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獅子頭連のラムネ屋さん

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獅子頭連のラムネ屋さん

1 - 獅子頭連のラムネ屋さん

♥

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2025年03月24日

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獅子頭連・"オリ" 前。

心地よい風とともに、 遠くからかすかに 風鈴の音が聞こえる。

照りつける太陽。

滲む汗。

十亀 条

…夏だねぇ

獅子頭連 副頭取・十亀 条は、 呑気にそんなことを考える。

十亀 条

よい、しょ…
この辺でいいかなぁ

ドカッ、と大きな音をたてて その手から下ろされたのは、 クーラーボックスである。

獅子頭連メンバーA

こんにちは、十亀さん

獅子頭連メンバーB

どうしたんすか?
このでっかい
クーラーボックス…

十亀 条

あぁ、こんにちはぁ

十亀 条

これ?これはねぇ…

十亀 条

ラムネだよぉ

獅子頭連メンバーA

ラムネ…?
って、めちゃくちゃ
ありますね…

十亀 条

そぉなんだよ、
昨日銭湯の人がさ、
皆で飲んでって言って
オレにくれたんだぁ。

獅子頭連メンバーB

へぇ…

十亀 条

君たちも、一本どう?

獅子頭連メンバーA

いいんすか!

獅子頭連メンバーB

あざす、十亀さん!

十亀 条

お礼はオレじゃなくて
銭湯の人たちに、だよ

獅子頭連メンバーA

そうっすね…!
…今度またあそこの
銭湯行くか!

獅子頭連メンバーB

だな!

うんうん、と 十亀はゆっくり頷く。

獅子頭連メンバーB

じゃ、オレたち
行きます

十亀 条

はぁい、ばいば〜い

十亀の振った手が下りる頃には、 二人は見えなくなっていた。

ラムネをもらった二人は、 呑み屋だらけの道を歩いていく。

獅子頭連メンバーA

しっかしよぉ…

獅子頭連メンバーB

? なんだよ

獅子頭連メンバーA

十亀さんだよ

獅子頭連メンバーA

あの人…

獅子頭連メンバーA

なんかこう、
柔らかくなったよな

獅子頭連メンバーB

は?

獅子頭連メンバーA

いや物理的に、じゃ
ねぇからな??
こう、言葉?態度?
っつーか…分かるか?

獅子頭連メンバーB

あー

獅子頭連メンバーB

それはオレも思うかも

獅子頭連メンバーA

だろ!?

獅子頭連メンバーA

前の十亀さん、
そりゃ強いもんは
強かったけどよ…

獅子頭連メンバーB

なんか、楽しく
なさそうだったよな

獅子頭連メンバーA

それだ!

獅子頭連メンバーA

オレたちにあんな顔、
しなかったなって
思わねぇ?

獅子頭連メンバーB

つまりさ、

獅子頭連メンバーB

十亀さんは今

獅子頭連メンバーB

楽しいんだろ?

獅子頭連メンバーB

…オレも、今の
獅子頭連、楽しいよ

獅子頭連メンバーA

…だよな

獅子頭連メンバーA

オレも

“前” の獅子頭連。

あの時は、己の『皮』が いつ剥がされるか分からない、 そんな恐怖がいつもそばにいた。

弱肉強食、という言葉が よく似合う。

恐怖により縺れた四肢は、 あらぬ方向へと進みはじめた。

しかし…

二人が去ってから間もなくして、 客は訪れた。

犬上 照臣

十亀さーーーん!

十亀 条

あぁ、犬上だぁ

十亀 条

やっほ〜

犬上 照臣

十亀さん、
こんなとこに
しゃがみこんで
どうしたんすか?

十亀 条

ん〜?今ね、
ラムネ売ってんのぉ

よいしょ、と十亀は腰を起こす。

十亀 条

犬上も、一本どう?

犬上 照臣

うおー!いいんすか!
あざーす!!

ラムネを受け取った犬上は、 力いっぱい栓の部分を 捻りはじめた。

十亀 条

えっ

犬上 照臣

犬上 照臣

あかないっす!

十亀 条

だろうねぇ…

十亀 条

ほら、貸してごらん

半ば呆れつつ、十亀は ラムネを受け取り開栓した。

ポン、と心地よい音がする。

犬上 照臣

おぉーー!
そうやるんすね!

犬上 照臣

十亀さん、
スマートっす!!

十亀 条

すまーと…かは
分かんないけどね…
はい、どーぞぉ

犬上 照臣

あざす!!!

