけでここまで追い詰められる那柚さんが切なすぎる。続きが気になる🔥
私の彼氏が
2017年2月23日
突如姿を消しました。
彼が失踪した後
わたしはすぐに警察に届け出た
あの時
警察はわたしに対して
安直な言葉をかけた
警官
警官
警官
お母さん?
ああそうだ
わたしは一児の母だった
その時はまだ
「この人なら信頼できる」と
凛々しい警官の顔を見て思っていた
だが
わたしは見事に裏切られた
その後
いつになっても警官は彼に対しての
捜査の進展を話すことはしなかった
いつまで経っても
彼に関する情報は皆無だったし
平たく言えば 「やる気」がなかった
警察署に出向いても
「大丈夫です」を繰り返すばかり
失踪から時間が経って
わたしの意識にはいよいよ 「彼が死んだ」という可能性が頭をもたげてきた
たまりかねたわたしは
あの警官を窓口で呼び出し
問いただした
那柚
警官
警官
警官
警官
那柚
那柚
那柚
那柚
警官
警官
警官
警官
那柚
警官
警官
警官
警官
警官はそう言うものの
言葉に躊躇している風ではなかった
用意された定型句を読んでいるだけのような
そんな言い方だった
わたしはなんの感慨もなく
ぷいと体を翻し
警察署を後にした
……わたしが人間を信じられなくなったのは
その瞬間からだった
結局誰もが
一番可愛いのは自分なんだ
だから いざという時に
いや そうではなくても
自分を優先して考える
だからこそ
他人に対してはほとんどなにもできない
それ以来
私はこう思うようになりました。
人間はあてにならない。
頼れるのは自分のみだと。
どうしてこんなに情けないんだろう
人間というのは
結局みんな自分のためだけに生きている
わたしって一体なに?
意味がない
なんのために生きている?
頬を一条の涙が伝った
その時だった
夏樹
夏樹
那柚
夏樹
夏樹
途方に暮れたわたしに
数年かけて立派な男の子になった夏樹が
慰めの言葉をかけてくれた
もう中学生になろうかという年齢だった
「彼が失踪した」ことは
直接的には話していない
だが
いつの間にか悟っていた
那柚
そのほっそりとした体をしっかりと抱きしめる
すると夏樹もわたしの両肩に手を重ねた
わたしは
咽びながら夏樹の肩をぽんぽんと叩いた
那柚
那柚
夏樹
夏樹
夏樹
その一言に わたしは堰を切ったように泣いた
夏樹の本心はどうだろう
だが夏樹もわたしを信じているはずだ
夏樹だけはそうだ
——そして決めた
人を信頼できなくても
わたしは自分自身の意志によって 生きていくと
夏樹を
大切にして生きていこうと思った
いつからだったかはもう覚えていないが
わたしは次第に夏樹に自分の意志を 投影するようになった
彼に対する愛情の投影だ
自分の中で
夏樹を「彼」 つまり冬樹と 見なすようになってしまった
もちろん生物学上は 彼のDNAの正当な後継者なのだから
ある程度は仕方ないかもしれない
もしかしたら
彼は遺伝子として
いまも夏樹の中で生き続けているのかもしれない
彼——冬樹が弾くピアノを また聴いてみたいと思った
わたしは夏樹に特技をと思い
音楽教室に入会させた
夏樹は天才的な技巧で
教師たちを驚かせたと 教室長が話していた
習い始めてからわずか2ヶ月で
夏樹は冬樹の能力を上回るほどの指づかいを習得した
信じられないほどの技巧に こんなことが人間にできるものなのかと
ピアノに疎いわたしでもそう思った
夏樹
夏樹
夏樹
夏樹
那柚
那柚
那柚
那柚
夏樹
夏樹
夏樹
夏樹が中学生になってからも
わたしたちは同じ寝室で
しかも同じベッドで寝た
夏樹は嫌がらなかった
たまにスキンシップがあったが
夏樹は気に止める風ではなかった
それでも
少しよそよそしい空気感を感じることもあった
その予感が確信に変わったのは
夏樹が変声した中学2年生の頃だった
彼は自分の部屋が欲しいと 迂遠な言い方でわたしに言った
夏樹
夏樹
夏樹
那柚
夏樹
夏樹
那柚
すると夏樹はベッドから立ち上がり
夏樹
夏樹
那柚
酒が入ってほろ酔いになっていたわたしは
夏樹に「淡い期待」を抱いていた
それを打ち砕かれて
わたしは絶句した
夏樹は部屋のドアを勢いよく閉めた
いつになく心臓がバクバク鳴っている
そしてその直後
決定的な事件を わたしは引き起こしてしまう