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瞳
むつみ
むつみ
瞳
瞳
瞳
むつみ
むつみ
瞳
瞳
瞳
瞳
むつみ
わたしは愛用しているSNS 「スターグラム」を開く
むつみ
むつみ
瞳
瞳
2023/03/01 サービス終了のお知らせ
突然ですが本日をもって 「スターグラム」は
経営難によりこれ以上 SNSを維持できないため
当サービスを終了させていただく 運びとなりました
ユーザーの皆様 どうかご理解いただければと思います
むつみ
瞳
瞳
瞳
むつみ
むつみ
瞳
瞳
瞳
教室のドアが 勢いよく開け放たれた
隣のクラスの リンだった
リン
リン
リン
リン
リンは怒鳴りつけるように 問いを投げかけた
瞳
瞳
むつみ
リン
リン
むつみ
むつみ
むつみ
するとリンは大粒の涙を 両目にたたえた
リン
涙が頬を伝うのを待たず
リンは教室をあとにして 走り去って行った
瞳
瞳
瞳
むつみ
瞳
むつみ
瞳
瞳
むつみ
瞳
瞳はわははと 乾いた笑い声混じりに言った
瞳
瞳
むつみ
むつみ
瞳
瞳
瞳
むつみ
その時もう一度 教室のドアが勢いよく開く
瞳
むつみ
息を切らしながら入ってきたのは 颯太くんだった
颯太
颯太
颯太
わたしは悲鳴を飲み込んで 口を手で押えた
瞳
瞳
颯太
颯太
颯太
颯太
卒業式どころではなくなった
学内にはリンの他にも
スターグラムの終了により
おかしくなってしまった 生徒がたくさんいた
もしかしたら わたしだってその一人かもしれない
いまやわたしの生きた証が すべてスターグラムにあったのだから
わたしはリンの落ちた場所を ぼうっと見つめていた
颯太
ふと後ろから 颯太くんが語りかけてきた
むつみ
颯太
颯太
むつみ
颯太くんと 並んで歩く
今日告白する予定だったのに
突然のアクシデントで 見送りになってしまった
もうすぐわたしは東京にいくのに 颯太くんとも離れ離れになるのに
大事なときに大事なことが 言えない
手を伸ばせば手が繋げる距離にいるのに
手はポケットで震えているだけだ
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
突然思いがけず 思わせぶりな言葉をかけられ 身体がはねた
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
あまりにも 予想とかけ離れていた言葉に
脱力するとともに
べつの感情がわきあがる
むつみ
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
わたしたちは学校近くのコンビニに ふらりと立ち寄った
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
2023年3月1日 サービス終了のお知らせ
当店ならびに27グループは 本日をもって経営難により
閉店とさせていただく 運びとなりました
長年にわたりご愛顧いただいた お客様に感謝いたします
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太くんはスマホを取りだし なにかを開く
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
わたしは急いでスマホを取りだし gogglesを開いてみた
2023/03/01 サービス終了のお知らせ
当検索エンジンは本日をもって 経営難によりサービス終了と
させていただきます
これまでgogglesを支えてくださった ユーザーのみなさまに
感謝いたします
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
わたしがそう言い終えて 顔を上げた時
颯太くんはいなくなっていた
むつみ
むつみ
家の中には誰もいない
むつみ
むつみ
テレビをつける
ちょうどニュースをやっていた
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
むつみ
むつみ
むつみ
わたしは画面に食い入った
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
わたしはそのよく分からない 弁明じみたものを聞かされ
見るのをやめにしようと思った
その時だった
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
するとテレビの表示がパッと変わり