十亀 条

元気がいいねぇ〜

十亀 条

(ラムネを捻って
あけようとする人、
いるんだなぁ…)

近い未来もう一人見ることに なるのを、この時の十亀は まだ知らない。

犬上 照臣

あっそうだ!
十亀さん十亀さん、
ビッグニュースっす!

十亀 条

犬上 照臣

佐狐さんなんすけど…

十亀 条

佐狐が…?

犬上 照臣

実は…

犬上 照臣

めっっっちゃ
甘党らしいっす…!

十亀 条

…へぇ〜…

初耳だ。

しかし何ともコメントしづらい ビッグニュースである。

十亀 条

それは…どこで
聞いたの?

犬上 照臣

聞いたというか…

犬上 照臣

佐狐さんが一人で
ケーキ屋行くのを
見たんすよ

犬上 照臣

で、声かけたら

十亀 条

(かけたんだ…)

犬上 照臣

ちょー怖い顔で
皆には秘密だって
どやされました!

十亀 条

十亀 条

それ、オレに言っても
いいやつなの…?

犬上 照臣

え?…あっ…

どうやら今気づいたようだ。

犬上 照臣

でも、なんで甘党なの
隠すんすかね??

犬上 照臣

誕生日とかにケーキ
もらえるかもしんない
じゃないすか!だから
皆に知ってもらってた
ほうがいいなーって
思うっすよオレは!!

犬上 照臣

あ、佐狐さんの
誕生日は12月の
2日っす!!

十亀 条

よく知ってるねぇ…

犬上 照臣

オレが聞いたら
教えてくれたんす!

よほどしつこく聞いたのだろう。

まぁ佐狐の後輩には そのくらい図太いやつが 必要だよね、と十亀は苦笑する。

犬上 照臣

そーだ、オレ
佐狐さんに甘いの
買ってみようと
思ってたんすよ!

十亀 条

行動力の化身だねぇ

犬上 照臣

ってなわけで、
オレ行きます!

犬上 照臣

ラムネ、ちょー
うまかったです!

走り出しながら手を振り、 犬上は颯爽と姿を消した。

とりあえず、佐狐の誕生日には 甘いものを買おう。

ぼんやりとそんなことを考え、 十亀は再びしゃがみこんだ。

1時間くらい経っただろうか。

“オリ” の落書きをぼーっと 見つめていた十亀のもとに、 今度は二人の客が訪れる。

有馬 雪成

よぉ十亀

鹿沼 稔

何してるの?

十亀 条

あぁ、有馬に
鹿沼じゃん

十亀 条

ラムネ売ってるよ〜
一本どうぞぉ

有馬 雪成

おっ、サンキュな

鹿沼 稔

ありがとね

二人は同時にポン、と音をたてて ラムネをあけた。

有馬 雪成

…くぅ〜!

鹿沼 稔

なんか、久々に飲んだ
気がするよ

十亀 条

そっかそっかぁ、
喜んでもらえて
何よりだよぉ

有馬 雪成

十亀はラムネ
好きだもんな

有馬 雪成

あ、でもラムネ以外も
あるといいんじゃね?

鹿沼 稔

そうだね!コーラとか
ジュースとか?

十亀 条

いいねぇ、今度買って
冷やしておくよぉ

鹿沼 稔

やった!

有馬 雪成

そうだ十亀、
今日も銭湯で将棋
相手してくんねぇ?

十亀 条

いいよぉ、
負けないけど

有馬 雪成

お前強いんだよな〜

鹿沼 稔

将棋ってそんなに
楽しいの?

十亀 条

楽しいよぉ、
鹿沼にも今日
教えようか?

鹿沼 稔

いいの!?
それなら、やってみよ

有馬 雪成

ルール覚えても、
お前は弱いと思うぞ笑

鹿沼 稔

えっ、有馬ひどい!
絶対見返してやる…

鹿沼 稔

十亀、ボク絶対
有馬より強くなる
から!

十亀 条

うんうん、
じゃあスパルタで
教えちゃおうかなぁ

有馬 雪成

十亀のスパルタは
ぜってー怖えぞ、
いいのかぁ鹿沼?

鹿沼 稔

…っいいもん!
よろしく、十亀!

十亀 条

はぁい、じゃあ
あとでね〜

有馬 雪成

じゃあな!

鹿沼 稔

ラムネありがとー

タタタタタ…

有馬と鹿沼が去ってすぐ、 その足音は聞こえた。

佐狐 浩太

…っ!

佐狐 浩太

十亀さん…っ!!

十亀 条

あら?佐狐じゃん

十亀 条

どうしたのそんな
息切らして

十亀 条

おまけにそんな
たくさん荷物抱えて…

佐狐 浩太

アイツ、見ません
でしたか…!?

十亀 条

アイツ…?

