昼休みのチャイムが鳴っても、私は今日も教室の隅でお弁当を広げていた。
クラスのみんながわいわいと騒ぐ中、私はそっとイヤホンを耳に差し込む。
誰にも邪魔されないこの時間が、何よりも落ち着くのだ。
爽希
明るい声とともに、南雲爽希(なぐもさき)がトレーを持ってやってきた。
彼女はいつも眩しいくらいに笑っていて、陰キャ代表の私には正反対の存在だ。
優花
爽希
そう言って勝手に隣に座る爽希。
そんな彼女の明るさに、私はいつも救われていた。
その日の放課後———。
私は帰り道で、校門の外に落ちていたノートを拾った。
誰かのだろうかと思って名前を見ると、「加藤煌世(かとうこうせい)」と書かれている。
……加藤?あの不良の、加藤くん!?
金髪にピアス、教師も手を焼くという噂の人。
私はドキドキしながら、そのノートを抱えて校舎裏のベンチに向かった。
と、その時。
煌世
低くて、少し掠れた声。
振り向いた瞬間、目の前に立っていたのは、まさに“加藤煌世”本人だった。
優花
煌世
彼はゆっくりとノートを受け取ると、ふっと笑った。
思っていたよりも優しい笑顔に、胸の奥がきゅっとなった。
煌世
優花
煌世
そう言い残して去っていく彼の背中を見ながら、私は思った。
———どうしてだろう。
あんな怖い人なのに、ちょっとだけ、心臓がうるさい。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!