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テラーノベル(Teller Novel)

2010年8月29日(日)

私は優真さんと共にあすみさんの病院に来ていた

入院五日目となるこの日

私があすみさんに会うのは三日ぶりとなる

病院の入り口にはまだマスコミがいるため

前回と同様に裏の通用口へ

通用口にも何人かそれらしき人がいて

当然、声をかけられたが

優真さんはサングラスとマスクで顔を隠し足早に院内へ

通用口の方にも何人かの事務員さんがいて

報道陣を足止めしていた

沢田マリカ

(マスコミってこんなしつこいんだ……)

今回の事件で優真さんと所長の顔が全国ネットのテレビに映った

でも私や芹沢さんは後ろ姿しか映っていなかったため

マスコミに気づかれることなく警察署中に入ることができている

そしてこの病院内にも楽に入ることができていた

救急病棟に入ると

真っ先にあすみさんの姿が目に飛び込んできた

沢田マリカ

え!?あすみさん!?

全身の包帯はまだ取れていないが

化膿した切り傷が感染症を起こし酷い状態だった腕と足は

抗生剤を投与したおかげで腫れが引き

容態もかなり安定しているようだった

三村優真

会いに来たよ……

井川あすみ

ぅ……ぁ……

優真さんの言葉にも微かではあるが反応を見せる

所長から聞いていた通り

優真さんが手を握るととても穏やかな表情になる彼女

優真さんが何か質問をすると

それに答えるように優真さんが握った手の指を動かし

すっかり意思の疎通もできるようになっていた

まだ経口での栄養摂取ができる状態ではないため

栄養と脱水症状の改善に必要な水分、電解質などを

静脈からの点滴で補給していた

三日前の朝から一昨日の朝にかけて

優真さんのいない時間に彼女は何度か錯乱状態になったが

優真さんの言葉に落ち着いたのか

一昨日の夜からは何事もなく落ち着いているようだった

殆ど言葉を交わすことのできない彼女に

三村優真

大丈夫だよ

優しく語りかける優真さんの姿は

彼女のことを一途に想う普通の青年そのものだった

ただ、普通と違うのは

異様な程に深く強い二人の絆

かつて日常的に二人を繋いでいたと言う手錠が

まるでそこに存在しているかのように

二人の心をガッチリと繋いでいるように感じた

救急病棟は慌ただしく

医師や看護師など人の出入りも多い

でも優真さんとあすみさんのいるこの空間だけ

静寂に包まれているような

以前ここに来た時にも感じた不思議な感覚

なぜこんなにも静かな時が流れているのか

まるで二人を包み込むような時の流れは

二人の傷ついた心を癒すかのように

ゆっくりと進んでいるような気がした

井川あすみ

ぅ……ぁ……

三村優真

無理しなくていいよ

三村優真

言葉なんてなくていい……

優真さんの優しい言葉に彼女が大粒の涙を流す

心の底から彼のことを想い

心の底から溢れる感情が涙となって流れ落ちる

彼女の涙を優しく拭う優真さんの姿に

より一層、深い愛を感じた

梶原智香

沢田!

沢田マリカ

梶原さん!

梶原智香

今すぐ事務所に戻って!

沢田マリカ

何かあったんですか?

梶原智香

井川悟志が戻ってきたの!

沢田マリカ

え!?

梶原智香

ここは私か代わるから

梶原さんの言葉に驚きつつ

私は急いで病院を後にした

事務所には既に所長と芹沢さんも来ていた

沢田マリカ

梶原さんから父親が戻ってきたって聞いたんですけど!?

三村優真

長期で海外に出張に行っていたそうだ

高城寛貴(所長)

今は任意同行で警察署にいるようです

沢田マリカ

もう警察署にいるんですか!?

あまりにも急な展開に

私の心はかなり動揺していた

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