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夜、シャワーを浴びてリビングに戻ると、はやちんがソファに寝転がってテレビを見てた。

楓弥

……はやちん、起きてる?

颯斗

んー? 起きてるけど寝かけてた

薄目を開けたはやちんは、俺を見るなりちょっとだけ体を起こした。

颯斗

なんかあった?

俺はちょっと迷ってから、 その隣に座った。

楓弥

はやちんさ……
好きな人に、気づかれたくない気持ちって、どうやって誤魔化してた?

颯斗

……は?

一瞬、空気が止まった。

俺の言葉に、はやちんはテレビを消して、真顔でこっちを向いた。

颯斗

なに?それ、自分の話?

楓弥

……ん

颯斗

ふぅん……ふみくん?

その名前が出た瞬間、 俺は思わず睨んだ。

楓弥

なんでわかんの?

颯斗

バレバレだよ、お前

颯斗

普段、そんなしおらしくなることないじゃん

楓弥

……しおらしくってなに

颯斗

図星ってことね?

俺は頬をかきながら、目をそらした。

楓弥

わかんないんだよ。
ふみくんって優しいし、俺がテンパってても普通に受け止めてくれるけど……
それが仕事だからかもしれないし……

颯斗

それで?

楓弥

……俺、ふみくんのこと見てる時、めっちゃドキドキする

楓弥

ちょっと目が合っただけで、心臓バクバクするし

楓弥

……でも、それが恋とか、本気かって言われると、わかんなくなる

はやちんはしばらく黙ってたけど、 少しだけ笑った。

颯斗

それさ、わかんなくなるくらい気にしてる時点で、もう答え出てると思うけど

楓弥

……でも

颯斗

演技とか、ビジネスとか、いろいろ頭にあるのはわかる

颯斗

……けど、本気で誰かに惹かれる時って、そんな理屈通用しないよ

楓弥

……はやちん、昔そういうことあったの?

颯斗

……まぁね

颯斗

でも結局、気持ちから逃げると後で後悔する

颯斗

楓弥がその人のことで笑ってたり、モヤモヤしたり、ちょっとした一言で落ち込んだりしてるの見るとさ……

颯斗

もう、それ恋でしょって言いたくなる

楓弥

……恋、なのかな

颯斗

うん、多分な

颯斗

少なくとも、お前が思ってるよりずっと、ふみくんは楓弥の中ででかい存在だよ

俺は膝を抱えながら、 ポツリとつぶやいた。

楓弥

……どうしたらいいんだろ

颯斗

まずは、自分に嘘つかないこと。
相手に伝えるのは、そのあとでいい

はやちんはそれだけ言うと立ち上がって、自分の部屋に向かいながら振り返った。

颯斗

それかもう、次会った時に“目”で伝えちゃえば?

颯斗

ふみちゃんは目に出るタイプだし

楓弥

……やめてよ、からかってるでしょ!

そう言いながらも、 俺の胸の中は少しだけ軽くなっていた。

はやちん、やっぱ兄貴だわ。

そして俺は、その夜、初めて“この気持ちを認める覚悟”をちょっとだけ持てた気がした。

『ビジネスカップル戦略、?』

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