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泡のような毎日に。

泡のような毎日に。

「泡のような毎日に。」のメインビジュアル

1

金,銀,銅

♥

5

2020年07月11日

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――さん

―ンナさん

杏奈さん!

杏奈

杏奈

あっ…

杏奈

すみません…少しぼぅっとして…

全く…あと一年しかないんだからしっかりして下さい。
一度顔を洗いに行っては?

杏奈

はい。先生。

先生

では皆さん、思い思いの作品を――

バタン

杏奈

はぁ…

杏奈

あと一年しかない、か。

廊下に出た私はその塾に似合わない重い、重い溜息をついた。

私、どうしてここに居るんだっけ。

ここは全国でも有名な進学塾「煌樹」 小学校受験を主とした塾で、より勉学に励むために、と、親が希望する場合のみだが寮もありそれこそ一日中… ちょっとした森の中だから静かで良いけれど。

まぁでも、そこまで辛くは無い。 ここは「小学校受験」を主としているからだ。

第三次ベビーブームが起きたからか、 小学校側はなるだけ『特別な』生徒を取りたがる。

だから、その『特別』になる為に 工作や科学の実験…沢山の『初めて』に触れる事で私達の才能を引き出すのだ。

だから楽しい…けれど…

もうすぐその『本番』がある。

だからか、みんなピリピリして、先生や、偶に訪れる母のプレッシャーで押しつぶされそう。

あーあ…

私、かの『少子化だ』なんて言われてた時代に産まれたかったや。

そうしたら、子どもが少な過ぎて沢山取ってくれるだろうし。

いやでも… そうしたら不便か!

…そんな事考えてたらなんかどうでも良くなってきた。

杏奈

顔洗ってないけど…まぁいいや!

ネガティブな事考えてた気がするけれど、今更そんな事気にしてたって、ね!

先生

ああ、杏奈さん。
やっと戻ってきましたね。

杏奈

えへへ、すみません!
少し眠かっただけだったみたいです!

先生

良かった。
少し暗い顔をしていたから先生心配していたのですよ?

杏奈

大丈夫!
私は明るく元気なのが取り柄だからです!

先生

…そこは「取り柄ですから」ですけどね。杏奈さん。

杏奈

あっ…
ご、あ、すみません!

先生

いえ。
では、杏奈さん、今日は工作の日なので一度席に付いて貰っても?

杏奈

はーい!

先生

杏奈さん、教卓の前に長机があるのは見えますか?

杏奈

はい!色々置いてありますね。

先生

ええ。気になるのは分かりますが一度私の話を聞いて下さいね?

杏奈

……

先生

杏奈さん?

杏奈

あっ!はい!

先生

………
今日は『ピタゴラスイッチ』です。
そこの長机にあるものを使ってなるべく複雑なものを作って下さい。
自分には難しい作業だな、と感じたら大人に言ってください。いいですね?

杏奈

はーい!
もう作っても?

先生

…ええどうぞ。

今日って工作の日だったんだ。

じゃあ外に遊びには行けなそうだなぁ…

工作の日…と言うか殆ど全てに当てはまるけど、こういった課題は時間制限が無い。…いや一応明日までだけど。

だから好きなタイミングで先生に出していいのだけれど…

その先生が一回目でOKはまずしない

だから朝課題開始しても完成は夕方…とかはザラだ

杏奈

でも今日はピタゴラスイッチ!

私が一番好きな課題!

長机には大きな板、竹、あとガチャのカプセルに、箸置き、ビニール袋に… どうしよう…沢山あって選べない。

今回はビー玉を籠に入れたらゴールだから…

杏奈

とりあえず竹は必須!

だって竹は割ったら安定した道になるしね!

杏奈

割るのはきっと先生がするし…

あとは…

杏奈

ダンボール?

とりあえず持って帰って土台作ろうっと

あ、杏奈さん

杏奈

あ!玲香ちゃん!

玲香

あっ!杏奈さん。
先生が居るから…

杏奈

あ、そうでした。
ありがとう玲香さん。

ここでは原則敬語。 でもそれじゃ色々面倒だから先生がいる時だけでもそうするんだったね

玲香

杏奈さんは今どんなアイディアが?

杏奈

私は上手く思いつかなかったので…
とりあえず土台を、と思い竹とダンボールを持ってきてみました。

玲香

思い…ああ、先生は杏奈さんに簡単な説明しかして下さらなかったのですね。

玲香

今回の作品はグループでの合作ですよ。どうやら噂では小学生クラス分けの時に重要になるとか…

杏奈

えっ!?そうなのですか?
なら急いでグループと合流を…
すみません、失礼しますね。

玲香

ええ。では、杏奈さん

杏奈

はい。玲香さん。

うわぁー! 先生!私のグループの人なら絶対もう移動してるしアイディアもまとまって制作取り掛かってるよ!もう!!

杏奈

急げ急げっ

先生に見つかったら絶対怒られるけどこれは緊急事態なんだっ!許して!

どこかな?図工室?それとも模様とか貼るためにPC室?

杏奈

それとも…あっ!

誰だこんな所に箱なんか置いたやつ!

杏奈

そんな事考える暇があったら普通に止まれば良かったのだろうけど私はそこまで頭が働かずそのまま

転んだ

ごめん大丈夫!?

…?なんでココに銀生が…?

杏奈

え?ああ、はい、大丈夫ですけれど…

だってココ檜(ひのき)使ってるし。

杏奈

その…1つよろしいでしょうか?

