雲一つない快晴、 ギラギラと照りつける太陽
多分今週で一番 綺麗な空だと思う。
そんな中私は汗だくになりながら 歩を進めていた。
無那
はぁ...はぁ...
無那
そ、そろそろ休憩しません...?かれこれ1時間は歩いてますよ...
レイラ
何言ってるんだい?まだ1時間じゃないか
レイラ
ほら、もう少し頑張って‼︎
無那
ふぇぇ〜...
私、黒星 無那(くろぼし なな)は 来魔裂(くるまざき)市という場所を 歩いていた。
レイラ
まったく...ナナはもっと体力をつけないとダメだよ?
無那
あはは...そうですねー...
このフッ軽な女性はレイラさん。 こう見えて私の命の恩人だ。
何の命の恩人かについては 後に説明するとしよう。
無那
そ、そんなことより今日はもういいんじゃないですか?
無那
今日だけで既に“3回”ですよ?
レイラ
何を言っているんだい?この仕事に終着点なんてないものはないよ
無那
あのー...前も言ったと思うんですけど...
無那
無那
“死体を埋葬する”のって、ただのボランティアじゃないですかーッ‼︎
私達は約1時間死体を見つけては 埋葬することを繰り返している。
だがそれは仕事ではなく、 ただの自己満足なだけだ。
レイラ
だって街中に死体が転がっていたら気分が悪くなるだろう?
レイラ
だったらそれらを排除すれば、そんなことも起きない
無那
だから埋めるって安直過ぎません?
レイラ
仕方ないさ、それが“葬儀屋”の役目だからね
無那
だからボランティアですってソレ...
“葬儀屋”とは葬儀や祭事の執行を 請け負う事業のことである。
なぜそんな葬儀屋に 私がいるのかというと単純に スカウトされたからだ。
無那
でも見渡しても死体なんてないですよ?樹海じゃないんですから...
レイラ
まぁ確かにそうだね。だけど気分転換になるんじゃないかな?
レイラ
だってどうせ暇だろう?
無那
なっ...
無那
ち、違います‼︎私は忙しいんです‼︎
無那
私はこの1ヶ月間自由に生きるって決めたんです‼︎
レイラ
それを世間では暇と言うんだよ
無那
ぐぬぬっ...
レイラ
とはいえナナが言うのも一理ある
レイラ
実質、ボク達の余命は残り1ヶ月。好きなことをして過ごすのはもっともな意見だ
レイラ
でも自由に生きてもいいけど、人に迷惑をかける様なことはしちゃダメだよ?
無那
わ、分かってますよ‼︎
レイラ
なら良かった...キミも“こんな奴ら”みたいにならないでくれよ?
そう言いながらレイラさんは 周囲に視線を送った。
無那
ひっ...
目に飛び込んできたのは 欲に塗れた人間の果ての姿。
無那
こ、この人達って...
レイラ
どうやら“腹上死”みたいだね...
無那
そ、それって
レイラ
おや知らないのかい?男性と女性が子
無那
うわあああああッ‼︎知ってます、知ってますから‼︎
レイラ
なんだ、せっかく説明してあげようと思ったのに
無那
もう、そんな恥ずかしいことを淡々と語らないで下さいよ...
レイラ
どうやら死んでいるのは男性3人だけだね。相手の方は逃げたのかな?
無那
と、取り敢えず下を隠して早く埋めましょう‼︎
レイラ
おや、照れちゃって可愛いね
そう言ってレイラさんは 私を揶揄う様に笑った。
無那
そんなこと言ってないで早く‼︎
無那
無那
はぁ...何かドッと疲れたぁ...
レイラ
アッハハハ‼︎若いっていいね〜
無那
笑い事じゃないですよ...
レイラ
でも良い教訓になったんじゃないかな?
無那
何がですか...?
レイラ
レイラ
“欲に塗れた人間は獣になる”
レイラ
余命1ヶ月を宣告されたら、誰だって欲の通りに生きたいと思うのは当然だ
レイラ
でもねナナ、欲は時として人間を狂わせる凶器にもなり得るんだ
レイラ
そのことをナナには覚えていてほしい
無那
わ、分かりました...
レイラ
よし、じゃあ今日はこの辺で切り上げようか
無那
えっ‼︎じゃあ、やっと帰れる‼︎
レイラ
うん、でも帰る手段は...
レイラさんは視線を 私の足に移した。
無那
ま、まさか...
レイラ
ご名答
無那
無那
もう歩きたくないぃぃ〜ッ‼︎
これが今の私の日常。
これは捨てられた地球に残された 人類の物語である。