愁斗
ってかさ、ふみのり君って呼び方ちょっと距離感じるよね。
何かあだ名とかないの?
何かあだ名とかないの?
史記
あだ名か...
付けてもらったことないな。
付けてもらったことないな。
愁斗
そっか...
じゃあ、小川とか?!
じゃあ、小川とか?!
急に名字を呼び捨てにされ、驚いて彼を見ると笑っていた。
愁斗
ハハッ嘘だよ!
距離感じるって言ってんのに、余計距離が離れた様な呼び方する訳ないじゃん!
距離感じるって言ってんのに、余計距離が離れた様な呼び方する訳ないじゃん!
史記
おいっ!
ツッコミながらも、つられて笑ってしまった。
愁斗
ふみのり君がツッコんだ!
愁斗
ってか、ちゃんと笑ったの初めて見たかも。
そう言われて、気づいた。 ちゃんと笑ったの、いつぶりだろう。
その後も、“小川”だから“ちいかわ”だとか、大人っぽいから“リーダー”だとかセンスがあるのかないのかよく分からないあだ名を提案されたが全て断った。
愁斗
もー!難しい!
愁斗
じゃあ、普通に“ふみ君”でいいか!
ありきたりだが、妙にしっくりきた。
そしてなにより、“ふみ君”と呼ぶ君が、可愛く思えた。
史記
俺は、なんて呼べばいい?
愁斗
んー、なんだろ...。
俺もあだ名とかないからなー。
俺もあだ名とかないからなー。
史記
森だから、“もーりー”とか?
その言葉に彼はハッとした。
史記
どうかした?
愁斗
あ、いや、俺ねお兄ちゃんがいるんだけど.....。
お兄ちゃんのあだ名がもーりーだから、ちょっと.....。
お兄ちゃんのあだ名がもーりーだから、ちょっと.....。
そう言って悲しい顔をした。
史記
お兄ちゃん、いるんだ。
愁斗
うん。弟もいる。
三人兄弟の次男坊。
三人兄弟の次男坊。
なんで、悲しい顔をするの?なんて聞けない。
史記
そっか...。
それだけ返し、少し沈黙が続いた。
愁斗
愁斗でいいよ。
史記
そのまんまじゃん。
愁斗
うん。でも、やっぱり1番しっくりくるし、ふみ君にもそう呼んでもらいたい。
史記
愁斗。
愁斗
ん、何?
史記
ううん、呼んでみただけ。
愁斗
なんか照れるね。
史記
うん。
心もとない月が、俺らを照らした。