?どうしたの?

杏奈

その襟のリボン…
寮生ではない…ですよね?

先程も言ったが、この塾には二種類の生徒が居る。

一つが私達のような寮生。 この塾には学校のような制服があるのだが、その制服の襟に金と青のストライプが入ったリボンを付けている。

そしてもう一つが本校生。 こちらは銀と赤のストライプ。

名前的には本校生の方が偉そうだけれど、寮生は入塾テストで上位20名に入れた者のみしか入れない。

だから私達は裏で 私達は金 本校生を銀 そう表していた。 …どこかもどんな所かも知らないけれど銅なんかもあるみたい。

数年に1名程度で寮に入らない選択をした生徒もいたそうだがそれはそれで「学習意欲のない怠け者」として見下していた。

実際用事で向こうの校舎に行った時も授業中なのにお喋りをしていたりと不真面目な生徒が多かった訳だし。 …まぁ周りに喫茶店とかあってキラキラしていて…少し羨ましかったけど。

…ああ、君は『純金様』か。

杏奈

純…?

知らないのかい?僕達『メッキ』は寮生の事をそう呼んでいるけれど。

噂では君たちも同じように僕達の事をメッキだって呼んでるのかと…

杏奈

…?いえ、初耳ですが…

ええっ!僕今まで純金は僕達の事を見下しているのかと思っていたよ!

こりゃたまげた!

杏奈

へぇ…

あ、それで

杏奈

あっ…ごめんなさい、今課題グループを待たせて居るので…

あ、ごめんね、じゃあ…最後に名前だけ!

杏奈

ええと…私は桜木杏奈、です。

優斗

僕は島崎優斗!
また、あったらもっと話そうね!じゃあ!

杏奈

ええ。また。

私は足早にその場を立ち去った。

ガラッ

杏奈

いたぁー!!

慎二

わっ!びっくりしたぁ

杏奈

置いてかないでよ!!

紗良

だって貴方先生に怒られてたじゃない。

杏奈

怒られてない!今回の課題の説明してもらってたの!

紗良

ああ、そう。

杏奈

もー!

杏奈

…で?方針は?

今の所エレベーターとか入れようかなと。

杏奈

エレベーター!いいね!得点高そう!

慎二

杏奈は?なに持ってきた?

杏奈

竹とダンボール!

紗良

…単純。

杏奈

いいじゃん!最終手段でもいいからっ!

無駄口は叩かない。さっさと作らないとタイムリミット来るよ。

杏奈

あー…うん!

ボーン…ボーン…

杏奈

あ!ねぇおやつの時間!!

おやつとか要らないでしょ。杏奈が遅れたせいで時間ヤバいよ。

杏奈

むー…あ、そういえばね!

慎二

ん?どしたの?

杏奈

あのね!銀のみんなはね、私達の事純金様って呼んでるんだってー!

紗良

へぇ…じゃあ向こうはメッキ?

杏奈

そう!もうびっくりだよね!自分達をわざわざ貶めるような表現を使ってるなんて!

紗良

本当にそうね。
まぁ…皮肉のつもりかしら?

本当に…頭が悪いんだね。

慎二

な!な!!
俺があそこに行ってたら必死に勉強して繰り上がりするわ!

杏奈

今まで1人も来たことがないもんねぇ

…フラグ建設…

杏奈

いや、ないないって!
だって相当頑張らないと…

…いいから手を進めよう。咲さんはデザイン作成できた?

うん、こんな感じ…

杏奈

はいっ!先生!

先生

…合格です。

先生

ビー玉を二つ使ってエレベーターを動かしたんですね…確かに1つとは言ってませんでしたし、良い発想です。

杏奈

えへへ、それほどでも!

紗良

…原案は蒼君ですけれどね。

杏奈

でも動かしたのは私なので!

先生

綺麗なデザイン…これは咲さんが?

はい。パソコンで作っただけですけど…

先生

それで、このウォータースライダーが…

慎二

はい!俺です!

慎二

最初にエレベーター用のビー玉をゴールに届けるビー玉が押すので、その勢いをつける為に!
ミニバケツが裏にあって最初スタートする時の門を開けたら水が出るようにしました!

慎二

設計図は他の諸々含めて蒼が書いてくれたんスよ!

先生

…とても素敵な作品ですね。
個人戦の時の足の引っ張り合いが嘘の様です。

杏奈

…いえ、あれは偶然近くに私と同じ素材を使った方が居て、偶然多く使うことになってしまったからであってわざとではありませんよ

紗良

そうです。
私がお手伝いから帰ってきた際に偶然同じ様な設計図があって、偶然私が計算を間違えて設計図に記入しただけです。

そ、そうですよ!
偶然私が筆を落としてしまって、隣の方の絵に絵の具がかかってしまった!それだけです。

ええ。
皆さんの言う通り僕達は偶然失敗した事柄が周りに迷惑をかけてしまう事になってしまっただけであって…

先生

はぁ…
皆さん大人びた方だと思っていたのですが、そこはまだ五歳の子どもなのですね。安心しました。

杏奈

…?

つまり私達は優秀だって言いたいんですよ。杏奈さん。

杏奈

ああ!えへへ、まぁ当たり前ですね!

先生

私は貴女方のことがとても心配です…

杏奈

?もう先生に作品は渡しましたし安心してください!もう壊したりしないので!

先生

もう…?

先生

壊したんですか?1度?

杏奈

泡のような毎日に。

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