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もちろん、本田の決断に難色を示したのは王耀だけではない。

かつて、世界の中心に立とうとした枢軸国のイタリア、フェリシアーノ・ヴァルガスも当然混乱した。

ヴァルガスの知る日本はとても穏やかで慎ましやかな良い国、という印象であった。

また、忠義を大切にし、慮り、礼儀や礼節を重んじる責任感のある国だと思っていた。

戦時中も、その姿が存分に見て取れて、敗北したとしてもその姿勢は尊敬に値するものであった。

悔やむ姿も、立ち上がろうとする姿も、すべてが日本らしく、また美しかった。

だからこそ、世界中が思ったことだろう。

“まさかあんなに努力していた『日本』が戦争に対して前向きになるだなんて。”

と。

フェリシアーノ・ヴァルガス

……まさかキクがこんなことをするなんて思わなかったなあ

フェリシアーノ・ヴァルガス

キクは、世界が滅びるその瞬間まで、

フェリシアーノ・ヴァルガス

気がつかずに呑気に過ごすと思っていたのに

フェリシアーノ・ヴァルガス

まさか、気がついちゃうなんて。

フェリシアーノ・ヴァルガス

……あれかなあ、国の第二の人格のせいかなあ。

フェリシアーノ・ヴァルガス

……俺ぇ、あの子嫌いなんだよねえ

フェリシアーノ・ヴァルガス

いつもピリピリしていてぇ、短気で怒りっぽくて、好戦的。

フェリシアーノ・ヴァルガス

すべて手中に収めようとしてる、傲慢なやつ。

フェリシアーノ・ヴァルガス

もしそうだとしたら、嫌だなあ。

フェリシアーノ・ヴァルガス

……あんなの、“菊”じゃないもん

フェリシアーノ・ヴァルガス

俺の菊はもっと優しいよ。……人の頼み、断れないくらい

ギリ、と爪を強く噛む。

この気持ちはなんだろう。

イライラするような、ムカムカするような。

はらわたがひっくり返るような、気持ちの悪い気持ち。

……ああ、そうか。

フェリシアーノ・ヴァルガス

俺、楽しみなんだ。

フェリシアーノ・ヴァルガス

俺、……

世界が壊れていく様を、見てみたかったんだ。

アーサー・カークランド

……まっさか、本当に戦争が始まっちまうなんてなあ

アーサー・カークランド

もう少し様子を見るつもりだったが

アーサー・カークランド

まあ良い。

アーサー・カークランド

良いチャンスだ。

カークランドは脚立の上に立ち、本をパラパラとめくりながら、独り言を演説するかのように呟く。

手にしている本は、……歴史書。

それも“イングランド”の。

実を言うと、彼は兄三人が邪魔で邪魔で仕方がなかった。

あんなにも親切にしてやったのに、三人の口からは「ありがとう」の一つも出てこない。

正直、嫌いというわけではないが、このままこの状態を続けるのは非常に面倒くさい。

だから、これを機に消してしまおうと考えていたのだった。

そうすれば正式に、カークランドは、いや、世界のカークランドは“イギリス”を名乗れるのだから。

アーサー・カークランド

……そうだろ?

アーサー・カークランド

お前だって、良いチャンスと思っているんじゃねえのか?

アーサー・カークランド

フランシス

カークランドの向かいの本棚にバラを差し込んでいるのは、フランシス・ボヌフォワ。

カークランドの発言に対し、ボヌフォワは差し込んでいたバラを抜き、

フランシス・ボヌフォワ

そんなわけないじゃないか!

フランシス・ボヌフォワ

いつこのお兄さんが都合がいいだなんて?

フランシス・ボヌフォワ

ただ、仕方なく了承しただけさ

フランシス・ボヌフォワ

今のままじゃあ、世界は破滅に続くだけだからな。

アーサー・カークランド

……そうか。

アーサー・カークランド

なら、なぜさっきからニヤつきが止まらない?

アーサー・カークランド

俺が気づいていないとでも思ったか?

アーサー・カークランド

俺は誰よりもお前のことを知っているんだぞ?

アーサー・カークランド

お前が、……アルを嫌っていることくらいさ。

ボヌフォワの目つきが変わる。

今にも人を殺してしまいそうな、そう、まるで世界大戦中の時のような。

アーサー・カークランド

お前はあいつからすべてを奪われたもんなあ。

アーサー・カークランド

いや、すべてではないか。

アーサー・カークランド

……あいつは賢い。

アーサー・カークランド

だからこそ、俺たちのような一瞬でも心を許してしまう国は、寝首をかかれる。

アーサー・カークランド

愛想の良いふりをして、可哀想なふりをして、

アーサー・カークランド

同情するふりをして、反省しているフリをして。

アーサー・カークランド

そうやって相手を騙す。

フランシス・ボヌフォワ

……ああ、嫌いだよ。大っ嫌いさ

鼻で笑うカークランドに、ボヌフォワは歯を見せながら舌打ちをする。

フランシス・ボヌフォワ

お前の言った通りね、アルフレッドの計算高さには恐怖すらも覚えていた

フランシス・ボヌフォワ

どんな時も自分の立ち位置を理解し、振る舞いにもその場その場に合わせて変える。

フランシス・ボヌフォワ

そうやって、実質的に“アルフレッドが悪いんじゃない”って状況を作り出すんだ。

フランシス・ボヌフォワ

周りがそそのかしたから、周りが巻き込んだから、

フランシス・ボヌフォワ

自分たちを守るためだったから、生きるためだったから。……

フランシス・ボヌフォワ

……そう言われたら、さすがの俺でも同情しちまってよ。

フランシス・ボヌフォワ

だから、この話を聞いた時、チャンスだと思ったんだ

フランシス・ボヌフォワ

天下のアメリカをぶっ潰すチャンスだと

アーサー・カークランド

……そうさ

アーサー・カークランド

これは世界を巻き込んだ復讐劇

アーサー・カークランド

だから、俺は、俺たちはこうするべきだ。

アーサー・カークランド

……フランシス

フランシス・ボヌフォワ

ああ……アーサー

“俺たち、同盟を組まないか?”

そんな二人の薄ら笑いが、館内に響いては瞬く間に消えていった。

最終的には双方裏切るとわかっていながらも、この方法を禁じ得なかった。

敵の敵は味方だ。

活用するところは、とことん活用して利用してやる。

それがたとえ、自身の首を絞めることとなっても……

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