佐狐 浩太

犬上です…!

十亀 条

犬上?

十亀 条

犬上は、結構前に
ここでラムネ飲んでた
けど…なんで?

佐狐 浩太

…!

佐狐 浩太

ア、アイツ…
変なこと言ってません
でしたか…?

十亀 条

ん〜…佐狐が甘党な
こととか一一一

佐狐 浩太

〜〜クソッ!

佐狐 浩太

そ、その、十亀さん、
それはですね…

十亀 条

え〜犬上も言ってた
けど、それそんな
恥ずかしがることじゃ
ないと思うよ〜?

佐狐 浩太

それはっ…そうかも
しれないですけど…

佐狐 浩太

でも!コレは嫌です!

そう言って佐狐は持っていた荷物を 十亀の目の前に突き出した。

十亀 条

おぉ…

十亀 条

どうしたのそれ

佐狐 浩太

アイツがオレがその…
スイーツが好き、って
ことを周りのやつらに
言いふらしてて

佐狐 浩太

聞いたやつらが
オレにくれた、
やつです…

十亀 条

あはは、そっか、
そういうことかぁ

佐狐 浩太

笑うとこじゃない
です…!

佐狐 浩太

その都度対応が
面倒くさいんですよ…

十亀 条

まぁまぁ、そうだ、
佐狐もラムネいる?

佐狐 浩太

…っ…もらいます…

十亀 条

はぁい、どうぞ

佐狐 浩太

ありがとうございます

佐狐 浩太

十亀 条

佐狐 浩太

すみません、これ
どうあけるんですか

十亀 条

じゃ、オレあけるよ

佐狐 浩太

…すみません

十亀は佐狐から受け取ったラムネを 犬上曰く「スマートに」開栓した。

十亀 条

そっかぁ、結構
知らないやつ多いねぇ

佐狐 浩太

佐狐が首を傾げる。

十亀 条

ラムネのあけ方だよ

十亀 条

さっき犬上なんか
捻ってあけようとして…

佐狐 浩太

佐狐 浩太

そうだ、アイツ…!
すみません十亀さん
オレ行きますね

佐狐 浩太

ラムネ、ありがとう
ございました

そう言い残して、佐狐は再び 走っていった。

十亀 条

あんまり怒らないで
あげなよ〜…って、
もう聞こえないか…

日が沈み始めている。

十亀 条

…そろそろ本日は
店じまいかなぁ

滲んだ汗を腕で拭い、 十亀はそう思った…

そのところに。

ダダダダダ…

先程の佐狐よりも力強いが、 どこか軽やかな足音が聞こえた。

十亀 条

(…ちょーじかなぁ)

十亀の予想通り、少し遠くの方に 獅子頭連 頭取・兎耳山 丁子が 走っているのが見えた。

十亀 条

…あ

兎耳山 丁子

兎耳山も十亀に気がついたようだ。

こちらに走ってくる。

そのまま話しかけてくる、 と思いきや。

軽快な足取りで、ぴょん、と 十亀の背後を取った。

十亀 条

あれ?

兎耳山 丁子

だーれだ!

十亀 条

…ちょーじかなぁ

兎耳山 丁子

亀ちゃん、
だいせいかーい!

十亀 条

普通、それ正面から
来た人はしないよ?

兎耳山 丁子

わかんないと
思ったのに…

十亀 条

まぁまぁ、ちょーじも
ラムネいる?

兎耳山 丁子

くれるの!?
ありがとー!

兎耳山はもらってすぐ ポン!と大きな音を立てて ラムネを開栓した。

兎耳山 丁子

ぷはー!

兎耳山 丁子

やっぱラムネは
瓶だよね!

十亀 条

そうだよねぇ〜

兎耳山 丁子

亀ちゃん今日ずーっと
ここにいたの?

さりさりさり…

十亀 条

そぉ、ここで
ラムネ売ってた

十亀 条

昼からだけどねぇ、
ず〜っといたよぉ

十亀 条

でもそろそろ本日は
店じまいかなぁ、って
思ってたところ

兎耳山 丁子

そっか!

兎耳山 丁子

明日もやる!?
オレもやりたい!!

さりさりさり…

十亀 条

まだラムネ残ってるし
明日もやろうかなぁ

十亀 条

有馬と鹿沼に、
他のも飲みたいって
言われたしぃ

兎耳山 丁子

他の!?じゃあさ、
甘いのも売る!?

さりさりさり…

十亀 条

そうだねぇ、今日の
帰り、一緒に買い出し
行こうかぁ

兎耳山 丁子

行く!!!

さりさりさり…

十亀 条

…ところでさ

十亀 条

それ、ずっと
やってるの?

