…本当に
あの方の話を、今だけはしなくなかった
巫女様に
話せない
話したくない
…話せない
話せる……訳が無い
巫女様は必ず苦い顔をされる
巫女様の一番の
心残りの話
……でも
巫女様に逆らえない
……否
逆らいたくないのは、確かで
でも
それでも
話したくない
…でも!
話せというのなら
…話すしか、ない
蒼空
蒼空
蒼空
蒼空
蒼空
一通り事情を話したので
顔を上げて
後悔した
巫女様は、今にも泣きそうな
ただただ苦しそうな
それでいて
蝋燭の火のように小さい
青い炎の決意がある
そんな、全てが混ざった顔をしていた
…確実に、私の落ち度だ
蒼空
蒼空
蒼空
そう言い誠心誠意頭を下げる
私だって、あの方のことは辛いのに
巫女様が苦しくない訳が無い
どれだけ強くても
どれだけ位が高くても
どれだけ優しくても
無理はものは、無理なのだ
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
蒼空
蒼空
この方は、強い
2代目沙羅の巫女の名は伊達ではなく
自然の神の使いも伊達ではない
そして、今世の「夜桜の九尾」も
もちろん、伊達では無い
それくらい、強い
それはもうら恐ろしいくらいに
……でも
同時にこの方は
誰よりも自分を大切にしてくださらない
その分、私達「神の使い」が大切にしようと
皆で話したのは
もう……遠い過去の話だ
蒼空
蒼空
蒼空
蒼空
蒼空
桃香
遮るように、巫女様は話し出した
ただ、儚く笑って
全てを受け入れ
巫女様は、笑っていた
桃香
桃香
蒼空
蒼空
「巫女様の意見を尊重する」
そう、決めたはずなのに
どうしても決意が揺らぐ
何故、何故巫女様が?
これ以外にも、別の方法が
あの方だって、本当は
何度も何度も、考えた
巫女様が、今の覚悟をしなくていい世界を
そして、何度も何度も、諦めた
……巫女様の決意は、揺るがない
…………揺るがすことなど、出来ない
少なくとも、私には
風魔なら、もしかしたら止めてくれないだろうか
そんな淡い妄想に近い希望に縋るほど
……巫女様を、止めたかった
それと同時に、違うことも本能的に感じ取る
あいつなら必ず、私達と同じように
巫女様の意見を尊重すると言いそうだな、と
風魔の巫女様への忠誠心は他の神の使いよりも高い
それは、認める
私達ですら、相当な忠誠心だと思うけど
風魔は、それを軽々と上回る
理由は見当がつくけど
……まぁ、本人のみぞ知るというやつである
そして、その忠誠心の高い風魔ですら
……いや、忠誠心の高い風魔だからこそ
あいつは必ず、巫女様の意見を尊重すると言う
蒼空
話をするなら、早い方がいいと思った
巫女様に残されている時間は
あと、どれくらいなのだろうか
……本当はもっと、気楽に生きていいのに
この世界が、巫女様を縛り付ける
まるで、決して幸せにしてあげないと言わんばかりに
桃香
桃香
桃香
桃香
桃香
「いや、もしかしてクルトと話したから…?」
なんて見当違いな考察をする巫女様に
不敬だと思いつつ、少し笑ってしまった
……私達の愛してるやまない巫女様は
いつまでたっても自分に向けられる好意とやらに疎すぎる
それは時に、神の使い全員がため息をつくほどである
……あの時は、怖かったな、四人神様
……本当に、それだけは直してくれないだろうか
見ているこっちが、胃が痛い
ずっと見られているのが気になったのか
こちらを見て、近づいてくる
メシン様は自然と触れ合っているようだ
沙羅の巫女として、必要な義務である
沙羅の巫女は、代々自然の神の使いに選ばれがちだ
巫女様が自然の神の使いの力をまだもっているからなのか
メシン様の力はとてつもなく弱い
それこそ、「歴代最弱の巫女」と呼ばれそうなくらいに
だが、それは正しくない
恐らく、自然の神の使いの適正は3代目様よりもあるはずだ
この大陸との相性が異常なまでにいい
……それとも、風魔の努力の成果だろうか?
まぁ、どちらでもよい
今考えるべきことは、これからのこと
巫女様は、話すつもりなのだ
風魔に、今後のことと
ある、お願いを
頼むから順調に進んでくれ……と思い
風魔がこちらに向かっているのを、静かに見ていた
……風魔
いくらクルトといえど
首根っこ掴んで連れてこなくても…
なんて、クルトに少し同情しつつ