こんなことが表示された
放送終了のお知らせ 当局は放送の体制が整わないため
当面放送を休止します
視聴者のみなさまには ご不便をおかけしますが
ご理解のほど よろしくお願い申し上げます
それきり チャンネルを変えても
同様にどこも 「放送休止」になっていた
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
「むつみへ」と書かれた 小さな紙が折りたたまれていた
むつみ
わたしは開いて文字を追う
むつみへ
しばらく家に帰ることはありません
お金をいくらかむつみの箪笥に 入れておいたから
食費の足しに使ってください
帰るかどうか分からないから いちおう、さようなら
母より
むつみ
むつみ
わたしは手紙を丸めて テーブルに叩きつける
深遠な孤独感に さいなまれた
むつみ
むつみ
むつみ
そのとき 外から町内放送の
鐘を模した音が 鳴り響いてきた
わたしは窓を開けた
こちらは ××市市役所です
住民のみなさまに
停電のお知らせです
当地区の電力の供給が 難しくなったため
当地区の一般家庭の 計画停電を行います
いまから5分後より 電力供給の制限を行います
住民のみなさまの ご理解ご協力を
お願いいたします
それではこれより
計画停電を開始します
むつみ
わたしと母が暮らすアパート
わたしたちの部屋は4階にある
林立するビルの明かりが
立て続けに消えて行くのがわかった
むつみ
わたしはスマホを手に取る
むつみ
むつみ
「LIME」のロゴが 表示された直後
真っ白な画面があらわれた
その画面に 灰色の文字が書いてある
2023/03/01 サービス終了のお知らせ
ユーザーのみなさまには 突然のお知らせとなりますが
当サービスは本日をもって 終了とさせていただくことになりました
経営難をはじめとした サービス終了の具体的理由については
こちらのページをご覧いただきますよう お願い申し上げます
むつみ
むつみ
そのとき 部屋の電灯が
一瞬で全て消えた
むつみ
むつみ
わたしはスマホの ライトを頼りに
ソファに疲れた身体を預けた
不気味なほど静かな夜の中
泣き声のようにパトカーのサイレンが
どこかで鳴っていた
けれどそれもどこかに遠のいていった
むつみ
颯太くんの声が 聞きたかった
どこかにいる颯太くんに会って なにか言葉が聞きたかった
それから 全ての音が消えた
その代わりに
新しい景色が 目に映りこんだ
颯太
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
そのとき 場面がぱっと変わった
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
むつみ
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
むつみ
むつみ
飛び起きたわたしは 周囲を眺め回す
むつみ
むつみ
でもあの夢が正夢だったら
テレビをつけようとする
電源が入らない
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
普通に考えればありえない たった一日で
社会全体がバラバラに なってしまうなんて
積み上げることには 時間がかかるけど
それを一瞬で 崩すことはできる
そんな言葉を思い出した
昨日のニュースで 言われていた
空虚の上に成り立っている社会 という言葉が
頭の中に浮かび上がる
そしてふと 夢で見た光景がフラッシュバックする
墜落する飛行機――
むつみ
むつみ
むつみ
人気のない不気味な町を駆け 颯太くんの家の前に立つ
でもそこには
颯太くんの姿は無かった
呼び鈴を押しても 応答はまったくなかった
当たり前といえば 当たり前なのかもしれない
颯太くんはもうとっくに 空港に行っているはずだ
空港に行けていないとしても
ここではないどこかに 行っていることは確かだ
むつみ
むつみ
むつみ
あの日
颯太くんと帰った道を歩く
こんなことになるなら
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
でもそれよりも この世界にいるわたしは わたしたちは
「壊れる」ことを 望んでしまったのだろうか
どうして
そう思っていた時
ふと誰かが わたしの肩を掴んだ
むつみ
振り返るとそこには
ありえないはずの 人物がいた
颯太
むつみ
わたしの心の底から
安堵と驚きが 湧き上がってきて
颯太くんに握られた 両手が震える
颯太
颯太
颯太
颯太