兎耳山 丁子

え?

さりさりさり…

兎耳山はラムネを飲み干してから ずっと、十亀の襟足部分を 触っていた。

十亀 条

それ楽しい?

兎耳山 丁子

楽しい!!

十亀 条

そっかぁ

十亀 条

でも、そろそろ
かゆいかなぁ

兎耳山 丁子

えーっ

兎耳山 丁子

じゃあやめる…

十亀 条

またあとでねぇ

そう言いながら、 十亀は自分の襟足部分に触れる。

風鈴とのタイマン後、 髪を切った。

縛るものは、もう何も無いから。

兎耳山 丁子

亀ちゃん、その髪型
すごい似合ってるよ!

十亀 条

…そぉ?

兎耳山 丁子

オレも切りたい!

十亀 条

えっ

兎耳山 丁子

ハサミもってくる!

十亀 条

えぇ!?

ちょーじ待って!という十亀の 引きとめも虚しく、兎耳山は 消えていった。

兎耳山 丁子

もってきた!

ハサミを持った兎耳山が ぴょん、と跳んでくる。

兎耳山 丁子

どうやるのこれ?

兎耳山 丁子

んーこんな感じ?

そう言いつつ、兎耳山は 慣れない手つきで自分の頭に 刃を向ける。

十亀 条

あああ、ちょーじ!
オレがやる、やるから
ちょっとやめて!!

兎耳山 丁子

え?

兎耳山 丁子

やってくれるの!?

十亀 条

も〜、ちょーじは
危なっかしいよ…

十亀 条

やってあげるから、
ほら、こっち来て

兎耳山 丁子

うん!

兎耳山がまたぴょん、と 跳んで十亀の前に来る。

十亀 条

…正面じゃ切れないよ

兎耳山 丁子

! そっか!

兎耳山 丁子

えへへ〜

楽しそうに笑いながら、 兎耳山は十亀に背を向けた。

十亀 条

言っておくけどオレ、
やったことないからね

十亀 条

オレみたいな髪型は
難しいよ?

兎耳山 丁子

うん!知ってる!
でもオレも切る!

十亀 条

そこまで言うなら…

十亀は、手入れされていない 兎耳山の髪の毛に刃を入れた。

チョキ、チョキ…

十亀 条

…なんでいきなり
切りたい、って
思ったの?

兎耳山 丁子

んー?

話しかけられた兎耳山は、 振り向こうとする。

十亀 条

あ〜危ないから!
じっとしててよぉ

兎耳山 丁子

分かった!

兎耳山 丁子

で、なんだっけ

十亀 条

ちょーじはどうして
髪の毛切りたいの?

兎耳山 丁子

そうそれ!

兎耳山 丁子

でもそれ、前に
亀ちゃんがオレに
言ってたじゃん

兎耳山 丁子

オレもそれと
一緒だよ!

十亀 条

十亀 条

あ、もしかして…

縛るものは、もう何も無いから。

十亀 条

ふふ、そっかぁ、
そうだよねぇ

兎耳山 丁子

? うん!

十亀 条

…はぁい、こんな
感じかな?

兎耳山の襟足部分の髪の毛を 切り終えた十亀は言った。

兎耳山は、自分の襟足部分に 手を伸ばす。

兎耳山 丁子

兎耳山 丁子

亀ちゃん、上手!

十亀 条

そぉかなぁ

兎耳山 丁子

そうだよ!

兎耳山 丁子

オレ、めっちゃ
変わった気がする!

十亀 条

あんま切るとこ
なかったから、
そんなに変化は
ないけど…

兎耳山 丁子

ううん!
だってオレ…

兎耳山 丁子

前みたいな
髪型じゃない?

“前” 。

間違いを犯す、“前” 。

獅子頭連が腐る、“前” 。

兎耳山の髪の毛が 伸びていく間に、

何枚も、仲間の『皮』を剥いだ。

四肢は縺れていった。

十亀 条

…そうだね、前みたい…

しかし。

兎耳山 丁子

オレ、変われたと
思うんだ!

頭は、前を向いている。

四肢は、正常に動き始めている。

十亀 条

(この先も)

十亀 条

(きっと、大丈夫だ)

獅子はまた、歩き出した。

『力の絶対信仰』のもとに。

十亀 条

ちょーじ、
これ片付けたら一緒に
銭湯行く?

兎耳山 丁子

行く行く〜!!

この作品はいかがでしたか?

92

コメント

3

ユーザー

出来たら続き待ってます❀.(*´▽`*)❀.

ユーザー

天才ですか✨天才(▭-▭)✧✨

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