記憶

翌日

〜 デビルズパレス・食堂 〜

早朝 私は執事に食堂まで案内された

既に執事たちは集まっていて 少し難しい顔をしている

…

「少女の引き取り先が見つかった」

そう告げられた時 胸が締め付けられるように痛くなった

寂しい･･･とはまた違う 彼女は私が幸せにしてあげたかった

なにより･･･

彼女が楽しそうに歌っている姿も 嫌いな食べ物を知るのも お花の髪飾りを貰うのも

そして･･･あの眩しい笑顔も

全部･･･初めてのはずなのに どこか懐かしくて 何もかもが大切なあの子と重なって

失った苦しみを抉られると同時に 重なった彼女を 大切に･･･幸せにしてあげたかった

･･･あの子の代わりに

今･･･私はどんな顔をしているだろう

分からないけれど 執事たちに心配は掛けたくなかった

だから･･･

整理しきれないこの気持ちを 悟られないよう･･･ 執事たちに精一杯微笑んでみせた

〜 デビルズパレス・自室 〜

ｶﾞｻｺﾞｿ

立ち上がろうとした瞬間 彼女に勢いよく抱きつかれた私は 背中から倒れ込んでいた

そう･･･

何も気にしないで

貴方までいなくなってしまったら もう痛みも何も感じられない

だから･･･

ずっと私の傍にいて欲しい

ｷﾞｭｰ

私は倒れ込んだまま彼女を抱き締めた

打ち所が悪かったのか 背中が少し痛むのを感じながら

でも気にならなかった

この痛みさえも 数日後にはもう居ない彼女からの 贈り物のように思えたから

どうしてこれ程までに 出会ったばかりであるはずの彼女に 執着してしまっているのか

そんなの自分でも分からないし 私が一番知りたかった

でも･･･

彼女が傍に居てくれれば どこか空いてしまった心を埋められる

そんな気がした

あぁ･･･手離したくないな

…

3日後

〜 デビルズパレス・ホール 〜

私は彼女を思い切り抱き締めた

瞳を揺らしたまま笑顔を作る 彼女の頬には涙が伝っていた

寂しさをぐっと堪え 気が緩めば滲んでしまいそうな この視界に彼女の笑顔を移した

そして･･･涙を拭い 最後に彼女の髪を編み込んであげた

…

雲ひとつ浮かばないある快晴の日

滲んだ視界を誤魔化すように笑って

私は貴女を見送った

𝐄𝐩𝐢𝐬𝐨𝐝𝐞 𝟖 𝐞𝐧𝐝.