わたしは大きく頷いて 颯太くんの手に導かれた
颯太
颯太
颯太
わたしは颯太くんに いだかれている
今しか言えないと思った
だから言った
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
わたしのからだは 冷たいフローリングに転がっていた
また夢をみていたようだった
むつみ
むつみ
むつみ
わたしはあることに気づいた
むつみ
むつみ
むつみ
そう思った矢先
部屋の電気がすべて復旧した
テレビの電源も入った
むつみ
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
アナウンサー
わたしは画面に両手を当てて
小さく口を開いた
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
むつみ
わたしには 自分を落ち着けるための
手段などない
ただ理由のない 「颯太くんは死んでない」を
心の中で復唱するだけだった
むつみ
むつみ
だが疲弊しきったわたしには 颯太くんの居場所が
遠い、遠い青空の向こうに あるとしか思えなかった
短絡的な思考では 手っ取り早い方法にしか
たどり着けない
けれど それだけしかない気がした
むつみ
わたしはよろよろと
キッチンに向かった
引き出しから尖った包丁を 取り出して
自らの首筋に
刃先を向けた
むつみ
むつみ
むつみ
目を閉じる
だが
できなかった
むつみ
むつみ
包丁が床に カランと転がった
外に出てみた
既に日の暮れちかくだった
見上げると
2023/03/02 サービス終了のお知らせ
空にそう書かれているように見えた
むつみ
むつみ
うずくまって 膝を抱えた
視界は闇にとざされた
そのとき 誰かの声が聞こえた気がした
颯太
颯太
颯太
むつみ
わたしは立ち上がると
周囲を見回した
誰もいない
声が聞こえた気がしただけだろうか
そう思ったとき
ぱっと視界が暗転した
でも それは完全な闇ではなく
暖かな闇だった
颯太
わたしは目を覆うそれを しっかり両手に握りしめ
闇から自らを ゆっくり解き放った
颯太くんはひょこっと わたしの正面に回った
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太くんは 両腕でわたしをやさしく
包み込んだ
わたしは颯太くんの胸を 叩きながら
赤ちゃんのように 大声で咽び泣いた
颯太
颯太
颯太
颯太
わたしは火照った顔を 颯太くんに向けて
しっかりとその目を見た
むつみ
むつみ
むつみ
そう言いかけたとき 颯太くんはわたしを
痛いほどきつく抱きしめた
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
颯太
わたしは また大声で泣いた
そして颯太くんに 負けないほど
強く颯太くんを抱きしめた
それから数時間が経った
颯太
むつみ
颯太
颯太
むつみ
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太
むつみ
むつみ
颯太
颯太
颯太
颯太と 手を繋いで歩いている
颯太
その手がぐいっと引かれた
颯太
むつみ
颯太
颯太
わたしは颯太に促され
その張り紙の 文面を目で追った
2023/03/02 サービス終了のお知らせ
本日をもちましてレールウェイ中洲は 電力供給再開の目処が立たないため
誠に勝手ながら 無期限の運休とさせていただきます
ですが
他のサービスも 順次停止となる中
この事態にあって 生きるという選択をされた
みなさまひとりひとりを
わたしたちがいつか その背を押せるよう
全社員一丸となって 復旧にあたりたいと存じます
われわれの長い旅の先で 世界に再び光が差し込むことを
ともに祈りましょう
われわれに課せられた もっとも重要な使命は
生き延びて 明日を見ることだと
信じてみませんか
この状態が長く続けば
狂いはじめた世界は きっと破滅するだろう
最初は夢だったらいいのにと 願っていた
でも これまで通りの生活では
決して手に入れられなかったものが いまとなりにある
だから ほんとうの終わりがくるときまで
わたしはこの日々を 大事にしていこうと心に決めた
むつみ
颯太
むつみ
むつみ
そしてわたしと颯太は 延々とつづく道を
歩き続けた
どこまでも終わりの来ない未来を
密かに願いながら――。
Fin.
最後までお読みくださり ありがとうございました
この物語は フィクションです
本作を この3月に新たな門出に立つ
すべての人々に捧げます