戦線の魔法使い

「神に祈りを、そうすれば神は貴女を守ってくれる。」

「私達はいつも、貴女の傍に」

「そろそろ、起きなさい、彼女が待っている」

目を開けると目の前に陽の光を浴びてキラキラと輝く彼女の顔があった

椅子に座っている彼女を見てから父を見る

ポンっと頭に手が置かれる

ずっと疑問に思っていた事を彼女に向けて放つ

驚きの声を上げると彼女は迷惑そうに顔を歪めた

傍らにかけて合った制服の上着を指した

忘れてた、言葉にムカついてこの学園のルール、そして半年前に宣言された婚約者制度

保健室を出ていく父を見送って彼女をまた見る

ビシッと指を指されビクッと肩が跳ねる

え？今、プロポーズ…

グイッと顔を近づけられ、その綺麗な顔に思わず体温が上がる

彼女の剣幕に私は頷く事しか出来なかった

この好機を逃す訳には行かない、自由になる為ならこの子が欲しい物をあげる

幸いお金ならあるから、ある程度の物なら用意出来る

自分が想定していたお願いの範疇外で思わずポカーンっとしてしまった

そう言われても、私に断る理由無いし、と思いながら私は頷いた

嬉しそうにニコッと微笑む彼女に心がくすぐられる

腕を突き出して生徒手帳をくっつけた

ピコンっと音が鳴ってお互いの連絡先を交換した

鳴き声が聞こえてくると思ったら足元に黒猫がいた

私の膝に飛び乗ってから彼女に飛びついた

愛しそうに黒猫を撫で始める

聞き間違え？今、猫が喋って…

ジーッと彼女と猫を交互に見つめる

この猫とは仲良くなれそうにない

その晩、父に学園内にある広場に呼び出された

空中からふわっと着地して私の隣に座った

腰に装着した空中浮遊魔道具を取ってカバンから首輪を取り出した

今つけてる首輪を外して新しい首輪を付けた

立ち上がって手の平を前に突き出した

魔力を込めると今までと違って手に馴染むような感覚がして防壁が前に現れた

父は立ち上がって私の頭に手を乗せた そして、いつもの言葉を

敗北から数日、あの後親父にも叱責を受け、学園でも俺は笑いものだ 落ちこぼれにも負けて婚約者も奪われたってな

俺を負かした女が目の前に現れた少し、いやだいぶイラッとする

初めてかもしれない、そんな言葉を、そんな純粋な表情、目で言われたのは

彼女の横を通る

幼い頃から俺以外と関わろうとしない弟が興味を持つ あの女、何者なんだ…？

お昼の時間、いつものベンチに座ってサンドイッチを齧る

私に近づく人間なんて相当神経が図太い人間か上位名家のボンボン共ぐらいだろう

そう、この前までは思っていた

チラッと彼女を見てから頷くと彼女は嬉しそうに隣に座っていつものパックを取り出した

彼女はパックに魔力を込めるとホカホカのヌードルが完成した

美味しそうにご飯を頬張る彼女を見ていると何故か凄く癒される

大きなお肉のブロックを差し出してきた

慣れない様子で箸で半分に肉を切って再度私に差し出した

お肉にかぶりつくと程よい脂と少し濃い味が口に広がった

大きな口で一口一口食べる彼女

ここ数日一緒に居て分かった事は、彼女は中々の大食いである事と、人見知りが本当に激しい事と、意外にも彼女は注目されていること

経営学科と魔道具専攻科からこの前の決闘以来高い評価を得ている

落ちこぼれと言われていた彼女があのトップに勝利したのだ

そのトップとお近づきになれればこの先成績を残しやすい、それに彼女は純粋が故助けてと言われれば助けるだろう

この前だって、女子に囲まれていた所を私の婚約者だからと引き抜いたばかりだ

バシッと額に指を弾く

そんな会話をしていると、1人の男子生徒が近づいてきた

トップになってから、彼女は決闘を申し込まれる事が増えた まぁ、当然だろう、トップに勝てばもれなく私が付いてくるし、何よりも彼女になら勝てるって皆思ってるから

だから1つ約束させた、私の許可なく決闘を受けない事

私の人生がかかってるもの、当然よ

放課後、タブレットで決闘を見届けた後、ベンチでボーッと空を眺めていた

決闘が終わった後はここで待ち合わせ

嬉しそうに、まるで褒めて欲しいかのように報告する彼女を隣に座らせる

彼女の手をそっと取る

私の手の傷や、マメを撫でる彼女は陽に当たってあの日のようにキラキラしていた

やっぱり、この人はとても綺麗だ

ミケイラさんは私が寝泊まりしている寮とは違い、もっと、セキュリティが厳重な特別室に寝泊まりしている

少し面白くなさそうに返事をしてミケイラさんは歩き出した

ドンッ

拳が机に叩きつけられ、秘書がビクッと肩を跳ねさる

コール・ヴォルワー 49歳 189cm ヴォルワー家の家主 アルデンヌグループのグループリーダーを狙っている