最後に子ども達と他愛もない話をしたのはいつだっただろう?
美和子
リビングには、私の声だけ。
食卓に並べられた料理を淡々と頬張る、二人の子ども
リビングには3人いるのに話しているのは、笑っているのは私だけ
美和子
紗季
健二
美和子
箸が皿にぶつかる音がやけに大きく聞こえる
寂しい
どうしてもっと話してくれないの?
紗季は高校2年、健二は1年 二人共、中学生くらいの頃から私とあまり話さなくなった
一緒に買い物に行くこともなくなった。参観日や運動会で私が手を振っても見向きもしない
寂しい
食卓にも、賑やかな声が消えた
美和子
寂しい、寂しい…
近所の吉田さんは「思春期よ」となんでもないように言う
吉田さん
吉田さん
美和子
私には、そんなのなかった
中学時代にいじめにあい引きこもりになった時、お母さんだけは味方になってくれた
私がまた学校にいけるようにサポートしてくれたのもお母さんだった
だから私はお母さんを鬱陶しいと思ったことなんてない
吉田さんみたいに「思春期だ」って簡単に割りきることはできない
近所の山下さんは「気にすることはないわ」と言ってくれた
山下さん
山下さん
美和子
山下さん
山下さん
美和子
山下さん
山下さん
美和子
美和子
そうして私と、吉田さんも追加して後日山下さん宅を訪れた
山下さん
山下さん
美和子
美和子
山下さんは上機嫌で私達をリビングに通す
その後ろを歩きながら吉田さんが声を潜めて言った
吉田さん
美和子
確かにアロマの匂いもしてたけど、私は何より円満でとても楽しそうな食卓に心を奪われた!
山下さんの子供は二人共高校生で思春期盛りのはずなのに…!
これだ…!
私が思い描いた理想の家庭はここにある
美和子
吉田さん
美和子
山下さん
山下さん
山下さん
その日の夜
私は部活帰りの健二の首に
背後から縄をかけた
ネックレスをかけるみたいに、優しく
そして、健二の体が動かなくなるまで健二の首を縄で縛った
頭の中にあるのは山下さんの言葉だけ
山下さん
山下さん
山下さん
山下さん
山下さん
美和子
美和子
吉田さん
吉田さん
吉田さん
吉田さん
紗季
美和子
紗季
美和子
美和子
美和子
美和子
紗季
美和子
美和子
紗季
美和子
紗季
吉田さん
吉田さん
吉田さん
コメント
12件
切ない…。 親子関係が素っ気なくなるのも寂しいけど、いつまでも依存されるのも困るし…。 母親心って複雑です…。
あかいとまと🍅さん 親の心子知らず、子の心親知らずですね。主人公の美和子は人に依存しすぎたが為に壊れてしまったんです…