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殺戮ホテルの案内人

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殺戮ホテルの案内人

8 - 殺戮ホテルの案内人 第8話

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2019年07月01日

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紳士

おおお!お会いしたかったですぞ!

ナツキ

さっきのおじさん…!

私の目の前には、 マッサージ師によって生首状態になった紳士がいた。

相変わらず頭部だけで、 そこから腕が生えている。

紳士

やぁやぁお嬢さん!

夫人

どなた?

その隣にいるのはふっくらとした体型の女性。

カールした金色の髪で片方の目は隠れ、 高級そうなドレスを身にまとっている。

紳士

先ほど少し話をしたお嬢さんだ

紳士

エレベーターが停止したのを教えてくれたんだよ

夫人

あらそうなの!

紳士

こちらうちの妻です

夫人

よろしくお願いしますね

夫人

それにしても可愛らしいお嬢さんね

夫人

でもウチの人を誘惑してはダメよ?

ナツキ

え?

紳士

こらお前、

紳士

そんなことを言ったら失礼ではないか

夫人

でもあなた…

夫人

私、心配で心配で

夫人

だってあなたはとても魅力的でしょう?

紳士

確かにそうだが

夫人

今だって、私がいないところで

夫人

このお嬢さんと二人で話していたなんて聞いたから、

夫人

この細い身が壊れそうなくらい辛くて

紳士

はっはっは、バカだな

紳士

私がお前以外の女性に目移りするわけないだろ

夫人

あなた…!

夫人は、バスケットボールサイズの紳士を強く抱きしめた。

私は思わず目を背ける。

紳士

おっと失礼

紳士

少々刺激が強かったですかな

ナツキ

い、いえ…

ナツキ

(早く!早く39Fに!)

紳士

ところでお嬢さん

紳士

どうです?死ぬ気になりましたか?

ナツキ

いや私はまだその…

紳士

死は良いですぞぉ!

紳士

我々と死後の世界を満喫しましょう!

ナツキ

っていうことは、

ナツキ

奥さんも既に?

夫人

えぇ、もちろん!

夫人

ほら!

夫人が自らのコートをめくる

ナツキ

!?

彼女の腹部には一切の肉がなく、

ガイコツのように骨だけであった

紳士

だいぶ体重落ちたんじゃないか?

夫人

その通りよ、あなた

紳士

私も肩こりから解放された

紳士

いやぁ、死は素晴らしい

夫人

本当にそうね!

そう言いながら夫人は髪をかきあげると、 今まで隠れていた右目が露わになる。

いや、正確にはそれは「右目があった場所」だった。

ナツキ

(空洞…!)

ナツキ

(あ、もしかして)

ナツキ

(オボロさんが最初に持っていたのって)

ナツキ

(この人の目?)

紳士

どうです?お嬢さん

紳士

我々を見て死ぬ気になりましたでしょう?

ナツキ

いや、えっと、まだしばらくは良いかなって

紳士

…死ぬのが嫌だと?

紳士

まだそんなことを仰るのですか!?

バチッ!

夫人が階数ボタンを勢いよく押した。

エレベーターは今いる階で停止する。

夫人

ちょっと!

夫人

聞きました、あなた?

紳士

あぁ由々しき事態だ

ナツキ

えっとあの!

紳士

これは説明するしかないな!

ナツキ

はい?

夫人

私ね、死んでみて分かったの

夫人

生きていた頃、私たちは色々なものに囚われていた

夫人

肉体に囚われ、

夫人

そして愚かな考えに囚われていた

紳士

死はそれらの鎖を

紳士

断ち切ってくれるのです

夫人

ね?死にたくなったでしょ?

夫人

死にたいでしょ?

ナツキ

いやでも

ナツキ

私、双子の妹が現世にいて!

ナツキ

その子を置いておけないんです

夫人

現世での血筋なんて

夫人

さしたる問題ではありませんわ

紳士

その通り!

紳士

たまたま同じ家庭で生まれただけ

紳士

それもまたあなたを縛る鎖です!

紳士

どうだろう?

紳士

我々でこのお嬢さんを解放してあげるのは?

夫人

それが良いわ!

ナツキ

あ、でも!

ナツキ

魂になるには、

ナツキ

コンシェルジュさんが私を殺さないとダメなんですよね!

紳士

ですからこのままあなたを、

紳士

コンシェルジュのもとに連れて行きましょう

ナツキ

あ、じゃあヨミさんのところに!

夫人

そうだ!

夫人

私を担当してくれたオボロさんが良いわ

夫人

彼、とっても仕事が早かったもの

紳士

そうだな、そうしよう!

ナツキ

は、話を聞いてください!

夫人がサッと私の手を掴む。

それと同時に、紳士の蜘蛛みたいな手が、 私の体を這い上がってきた。

ナツキ

!?

全身に鳥肌が立つ。

紳士の手は器用に私の顔まで登ってくると、 私の口の中に入り込もうとした

ナツキ

ちょ、やめっ

紳士

お嬢さん、少々おしゃべりが過ぎるようです

紳士

魂になった我々は思考もクリア

紳士

大人しく我々に従うのが良いでしょう

ナツキ

ちょ…ふが……

夫人

素敵な光景…

旦那の腕が女子高生の口の中に入っていく様子を見ながら、 夫人はうっとりした声を出す。

ナツキ

(どうしよう!)

ナツキ

(何か!何か言わないと!)

ナツキ

う、浮気!

ナツキ

この人、浮気してましたー!

紳士

な!

夫人

…え?

夫人

ちょっとあなた!?

紳士

いやいや、待ってくださいお嬢さん

夫人が紳士を私の口からはがす。

夫人

どういうこと!?

ナツキ

さっき、マッサージ師の人と、

ナツキ

なんかそういう変なことを!

紳士

お待ちください!

紳士

いやあれは全然そういう類のものではないのだ!

紳士

もっとプラクティカルな!

夫人

あなた!

夫人

詳しく説明してください!

紳士

いや違うのだよ!

ナツキ

(今の内に…)

紳士

あ!お嬢さん!

ドアが開くと同時に、私は外に出て猛ダッシュで駆け出した。

ナツキ

(はぁ、はぁっ…!)

ナツキ

(とにかくどこかに隠れないと)

ナツキ

(エレベーターは使えないし)

ナツキ

(…あ、空いている部屋がある)

ナツキ

(2104号室…?)

ナツキ

ここは…

ナツキ

(動物の絵が描かれた絨毯に)

ナツキ

(散乱したぬいぐるみやおもちゃ箱)

ナツキ

子供部屋…かな

しかし部屋の中央にいる”それ”を見た瞬間、私の体は硬直する。

ナツキ

(な、なにこれ!?)

そこには象みたいなサイズの赤ん坊が座っていた。

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