戦線の魔法使い

今日は制服のままでの潜水訓練 着衣したまま潜水して魔力を使って身体を進める 着衣していると動きずらいし、服が水を吸って重くなる これは実戦でも有り得るシチュエーションだ

次の訓練は救助訓練 この訓練は他の学科とペアになり、水中で動けなくなった救助者を救助する訓練だ

私のペアはもちろん彼女 彼女は同じく制服のままプールに飛び込んだ

早く行きたい気持ちを抑えて10秒数える

10秒数えて水に飛び込むとプールの底に彼女が目を瞑ってただよっている

足の裏に魔力を集中させて一蹴りすると前にグンッと身体が進む

彼女はゆっくりと目を開けて私を見つめる

綺麗だ、とても

手を伸ばして彼女の腕を掴んで抱き寄せる

2人だけの空間にいるような 音も無い世界に2人だけ それが何故か嬉しく思えた

でも彼女の顔が少し苦しそうになったから私は慌てて脚を動かして上に向かった

綺麗で、ただ2人の空間が嬉しくて、ずっとあのままでいたくなってしまった なんて言ったら怒られるから言わない

シャワーを浴びた後私達は少しだけ散歩していた

流石経営学科成績トップ 当然かのように答えるその姿にぐうの音も出なかった

彼女は立ち止まって私を見た

手を振って彼女を見送った

声を掛けられ振り返ると、元トップの弟が立っていた

彼は私に近づいて顔をグイッと近づけた

彼は私の左眼を覗き込んだ

顔があまりにも近過ぎて、私の体温は一気に急上昇する

グラハさんが歩いてきてロンさんの腕をガシッと掴んで引き剥がした

2人の後ろ姿を見送って唖然とする

扉を開けると彼が椅子に座っていた

ドレイクさんは立ち上がって窓の外を見つめた

「共和国でのデモが…」

「戦争を反対するデモが…」

ピコンッ

画面が変わり、コール画面になった

ピッ

ピッ

ピッ

「は…はい！サーシャです！！」

「え…えぇ？！！」

正装を纏った2人が前から歩いてきた

手首を掴まれ大きなホールに連れてかれた

大きなホールに行くと最新魔道具が沢山並んでいた

サンプルを手に持つ

ロンさんは武器を見ながら呟いた

ビーッ、ビーッ

警報音が鳴り響いた

「警告、警告、侵入者、侵入者」

会場はパニックに陥った

ロンとサーシャがホールから走って戻ってきていた

ロンとグラハは懐から銃を取り出した

「あー、あー、聞こえるか？」

スピーカーから声が聞こえ始める

「我々は共和国民、帝国ウィザード狩り部隊」

「悪魔の力を受けた貴様ら魔法使い共を今から 排除する」

まもなくすると銃声と爆発音、悲鳴がホールから聞こえてきた

私はミケイラさんの腕を掴んで出口へと向かった

銃声が鳴り響く会場を出て階段を降りる

急に走ったせいで靴擦れが起きてしまっていた

サーシャは私を軽々抱き上げて階段を駆け下りた

素直な、曇りのない顔で前を向く彼女

銃口がこちらを向き、男は引き金を引いた

パンッ

カァンッ

防壁が弾を弾いて壁にめり込んだ

遮蔽物の後ろにミケイラさんを降ろす

ミケイラさんの頭に手を乗せる

防壁術式をミケイラさんにかけて立ち上がる

パンッ、カァンッ パンッ、カァンッ

懐から魔銃を取り出して男に向けた

男に撃つと弾と共に鎖が男を囲んで縛り付けた

男の後ろから父が走ってきた

男を見て近づいた

自分の後ろから声が聞こえて振り返ると、ミケイラさんが男に拘束され首に銃口を当てられていた

どうする、でも、やらなければ、ミケイラさんが、ミケイラさん…ミケイラさんミケイラさん

恐怖で顔を歪めているミケイラさんを見てスーッと背筋を撫でられたような感覚がする

カチャッと男に向かって銃口を向ける

ミケイラさんには当たらないように丁寧に照準を合わせる

パァンッ、カァンッ

ミケイラさんの首に撃ち込まれた銃弾が弾かれて床に転がった

先程掛けた防壁術式が発動したのだ

パァンッ

口を覆っていた手から力が抜けて開放される

後ろにバタッと倒れた男を見て足の力が抜けてその場に座り込む

駆け寄ってきた彼女の手には先程男を撃った銃

サーシャに抱えられた私をみて父親はサーシャと、倒れてる男、そして拘束された男を見た

私を抱き上げ、少し、不安そうな顔をしている横顔を見て 先程自分が思った感情をかき消す

銃を持って駆け寄る彼女を見て私は「怖い」と感じてしまった

だけど、そんな事を思うのは愚考だ

何よりも怖いのは彼女だ

初めて、人を殺した彼女だ

私を抱きしめる手が震えてる事に気づいて彼女の頬に手を伸ばす

こうゆう時感じるべき感情は恐怖じゃなくて、感謝だ

だから私は彼女に「ありがとう」と言った

そうすれば彼女は少し驚いた顔をしてからホッとしたような表情になった