ある冬の寒い日、小学校低学年ぐらいの子供達3人が、木の枝に作られたブランコで遊んでいた
結月
きゃはは、わたしが1番に乗るんだから
泰一
俺が1番!
洸
結月の父さんが、木にロープを結んで作ってくれたブランコなんだから結月が1番でいいだろう
結月
やったー
泰一
ちぇっ
洸
結月も30秒数えたら、泰一と交代するんだぞ
結月
はーい
泰一
きっちり30秒だぞ、ズルはなしだからな!
結月
いーち、にー、さーん……
昼休み、木枯しの舞う中庭を見つめながら、泰一はコンビニで買ったパックの紅茶を飲んでいた
雄馬
おお、泰一、今日は教室でメシ食ってたのか
泰一
おお、雄馬か
雄馬
ストロー噛みすぎてつぶれてんじゃん
雄馬
何、黄昏てたんだ?
泰一
ううん、別に……
雄馬
おっと、中庭にいるの結月ちゃんじゃね?
雄馬
寒いのにあんなところで弁当食べてるよ
泰一
……
雄馬
ひょっとして、泰一くん、結月ちゃんのこと見つめてた?
泰一
ばか、そんなんじゃねーよ
雄馬
あ〜あ、照れちゃって
雄馬
泰一って、あの結月ちゃんと幼馴染なんでしょ?
雄馬
いいよな〜、頭の良い美人の女子が幼馴染なんて
泰一
最近じゃもう全然喋ってないけどな
雄馬
でも子供の頃は一緒にお風呂入ったりとかしてたんじゃない?
泰一
……
雄馬
羨まし〜!!
泰一
……
雄馬
それで、何で今日は1人でメシ食ってたんだよ?
雄馬
いつもは俺らと自習室で食ってるだろ
泰一
杉の木がさ、切られちゃうんだと
雄馬
杉の木?
泰一
ああ、俺と結月とあともう1人、仲良い兄ちゃんが近所に住んでたんだけど
泰一
近くの公園に面白い形をした杉の木があって、そこにブランコ作って遊んでたんだ
雄馬
へぇ〜、幼馴染って感じのエピソードだな
泰一
その思い出の詰まった木が切られちゃうらしい
雄馬
それで落ち込んでたのか
泰一
ああ、まあな
雄馬
その木、買収できねぇのかな
泰一
買収?
雄馬
そう、その木を買い取って、伐採するのを中止させるの
泰一
そんなことできるわけねぇだろ
泰一
俺達まだ高校生で金なんか持ってねぇし、受験だって控えてるし
雄馬
でもさ、かっこよくない?
雄馬
幼馴染との思い出の木を守って告白するの、かっこよくない?
泰一
告白って、誰が?
雄馬
泰一くんに決まってるじゃ〜ん
泰一
俺が結月にか?
雄馬
まだ結月ちゃんって言ってないよ
泰一
……はめられた
雄馬
やっぱり、好きなんじゃん
泰一
ほっとけ
雄馬
ほっとけねぇよ、親友がそんなせつなそうな顔してたらさ
泰一
俺、そんなに変な顔してたか?
雄馬
うん、もう少女漫画のヒロインみたいな顔してたよ
泰一
俺、少女漫画読んだことねぇけど
雄馬
俺は姉ちゃんがいるからたまに読む
泰一
はぁ〜
雄馬
声かけてみたら?
雄馬
好きなくせに、ずっと喋ってないんでしょ?
泰一
おう……
泰一
ちょっと、行ってくる
雄馬
ヒュー、アオハル〜
泰一は教室を飛び出し、階段を下りると、寒空の下駆け出した