短編集

突然投げかけられた言葉に驚きながら 俺は本を読みながら素っ気なく返事をする

少し照れくさく本で顔を隠す俺の事なんか気にせず彼は話を進めた

俺の方を向きながら話す彼はクスクスと笑いながら俺の顔を覗いた まるで俺が今その顔をしているような言い方に少し腹が立った でも事実なので文句は言えなかった

そう思っている内にまた彼が口を開く

そう言うと彼は俺の頭を撫でた 先程まで笑っていたのに急に真剣な眼差しで俺を見つめた その手は暖かくて優しかった

今までの伏線を回収したかのように理解した言葉に俺は涙を流した 泣きたくもないのに勝手に涙が出てくる 彼の優しさに触れてしまったからだろう 顔には出さなかったのに彼にはお見通しだったみたいだ

どうしても震えた声になってしまう 人前では絶対泣かなかったはずなのに その日は彼の前で一生分泣いた気がする

俺は申し訳なさから何度も謝った その度彼は優しく声を掛けてくれた

彼は俺を優しく抱きしめながら何度も”愛してる”とだけ言ってくれた 幼児のように泣きじゃくる俺を慰めるように優しく抱きしめた

その瞬間を噛み締めるように俺は何度も思った……

この時間がいつまでも続けばいいのに＿

これだけ泣く彼を初めて見た 泣き疲れた彼は俺の腕の中で眠っている 相当精神にきていたんだろう……。

しかしそれで弱音を吐くことは決してなかった

そう呟きながら彼の髪をさわる 目は腫れていて赤くなっていた 目が腫れるほど泣く彼の姿は俺しか知らないだろう それほど信頼されているということだ……

そう言いながら俺は彼を抱きしめた 宝石が欠けてしまわないように優しく＿

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