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クリスマスイブのデパートなんて 一人で来るものじゃない
周りは幸せそうなカップルばかり
私はため息を一つついて エスカレーターを降りようとした
その時だった
おもちゃ売り場で、眉間に皺を寄せて悩んでいる男性が目に入った
背格好、立ち方……
それにあの頼りなさそうな、あの顔
まさか
唯
心臓がドクンと大きく跳ねた学生の頃、ずっと目で追っていた人
私の初恋
まさかこんなところで会えるなんて
でも、私なんかのこと もう忘れてるかもしれない
私が立ち止まって見つめていると 視線を感じたのか彼が顔を上げ 目が合った
時が止まった気がした
話しかけたい
でも、なんて?
「久しぶり」なんて普通すぎる? もし冷たくされたら?
頭の中でグルグルと考えが巡るけれど、足は勝手に彼の方へと動いていた
唯
口をついて出たのは、昔と同じ ちょっと乱暴でぶっきらぼうな挨拶
あぁ、また可愛げのない 言い方しちゃった
もっと女の子らしく「小松君?」とか言えばいいのに
唯
心にもないことを聞く
もし「そうだよ」って言われたら、笑顔で祝福できる自信なんてないのに
心臓の鼓動が早くなる 「お願い、違うと言って」
小松
彼は焦って訂正した その瞬間、全身の力が抜けるほどホッとした
よかった 彼、フリーなんだ
でも、これ以上ここにいたら、私の好意がバレてしまいそうだった 高鳴る鼓動を悟られないように、私はわざとサバサバと笑ってみせた
唯
唯
本当は行きたくない もっと話したい でも、引き止める勇気がない 私は背中を向けて歩き出し 一歩、二歩 遠ざかる靴音が 自分の心臓の音みたいに響く
唯
小松
背後から聞こえた声に 私は思わず立ち止まった
幻聴かと思った
でも、確かに彼が私を呼んでいる
嬉しくて、泣き出しそうで 必死に喉の奥の震えを抑え込んだ
唯
いつもの強気な私からは想像もつかない、小さな声しか出せなかった
あの日から、私たちの関係が始まった
最初の食事なんて、もう悲惨だった
本当は「ずっと好きだった」って言いたいのに目の前の彼が眩しすぎて 言葉が出てこない
彼もなんだか気まずそうで 会話は途切れ途切れ
唯
不安で、手元の箸袋を何度も折り曲げてごまかした
でも、帰り際に彼が言ってくれた 「また会お」の一言が、その不安を全部吹き飛ばしてくれた
それから一年 友達以上恋人未満の関係が続き、私の「好き」は募るばかりだった
そして巡ってきた冬
イルミネーションの下 二人で歩いている時 彼が足を止めた
真剣な眼差し
汗ばんだ手
その雰囲気で、何が起きるのか予感して、私は息を呑んだ
小松
その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸がプツンと切れた
学生の頃、教室の隅から彼を見ていた私
再会した日、背中を向けて祈っていた私
ずっと臆病で震えていた私
すべての私が報われた気がして視界が滲んだ
小松
小松
涙が止まらなかった
カッコ悪い もっと可愛く「はい」って言いたいのに、顔はぐしゃぐしゃだし 涙で化粧も落ちてるはずだ
でも、もう強がるのはやめよう
唯
精一杯の憎まれ口は、震えていた
私は彼の胸に飛び込んだ
温かい
ずっと触れたかった温度が 今、私を包んでいる やっと言えた気がした 言葉にはしてないけれど この涙で、この温もりで
(私も、ずっとずっと大好きだったんだよ)