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朝日が障子の隙間から差し込む。
鳥の声が遠くで聞こえていた。けれど、にゃぽんの心には何の安らぎももたらさなかった。
昨夜――日本は、何も話してくれなかった。
「疲れてるから、また今度ね」と優しく言われたけど、その優しさがむしろ苦しかった。
にゃぽん
日本が出勤して家を出たのを確認すると、にゃぽんはすぐに立ち上がった。
心臓がドクンドクンと鳴っていた。
にゃぽん
走るように和室へ行き、押し入れの戸を開け放つ。
にゃぽん
にゃぽんは泣きそうな顔で、押し入れの中の箱や包みを手当たり次第に引っ張り出していく。
衣類、古びた巻物、謎の鉄箱、使い古された風呂敷……。
埃でむせながらも、それでも手を止めなかった。
にゃぽん
そして、ふいに何かがひらりと落ちた。
白黒の、小さな写真。角は擦れていて、紙は黄ばんでいた。
にゃぽんは、震える手でそれを拾った。
にゃぽん
それは、軍服姿の人物が一人、立っている写真だった。
けれど――顔の部分だけが、見事に破り取られていた。
にゃぽん
でも、見た瞬間、なぜか胸がぎゅっと締めつけられた。
“この人が……父だ”――そんな確信にも似た感覚が、にゃぽんの中に湧いてきた。
顔がないのに、どうしてそんなふうに思えるのか自分でも分からない。
でも、心のどこかが確かに叫んでいた。
にゃぽん
(父親…?)
写真の隅に、薄く、かすれた文字があった。
にゃぽんは光に透かして、必死に読む。
にゃぽん
叫ぶように怒鳴ったあと、言葉が途切れた。
にゃぽん
大粒の涙が、ぽろぽろと畳の上に落ちていった。
何がこんなにも自分を駆り立てるのか。
なぜここまで――“知りたい”と願ってしまうのか。
でもそれは、理屈じゃなかった。
本能だった。魂の奥からの叫びだった。
日は傾き、夕焼けが障子に影を落とす。
にゃぽんは、散らかった部屋を急いで片付けた。乱れた箱、ばらばらの中身。
全て元通りにしまい、唯一の手がかり――顔のない写真だけをポケットに入れた。
日本
日本が帰ってきた。
昨日の件で、怒っているかもしれない――そう思ったけど、彼の声はいつも通りだった。
にゃぽん
いつもの日常。いつもの夕食。たわいもないテレビの話。
でも、そのすべての下に、にゃぽんの胸にはずっと重たい感情が横たわっていた。
夜。
ベッドの上で、にゃぽんは小さな写真を握りしめていた。
にゃぽん
写真に問いかける。でも、返事があるはずもない。
天井を見上げる。
本当の父親を知りたい。
けれど、その気持ちは、誰かを悲しませてしまうかもしれない――それも分かっている。
日本も、台湾も、苦しそうだった。
にゃぽん
もう、何が正しいのか分からなかった。
でも、涙は止まらなかった。
にゃぽん
自分の始まりを、自分の“根っこ”を、確かめたい。
ただ、それだけなのに。
にゃぽんは、顔のない写真を胸に抱きしめて、眠りについた。
(つづく)